同窓会は現役の間も引退後も出席している。しかし現役の間はあまり楽しくない。引退後は同窓会が急に楽しくなる。昨日は仙台一高の関東地区の同窓会があった。関東地区といっても沖縄や秋田からも来た人もいる。昭和29年に卒業した同じ学年の者が40名エビス・ビアガーデンで痛飲し、語りあった。高校は旧制仙台一中の校風のままの弊衣破帽、バンカラな男子高校であった。白線の入った帽子を被り、マントと高下駄で通学した。旧制高校の真似をした服装である。7クラス有った同学年の者が一緒に集まるので知らない顔も多い。昨日はU君、O君と小生の3人が幹事として準備をした。現役の間は幹事役を逃げ切っが、引退後はその仕事が楽しくなる。事務能力抜群のU君が手紙の発送から名簿の作成など全てをしてくれた。小生は40名の名札の準備と二次会の世話をした。
同窓会には新制の仙台市立愛宕中学校と向山小学校の同窓会もある。東北大学の金属工学科のもある。いずれも同窓会が楽しくて仕方のない人だけが集まるので毎回愉快な会になる。しかし同窓会へは絶対に出ないという人もいる。それも各々の自由だ。自由だから楽しいのだ。
引退後の同窓会では職業や政治の話は一切出ない。肩から力が抜けているのでクラスが違って、知らない者同士でも何やら楽しそうに話している。昨日も知らない者が話しかけてきて、当時の私の挙動を話してくれる。自分が忘れたことを実に鮮明に覚えていてくれる。その一方、一緒に忍者遊びをし、仲の良かった仲間が悪戯をしかけてくる。昔の冗談を何度も言う。一気に年齢を忘れ、大声で話す。なにせエビスの生ビールが滅法美味しい。
仙台一高では放課後に桜が満開の土手の下に全員が集められ応援部の指導で応援歌一番から三番まで何度も歌わされる。昨日も会の終わりに三番まで蛮声を上げて歌った。歌の指揮者は東宝映画で監督やプロデューサーをしてきたH君である。隣席で物静かに喋っていた紳士が、指揮を始めた途端に、野蛮な大声を挙げ、長い腕を振り回すので吃驚した。
卒業した仙台の学校を訪問することは無い。東京で同窓会をしているだけである。しかし仙台にある小学校も中学校も高校も廃校にならずに存続している。それが嬉しい。しかし卒業した学校が無くなる場合もある。旧満州や台湾にあった学校は敗戦と同時に霧散した。過疎地の学校は生徒数が少なくなり廃校する。想像しただけでも同情を禁じえない。しかしその反面、廃校になった場合の同窓会は一層楽しいに違いない。心の中に悲しみがあるから逆に楽しいのだ。
廃校という悲しみがなくても、学校時代には苦しい思い出や悲しいことが沢山ある。歓喜の青春という言い方は青春時代の灰色を隠すための言葉だ。同窓会では悲しいことは話さない。人生の楽しさは、その何倍もの悲しさによって光り輝くのだ。そんなことを考えながらビールを飲んできた。皆様は同窓会を心から楽しんでいらっしゃいますでしょうか?
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。 藤山杜人