映画とライフデザイン

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映画「ロマンスドール」 高橋一生&蒼井優&タナダユキ

2020-07-28 19:20:48 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
「ロマンスドール」は実力派女流監督の1人タナダユキの新作である。主演は高橋一生と蒼井優で夫婦を演じる。ピエール瀧の逮捕騒ぎで公開が延期された上に、公開されるやいなやコロナ騒ぎでちょっと運がない。ラブドール工場に勤める男と美術専門のモデルとして工場に来た女が知り合い結婚した後で起こるさまざまな出来事を描く。

ラブドール、昔の呼び名で言えばダッチワイフを造る職人というと、なんか変態ムードあふれる映画化と思ったけど、ちがう。正統派というべきラブストーリーである。慌てずゆったりとした映像は非常に好感がもてる。


美大彫刻科あがりの北村哲雄(高橋一生)は先輩の紹介でラブドールを造っている久保田商会という工場で働くことになる。工場には造形師の相川(きたろう)と事務の田代(渡辺えり)がいて、新参者を歓迎してくれた。哲雄は相川の指導で、ラブドールの試作品をつくって久保田社長(ピエール瀧)に見てもらう。ところが、これではリアル感がないと造り直しを命じられる。

そこで、モデルを雇って実際の乳房の型を取ろうとして、美術専門のモデル園子(蒼井優)を工場によぶ。名目は人工乳房を造るためということにしている。さっそく脱いでもらい型をとるが、無理にお願いして実際の感触を確かめさせてもらう。そうしているうちに恋心が生まれる。いきなり付き合ってくれと告白してしまう。そして、あれよあれよという間に結婚してしまうのだ。


結婚して4年が経った。園子からとった型で大受けしたラブドールの後の新商品を生み出すために哲雄は夜遅くまで奮闘してしている。徐々に家のことが置き去りになることもあった。そんな時、先輩の相川が突然亡くなってしまう。それにもめげず新素材を使って中途入社の男と試行錯誤していたが、なんとその男は他社のスパイだったことがわかる。

ショックのあまり、夜の街を徘徊していると、泥酔したひろ子という女と知り合いそのまま抱いてしまう。その後、家に帰った時、園子から離婚したい、1人になりたいと言われて哲雄は狼狽するのであるが。。。


⒈しっとりと進むタナダユキの映画づくり
バックに流れる音楽は最小限だ。でも、映画の転換点はやさしい音楽で感情を揺さぶる。タナダユキ監督は職人に興味があったという。でも、よくもまあラブドールという題材を選んだものだ。よくある風貌の町工場の工房に高橋一生を放つ。なんと乳房の型をとるためのモデルにどう見ても貧乳にしか見えない蒼井優を連れてくる。それだけでもキャスティングの勝利である。それに加えて、きたろうをはじめとした脇役の的確な起用、それがこの映画の完成度の高さにつながる。

離婚を告げられた時からどう展開するかと思ったら、その後は華麗な詰将棋を見るような愛情に満ち溢れた展開である。ラブドールという持ち駒が生きてくる。お見事である。

⒉現代的職人肌
蒼井優演じる園子に先輩造形師の相川が何で哲雄に惚れたの?と聞く。不器用だけど優しいところと園子は言う。モデルで来てもらったとき、忘れ物をした園子を追いかけ告白する。意外にもあっさりOK、結婚式では緊張のあまり結婚指輪を相手でなく自分の指にはめて周りの失笑を浴びる。そんな哲雄も満足いく新商品がつくれないことにヤキモキ、夜もご無沙汰。挙げ句の果ては妻に三下り半を突き付けられる。

このままどうなってしまうのであろうかと心配になる。ここからはネタバレなので口を閉じるが、実はこの哲雄を見て自分との共通点がいくつもあることに気づく。徐々に気持ちが同化してしまう。


⒊味のある先輩造形師
きたろう演じる先輩造形師がいかにも職人らしい顔立ちでいい感じだ。何かというと、近くの居酒屋に哲雄を誘う。こういう居酒屋には職人の居場所がある。


普通のおもちゃ製造会社に勤めて26歳で結婚したけど、離婚してしまう。実はこのころ後輩に騙された哲雄と同じような目にあってしまうのだ。離別してしばらくたった後、7才になった娘に再会したときの悲しい想い出がある。母親が再婚しているので、娘は自分を相川さんとしか言ってくれないと嘆く。飲んで荒れて警察の留置場に押し込められて、その時出会った警官がピエール瀧演じる今の工場の社長というオチまでつく。こんな昔話を語る先輩の姿の描き方が素敵だ。

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