映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

キャタピラー  寺島しのぶ

2011-06-29 05:50:47 | 映画(日本 2000年以降主演女性)
「キャタピラー」は寺島しのぶ主演。さまざまな賞を主演女優賞として受賞した。傷痍軍人となって帰ってきた夫との関わりを描く。賞を総なめの作品だが、根は暗い。彼女も頑張ったけど、傷痍軍人となった大西信満の凄味ある演技に驚いた。



時は太平洋戦争のさなか、主人公こと寺島しのぶの夫こと大西信満も盛大に見送られ、勇ましく戦場へと出征していった。しかし、寺島のもとに帰ってきた夫は、顔面が焼けただれ、四肢を失った無残な姿であった。寺島はおびえた。同時に落胆した。しかし、面倒を見るのは自分しかいなかった。
その姿は多くの勲章を胸に“生ける軍神”と祀り上げていた。四肢を失っているのに夫は寺島を強く求めた。寺島はそれにこたえる。衰えることのない夫の旺盛な食欲と性欲に寺島は戸惑いながらも軍神の妻として尽くした。しかし、寺島は次第に空虚なものを感じ始めた。同時に夫も戦争での自分の行為のトラウマに悩まされていくようになるが。。。。



映画は暗い。街中の右翼街宣車でよく高らかに歌われる軍歌がこの映画で流れる。繰り返し流れる。そのムードを基調にして田舎の戦時中の光景が描かれる。何もないような田舎で2人だけで奇妙な生活をする。そこで2人の主演が競う様に演技を誇示していく。究極の演技だ。ただ、見ようによっては30年くらい前のにっかつポルノを見ているような錯覚を覚える。正直そんなに変わらない気もする。もともとはそのジャンルにいた若松孝二監督の作品だけにそうなるのは仕方ない。
学生時代に谷崎の文芸作品とエロ小説がどこが違うのかという議論をよく友人たちがしていた。実際には文章の高尚さを除いては大して変わらない。国際的に評価を受けたこの作品も、その昔のにっかつポルノも大して変わらない。そんな印象を受けた。
個人的には手足を失い顔もただれた最悪の状態を演じた大西の方を強く評価したい。

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2 コメント

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返事遅くなりました。 (wangchai)
2011-11-17 20:57:26
飛騨地方に行っていたので返事遅くなりました。

>寺島しのぶはどの作品を観ても迫真さ極まる演技で 母の富司純子に対する意地さえ感じてしまいます。

最初にヌードになった時、母親と大げんかをしてもう勘当だくらいのこといわれたこともあるみたいですね。でも数々の賞受賞をいちばん喜んでいるのはお母さんのようです。
この映画より前の方が強いかもしれませんが、母親への意地を感じさせる演技を見せていますね。

>こんな夫にはサッサと見切りをつけて実家に帰るなり、自立して…
などと思いましたが【 時代 】がチガウんですよね。

自分も同じようなこと思いましたが、おっしゃるようにそれはありえないことなんですよね。
つらい時代です。

>昭和の両陛下の正装した写真
母の実家にもありました。今から40年くらい前でもよくありましたよ。平成の今上天皇の写真はたまに見ますけど、まあそうはいないですよね。今の皇太子が天皇になった時となったらたぶんなくなるかもしれませんね。

反戦映画というのはその通りだと思います。
つらい映画です。

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こちらで拝見していたからこそ観る事が出来ました。 (paceola)
2011-11-16 00:38:10
先日、WOWWOWのボードウォークエンパイアの録画設定をしようとして
この映画を見つけました。ご紹介を読んでいましたので予約してやっと
本日、観ることができました。

暗い内容を伺っていたのでそう構えて拝見しましたから
あの旺盛な欲望に嫌悪と 妻に同情を感じつつ、その他のことも気にかけながら観れました。
寺島しのぶはどの作品を観ても迫真さ極まる演技で 母の富司純子に対する意地さえ感じてしまいます。
母の全盛期を知るスタッフから悉く器量をくらべられて迷惑だ、と話すのを聞いた事があります。

Wangchaiさんがおっしゃるように四肢を失った帰還兵を演じた俳優に感心しました。
その他のどんな作品にでているのか…確認したくなりました。

こんな夫にはサッサと見切りをつけて実家に帰るなり、自立して…
などと思いましたが【 時代 】がチガウんですよね。
覚悟を決めて生活するうち、彼女の立場も確立されよりどころの様に
なっていきますね。与えられた環境のなかで幸せを見つけて満足する。
私を含むいまの時代の女性にできるでしょうか?

時折、恨みの様に写し出される昭和の両陛下の正装した写真。
当時の日本の家では飾るのが一般的だったんでしょうね。
祖母の家にもありました。

戦争って、イヤですね。
【 にっかつ 】を観たことがないのですがなんとなくニュアンスを拾えます。
玉音放送の注釈が添えられたりしましたし、私は反戦映画にも思えました。



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