映画とライフデザイン

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映画「太陽の墓場」 大島渚

2014-12-10 05:43:33 | 映画(日本 昭和35年~49年)
太陽の墓場は昭和35年(1960年)制作の大島渚監督作品だ。


大島渚青春残酷物語」、「日本の夜と霧と当時の世相の裏側を表現する作品を次々と発表していた時期の作品だ。大阪釜ヶ崎のあいりん地区が舞台で、社会の底辺を這いづる男女を描いている。ロケが中心で、空襲後戦後そのままになっている廃墟も映しだしリアルな感触をもつ。いかにも大阪らしいドツボの世界だ。前2作と比較すると、ストーリーはあってないようなもの。




売血や戸籍売りなどの映像を見ているだけで気味が悪くなる。
でも、大衆の息づかいをしっかり映し出す映像は名作といわれる「青春残酷物語」「日本の夜と霧」よりもよくできている気がする。大島渚作品ではいちばんいいんじゃないかな?

1.大阪のあいりん地区
萩ノ茶屋という地名が出てくる。南海電車の高架のもとに、小汚い掘立小屋が立ち並ぶ。セットとロケの混在だ。時折映る顔立ちは素人と思しき、実際に住んでいる面々ではなかろうか?横には屋台が並ぶ。クズ屋、パンパンと言われた売春婦やルンペン、テキ屋になりきれない屋台のお兄さん。そこにやくざの組と愚連隊集団が絡んで、下流社会から巻き上げようとしている。愚連隊の親分役の津川雅彦>、「青春残酷物語」で主役を演じた川津祐介や若き日の佐々木功(宇宙戦艦ヤマト)にも注目したい。


黒沢映画でも貧乏人役を演じた左卜全や藤原鎌足が出演し、社会の底辺に生きる連中を演じているが実にうまい。
泥棒を演じている青大将以前の田中邦衛ばかりでなく、戸浦六宏、佐藤慶、渡辺文雄といった大島作品の常連もいい。いずれも別の作品では当時の知識人らしいインテリ用語を連発していたが、ここではドツボの世界に生きる男たちの会話だ。大島渚が知識人トークとまったく真逆な世界に挑戦したことは凄いと思う。


平成の初めに大阪阿倍野に住んでいた。車で難波の事務所まで通っていたが、通勤路に西成のあいりん地区を抜けて行った。妙なもんでこのエリアでは交通違反の取り締まりがない。なので逆に安心して通行できた。皮肉なものである。

2.売春
売春防止法が施行されて2年たったところだ。舞台になる場所の近くには飛田新地なる有名な遊郭があるけれど、この映画のようにやくざや愚連隊が仕切っている裏売春が横行していたのであろう。溝口健二監督田中絹代主演の「夜の女たち」という戦後間もない大阪を舞台にした映画がある。そこでもパンパンがクローズアップされる。その映画で見るバックの風景とこの映画のバックが似ているような気がするんだけど一致するかは自信がない。

「青春残酷物語」では大学生が若い女性を中年を誘惑させて、そのあと出現して金をむしり取るなんて構図があった。
ここで語られるのはもっと底辺の世界で、よりきわどい世界である。

3.大阪の猥雑な景色
この映画でみせる大阪は貴重な映像が多い。
西成区、浪速区のドヤ街とグリコの電飾看板を映しだすミナミのナンパ橋あたり。南海電車の新今宮あたりの高架。チンチン電車がドテを走るところ。大阪城を望む昔の森ノ宮あたり?などなど。。夜の繁華街も時代を反映していて貴重な映像だ。



夕陽丘付近から通天閣を望むショットはいい感じだ。

それらを見ているだけで楽しい。

       


コメント (1)
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