映画「あなたの顔の前に」を映画館で観てきました。
映画「あなたの顔の前に」は韓国の奇才ホン・サンス監督の新作である。米国に移住したある元女優が韓国に帰国した1日の動静を描く。映画の雰囲気は予想された通りで、主演のベテラン女優イへヨンが演じる尋常じゃない長回しのシーンをつなぎ合わせて、ひとつの事実に向き合う。
長いアメリカ暮らしから突然、妹ジョンオクの元を訪ねて韓国へ帰国した元女優のサンオク(イ・へヨン)は久しぶりに家族と再会を果たす。妹の息子夫婦に会ったり、思い出の地を訪ね歩いた後で、彼女に出演オファーを申し出る映画監督とランチをしながら人生と向き合っていく話である。
映画を見始めて女性同士の他愛のない会話が多く、男が観ても面白くないなあと思っていた。ところが、彼女が向き合っているものが徐々にわかっていくにつれ、見る目が変わってくる。映画監督と出演交渉で会うお店の名前が漢字で「小説」である。映画監督との会話の中に「短編小説」のような作品を作ってみようというセリフがある。サンオクの長い人生を断片で切った短編小説を読むような気持ちで映画を観るといいかもしれない。
⒈向き合うことって何?
母親が亡くなってから、アメリカから韓国へは帰っていない。今さらどうしたの?と妹も感じている。一緒に住んでいた姉妹だけど、お互い遠く離れている。2人きりになり公園で長話をしたり、甥っ子夫婦がやっている店に行ったあと、子どものころ育った家がお店になっていてそこの店主とだべってその子どもと抱きあう。そして、映画監督からの出演オーダーを受けに向かう。
想い出の足跡をたどるサンオクを見て、韓国に戻った理由を想像する。そして、その予想が間違いないとわかるのは、映画監督と会話している時だ。もし自分も同じ立場になったら、同じような行動をとるかもしれない。そんな気がした。
⒉超絶長回し
今回のイ・へヨンの長回し演技は尋常じゃない。よくこんなにセリフが覚えられるものかと感心する。一度だけの長回しでなく、自分の妹役や映画監督役と何度も時間をかけて会話を交わす。別に演劇のような大げさな演技ではない。ホンサンスの世界は常に日常に接近している。
イ・へヨンは朴正煕大統領に似ている一昔前の典型的な韓国人らしい顔だ。60を過ぎている。ホン・サンス監督にとって同世代であるイ・へヨンの起用は意味のあることかもしれない。
そして、映画監督から出演依頼を受ける場面では、何気ない会話から秘密の一部始終を映し出す。ホン・サンス監督作品に、若い女性が3人の男を翻弄する「ソニはご機嫌ななめ」という映画があった。主人公のソニが焼酎のボトルを次々と開けながら酔ってしまい、クダを巻くシーンがあった。この作品でも、映画監督と元女優の2人が徐々に酔ってくる長回しシーンがクライマックスになる。2人のセリフ展開はホン・サンスがじっくりと練ったものと想像する。
⒊友人の死(私ごとだけど)
この間の日曜に通夜があった。幼稚園からずっと少年時代一緒だった男の葬儀だった。高校時代から吸っているハイライトのせいには彼はしたくないと思うが、肺がんだった。がんが発覚して2ヶ月しかたっていないようだ。ここのところ毎年のようにヘビースモーカーの友人が亡くなっている。中学の同級生のLINEグループに長い間ありがとうと奥様が死後投稿して突然の死が判明して、友人が教えてくれた。
幼稚園バスの同じ停留所で仲良くなった。小学校、中学校常に彼の方が成績は上で、途中自分が抜いた場面もあったが、一つのベンチマークになっていた。中学の卒業式の後彼の家で大酒を飲んで吐いて迷惑をかけた。高校時代から徹夜麻雀をずいぶんとやった。でも彼の父親は警察官だ。結局自分と同じ大学に通うことになったが、東大模試でも上位で合格ライン間違いないのに彼は落ちてしまう。彼が勤めた会社も名門中の名門だが、誰もがうらやむ超一流商社に内定していた。長男に海外に行ってもらっては困るとの母親の反対で勤めた会社に行くことになった。思いのほか出世はしていない。
自分の人生も後悔に次ぐ後悔であるが、あの時の選択は正解だったかときっと思ったであろう。でも、社内結婚だったので、商社へ行ったら、今の人生はない。若き日にはモテた彼が結婚した奥様はふくよかで、太めの息子と3人並んだ写真が不自然。でも、もともと意地悪い気性もあった彼が家族を大事にしているのがよくわかるメモリー動画を見て、60年近くにわたる交友関係のシーンが絵画のように浮かんでくる。
そんな想いを持ったあとこの映画を観て、自分自身のエンディングへの道を考えざるを得なくなった。
映画「あなたの顔の前に」は韓国の奇才ホン・サンス監督の新作である。米国に移住したある元女優が韓国に帰国した1日の動静を描く。映画の雰囲気は予想された通りで、主演のベテラン女優イへヨンが演じる尋常じゃない長回しのシーンをつなぎ合わせて、ひとつの事実に向き合う。
長いアメリカ暮らしから突然、妹ジョンオクの元を訪ねて韓国へ帰国した元女優のサンオク(イ・へヨン)は久しぶりに家族と再会を果たす。妹の息子夫婦に会ったり、思い出の地を訪ね歩いた後で、彼女に出演オファーを申し出る映画監督とランチをしながら人生と向き合っていく話である。
映画を見始めて女性同士の他愛のない会話が多く、男が観ても面白くないなあと思っていた。ところが、彼女が向き合っているものが徐々にわかっていくにつれ、見る目が変わってくる。映画監督と出演交渉で会うお店の名前が漢字で「小説」である。映画監督との会話の中に「短編小説」のような作品を作ってみようというセリフがある。サンオクの長い人生を断片で切った短編小説を読むような気持ちで映画を観るといいかもしれない。
⒈向き合うことって何?
母親が亡くなってから、アメリカから韓国へは帰っていない。今さらどうしたの?と妹も感じている。一緒に住んでいた姉妹だけど、お互い遠く離れている。2人きりになり公園で長話をしたり、甥っ子夫婦がやっている店に行ったあと、子どものころ育った家がお店になっていてそこの店主とだべってその子どもと抱きあう。そして、映画監督からの出演オーダーを受けに向かう。
想い出の足跡をたどるサンオクを見て、韓国に戻った理由を想像する。そして、その予想が間違いないとわかるのは、映画監督と会話している時だ。もし自分も同じ立場になったら、同じような行動をとるかもしれない。そんな気がした。
⒉超絶長回し
今回のイ・へヨンの長回し演技は尋常じゃない。よくこんなにセリフが覚えられるものかと感心する。一度だけの長回しでなく、自分の妹役や映画監督役と何度も時間をかけて会話を交わす。別に演劇のような大げさな演技ではない。ホンサンスの世界は常に日常に接近している。
イ・へヨンは朴正煕大統領に似ている一昔前の典型的な韓国人らしい顔だ。60を過ぎている。ホン・サンス監督にとって同世代であるイ・へヨンの起用は意味のあることかもしれない。
そして、映画監督から出演依頼を受ける場面では、何気ない会話から秘密の一部始終を映し出す。ホン・サンス監督作品に、若い女性が3人の男を翻弄する「ソニはご機嫌ななめ」という映画があった。主人公のソニが焼酎のボトルを次々と開けながら酔ってしまい、クダを巻くシーンがあった。この作品でも、映画監督と元女優の2人が徐々に酔ってくる長回しシーンがクライマックスになる。2人のセリフ展開はホン・サンスがじっくりと練ったものと想像する。
⒊友人の死(私ごとだけど)
この間の日曜に通夜があった。幼稚園からずっと少年時代一緒だった男の葬儀だった。高校時代から吸っているハイライトのせいには彼はしたくないと思うが、肺がんだった。がんが発覚して2ヶ月しかたっていないようだ。ここのところ毎年のようにヘビースモーカーの友人が亡くなっている。中学の同級生のLINEグループに長い間ありがとうと奥様が死後投稿して突然の死が判明して、友人が教えてくれた。
幼稚園バスの同じ停留所で仲良くなった。小学校、中学校常に彼の方が成績は上で、途中自分が抜いた場面もあったが、一つのベンチマークになっていた。中学の卒業式の後彼の家で大酒を飲んで吐いて迷惑をかけた。高校時代から徹夜麻雀をずいぶんとやった。でも彼の父親は警察官だ。結局自分と同じ大学に通うことになったが、東大模試でも上位で合格ライン間違いないのに彼は落ちてしまう。彼が勤めた会社も名門中の名門だが、誰もがうらやむ超一流商社に内定していた。長男に海外に行ってもらっては困るとの母親の反対で勤めた会社に行くことになった。思いのほか出世はしていない。
自分の人生も後悔に次ぐ後悔であるが、あの時の選択は正解だったかときっと思ったであろう。でも、社内結婚だったので、商社へ行ったら、今の人生はない。若き日にはモテた彼が結婚した奥様はふくよかで、太めの息子と3人並んだ写真が不自然。でも、もともと意地悪い気性もあった彼が家族を大事にしているのがよくわかるメモリー動画を見て、60年近くにわたる交友関係のシーンが絵画のように浮かんでくる。
そんな想いを持ったあとこの映画を観て、自分自身のエンディングへの道を考えざるを得なくなった。