映画とライフデザイン

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映画「冬薔薇」 阪本順治&小林薫&余貴美子

2022-06-05 19:45:03 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「冬薔薇」を映画館で観てきました。


映画「冬薔薇」阪本順治監督脚本による若手の伊藤健太郎主演の新作である。港町で海運業を営む夫婦とグレている息子に起こるいくつかのできごとを描いている。公開されているいくつかの新作の中で、阪本順治作品ということでの期待を込めて観に行った。半世界以来のブログアップである。

三浦半島の岬にある港町で、土石の運搬をする海運業を営む渡口義一(小林薫)と妻(余貴美子)には淳(伊藤健太郎)という息子がいた。淳はファッションの専門学校に進んだが、ろくに学校に行かずオレオレ詐欺まがいの悪さをする半グレグループとつるんでいた。縄張り争いで別の不良グループとのイザコザで大けがをして抜けようとしたところで、自分の身内もからんだ事件に巻き込まれるという話だ。


もう一歩かな!
老優の名演技でポイントを上げても3.5の域は超えない作品である。クライムサスペンスと人情もの中間を狙ったと思うが、ストーリーに軽い起伏があっても物足りない。小林薫や余貴美子、石橋蓮司など登場人物のキャラクター設定は悪くない。ただ、この事件が昭和50年代から平成の初めに起きていたなら問題ない。IT化の進んだ現在に照らし合わせるとムリがある。

この映画クレジットを見ると女性プロデューサーだけど、たぶん、阪本順治監督の一人よがりでつくった内容に口出しできずに出来上がったのではないかという印象をもつ。現在の監視社会ではあり得ないことが多すぎる。阪本順治は80代ではなくまだ60代前半なんだから、昔の名前で出ていますではダメ。時代錯誤は何とかして欲しいなあ。


⒈名優の活躍
海運業を営む夫の小林薫は主人公の兄にあたる長男が亡くなってから、次男に対しては放任だった。面倒くさいことには関わりたくない。そんな細かい性格もよくわかる設定だ。妻の余貴美子について、仲野大賀演じる出来の悪い息子のおおらかな母親を演じた泣く子はいねえが同様に暖かいお母さん役だ。ダメ男に付属した母親の役柄に欠かせない存在になった。2人ともリアルな感じでうまい。



妻(余貴美子)は、山梨で粗相をした弟の息子をかばって、経済的余裕もないのに弟を船舶の乗組員で働かせる。その昔、故郷で商売に失敗した弟を自分の母が我が家の近くに住まわせ、我が家の家業で働かせたのを映画を観ながら思い出した。古今よくある設定だが、家族の絆が強かった時代の産物かもしれない。


石橋蓮司阪本順治作品には欠かせない俳優だ。2人の前作「一度も撃っていません」では主役を張ったが、正直言ってあまり面白くなかった。今や81歳、海運会社で働く老作業員を演じる。ともかく一言多い。ギャンブル好きで身内に見放されて今や1人という役だが、気の利いたフレーズを連発する。この映画では阪本順治の脚本に古さが目立ったけど、石橋蓮司のセリフだけは別物だ。


⒉ツッコミどころ多数(軽いネタバレあり)
息子の淳に関わる半グレグループが、自分たちに近づいてきた軽自動車に因縁をつけて、車の上に乗ったり嫌がらせ全開だ。その軽自動車にはドライブレコーダーが付いていて、一部始終が全部録音されている。しかも、SNSで公開されて拡散している。でも、その件でその後オトガメを受ける場面はない。これって今の時代もっと大騒ぎになるんじゃないかしら?

また、身内の男がお仕置きを受けるシーンがある。半グレグループの仕返しで、街にいる男がバットで殴られて、ワゴンで連れ去られる。これも防犯カメラが街にあるはずだから、わかるよね。その後、身内の男が悲劇を迎える。時間の関係があったかどうかわからないが、捜査されている気配が映画にない。警察の存在が全くないのはおかしい。

実は絶対に変というツッコミどころはもっとある。
老優の演技はいいし、ここにきて冴えまくる河合愛美ちゃんも出てきて、往年の山口百恵ばりのクールビューティーを見せつける。良いところいっぱいあるからご勘弁というところだね。


最後に向けての「本当の友だちって何?」という問いかけはいいんだけど、コイツといい友達になるということは法より掟を重んじる裏社会に行くこと。それっていいのかな?小林薫のコメントにラストがこれでいいのかと思ったと書いてあるが、たしかにちょっと微妙だね?

コメント
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