チリ映画「ナチュラルウーマン」を映画館で観てきました。
すばらしい映像美を見せる作品である。いやー今年は豊作だ。
恋人を失ったトランスジェンダーの女性歌手が、偏見や差別に負けずに生きていく姿を描く。ここではチリの首都サンティアゴを舞台に、なめるようにカメラが主人公の姿を追っていく。ストーリーの流れをつくるそれぞれの映像カットが練られてつくられている。スペインのペドロ・アルモドバル監督の作品を思わせる色彩感覚あふれる映像には、セバスティアン・レリオ監督によって丹念につくられたそれぞれのカットに対する思い入れがにじみ出ている。トランスジェンダー映画という偏見を持たない方がいい。すばらしい映像を楽しむことができる。
主人公のトランスジェンダーの女優ダニエラ・ヴェガは脱ぐとバストのふくらみが男性のようにも確かに見える。それでもしばらく見ると本当の女性のようだ。この映画では主人公以外の第三者どうしでの映像というのが少ない。ほとんどダニエラは出ずっぱりである。存在感が強い。まるでサンティアゴ観光案内のように市内のいたるところを徘徊し、その風景をバックに彼女を映し出す映像にムードたっぷりの音楽が絡む。邦題は「ナチュラル・ウーマン」としたが、これは映画の中で流れるアレサ・フランクリンの名曲からとったものであろう。この映像作りにチリ映画のレベルの高さを感じる。
アカデミー賞外国映画賞受賞は当然と思われるすばらしい出来だ。
ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているマリーナ(ダニエラ・ヴェガ)は、年の離れた恋人オルランド(フランシス・レジェス)と暮らしていた。
マリーナの誕生日を中華レストランで祝った夜、自宅のベッドでオルランドは突然体調不良を訴える。意識が薄れ階段から転落したあと、病院に運ばれるがそのまま亡くなってしまう。最愛の人を失った悲しみにもかかわらず、病院の医師と性犯罪担当の女性刑事は、マリーナに犯罪の疑いをかける。そこにオルランドの元妻ソニア(アリン・クーペンヘルム)がやってくる。ふたりで暮らしていた部屋から追い出され、葬儀にも参列させてもらえない。しかも、容赦のない差別や偏見の言葉を浴びせられるのであるが。。。。
いきなり南米アルゼンチンの国境にある世界三大名瀑の一つイグアスの滝がタイトルバックに映し出される。ウォン・カーワァイ監督のゲイ映画「ブエノス・アイレス」にも映し出されるこの滝は、マリーナと亡くなった恋人が一緒に行こうとしていた滝だ。
ナイトクラブで軽快なラテンミュージックに合わせて歌うマリーナの姿やディスコで2人抱き合って踊る姿や中華レストランでの会食姿をまず映し出す。そのあと美しいサンティエゴの夜景を見渡せるマンションに移り、2人が抱き合う。その姿がスタイリッシュだと思っていた時に一気に暗転する。
監督は主人公に次から次へと容赦なく試練を与える。ひと通り疑われた後、全裸姿を刑事や医師の前にさらされたり、強い偏見をもつ元妻や息子たちのいじめにあう。そこでも絶えずマリーナの姿は映像から外れない。そして、1つ1つのカットを見るたびごとに、それぞれのカットが意味をもつことにうなってしまう。こんなに多くの種類のカットに魅せられることはそうはない。構想力豊かな監督である。すさまじい突風のために前傾姿勢をとって前に進もうとしてもなかなか進めないなんていった映像も楽しめるが、それは序の口
しかも、撮影とスクリーンの中の構図が巧みである。ワイド画面をうまくつかって昼も夜も魅力的なサンティエゴの街とマリーナを同化させる。すばらしい!
日本題にもなったナチュラルウーマンはアレサフランクリンのスマッシュヒットだが、もともとはキャロルキングの作曲、世紀の大ヒットアルバム「タペストリー」でも自ら歌っている。これはこれでいい。You Make Me Feel のセリフが耳について離れない。
すばらしい映像美を見せる作品である。いやー今年は豊作だ。
恋人を失ったトランスジェンダーの女性歌手が、偏見や差別に負けずに生きていく姿を描く。ここではチリの首都サンティアゴを舞台に、なめるようにカメラが主人公の姿を追っていく。ストーリーの流れをつくるそれぞれの映像カットが練られてつくられている。スペインのペドロ・アルモドバル監督の作品を思わせる色彩感覚あふれる映像には、セバスティアン・レリオ監督によって丹念につくられたそれぞれのカットに対する思い入れがにじみ出ている。トランスジェンダー映画という偏見を持たない方がいい。すばらしい映像を楽しむことができる。
主人公のトランスジェンダーの女優ダニエラ・ヴェガは脱ぐとバストのふくらみが男性のようにも確かに見える。それでもしばらく見ると本当の女性のようだ。この映画では主人公以外の第三者どうしでの映像というのが少ない。ほとんどダニエラは出ずっぱりである。存在感が強い。まるでサンティアゴ観光案内のように市内のいたるところを徘徊し、その風景をバックに彼女を映し出す映像にムードたっぷりの音楽が絡む。邦題は「ナチュラル・ウーマン」としたが、これは映画の中で流れるアレサ・フランクリンの名曲からとったものであろう。この映像作りにチリ映画のレベルの高さを感じる。
アカデミー賞外国映画賞受賞は当然と思われるすばらしい出来だ。
ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているマリーナ(ダニエラ・ヴェガ)は、年の離れた恋人オルランド(フランシス・レジェス)と暮らしていた。
マリーナの誕生日を中華レストランで祝った夜、自宅のベッドでオルランドは突然体調不良を訴える。意識が薄れ階段から転落したあと、病院に運ばれるがそのまま亡くなってしまう。最愛の人を失った悲しみにもかかわらず、病院の医師と性犯罪担当の女性刑事は、マリーナに犯罪の疑いをかける。そこにオルランドの元妻ソニア(アリン・クーペンヘルム)がやってくる。ふたりで暮らしていた部屋から追い出され、葬儀にも参列させてもらえない。しかも、容赦のない差別や偏見の言葉を浴びせられるのであるが。。。。
いきなり南米アルゼンチンの国境にある世界三大名瀑の一つイグアスの滝がタイトルバックに映し出される。ウォン・カーワァイ監督のゲイ映画「ブエノス・アイレス」にも映し出されるこの滝は、マリーナと亡くなった恋人が一緒に行こうとしていた滝だ。
ナイトクラブで軽快なラテンミュージックに合わせて歌うマリーナの姿やディスコで2人抱き合って踊る姿や中華レストランでの会食姿をまず映し出す。そのあと美しいサンティエゴの夜景を見渡せるマンションに移り、2人が抱き合う。その姿がスタイリッシュだと思っていた時に一気に暗転する。
監督は主人公に次から次へと容赦なく試練を与える。ひと通り疑われた後、全裸姿を刑事や医師の前にさらされたり、強い偏見をもつ元妻や息子たちのいじめにあう。そこでも絶えずマリーナの姿は映像から外れない。そして、1つ1つのカットを見るたびごとに、それぞれのカットが意味をもつことにうなってしまう。こんなに多くの種類のカットに魅せられることはそうはない。構想力豊かな監督である。すさまじい突風のために前傾姿勢をとって前に進もうとしてもなかなか進めないなんていった映像も楽しめるが、それは序の口
しかも、撮影とスクリーンの中の構図が巧みである。ワイド画面をうまくつかって昼も夜も魅力的なサンティエゴの街とマリーナを同化させる。すばらしい!
日本題にもなったナチュラルウーマンはアレサフランクリンのスマッシュヒットだが、もともとはキャロルキングの作曲、世紀の大ヒットアルバム「タペストリー」でも自ら歌っている。これはこれでいい。You Make Me Feel のセリフが耳について離れない。