中国の内陸部の農家の中に入ると、「衝撃」が私の心を襲います。そのあまりにも貧しさに胸つかれます。そして何千年もの伝統に磨かれた巧みな家の構造に感動しました。
下に黄土高原の土の下へ掘って作ったヤオトンという住居の写真を示します。私が行ったのは1983年頃で写真を撮らなかったので、中国大陸建築紀行:茶谷 正洋 , 八代 克彦 , 中沢 敏彰 共著からお借りしました。黄土高原には4000万人の農民がこのような家に住んでいます。米が取れないのでトウモロコシや雑穀しかありません。写真では若夫婦と一人子が収穫したトウモロコシの皮を剥いて乾す作業をしています。入口が4つ見えます。昔は親子3代、4家族が住んでいたのでしょうが現在は右端の家に3人が住んでいるだけです。あとは納屋や、収穫物の保管庫として使っている様子が分かります。都会か離れ過ぎていて野菜、果物の様な換金作物は一切作りません。如何にして効率良く澱粉質の雑穀を収穫出来るかが死活を分けるのです。この家の出入り口は写真の手前にあります。地上からなだらかな道が下がっていて収穫物を車に積んで下ろせるようになっています。
家の表戸を入ると幅4メートル、奥行き7メートル位の清潔な部屋があります。その構造が何千年もの人間の知恵で出来あがったように実に巧妙に出来ているのです。たった一つの釜戸と底の丸い大きな中華鍋で全ての料理を作るのです。その釜戸から出る煙は全て寝台の下に迷路のように作った煙道を通って土壁の中の煙突へ行きます(壁も暖めるのです)。そして地表まで長い煙突へと繋がっています。煙突の長さが釜戸口からの空気の吸い込む力を大きくしています。トウモロコシの幹がすごい勢いでパチパチ燃えるのです。極寒の黄土高原の冬でも暖かい家庭が出来あがるのです。部屋の半分が寝室で半分が食堂になっています。家族の生活に必要な最低の物が1部屋にキチンと収まっています。しかし食べるものは質素で家具調度は殆ど無く、これ以上簡素には出来ないと感じさせるのです。人間が人間らしく生きる最低限の部屋です。しかし清潔に整理整頓してあり何故か中国文化の源泉を感じさせます。
こういう生活をしている中国人は何億人も居ると言います。その中国が一方では航空母艦を中心にした艦隊を作り、太平洋へ乗り出そうとしているのです。日本人はそんな余計な軍備に使うお金があるなら貧農対策へ使えと言います。現在、日本人の多くは中国が嫌いです。尊敬もしていません。
しかし比較文化人類学的に考えると日本も戦前はそのような社会と文化を持っていたのです。他人の事は笑えません。
日本の現在の文化も中国の現在の文化も優劣はありません。一番重要な事は中国政府が狂ってしまって戦争を始めることを防止することです。注意深く、丁寧に中国と付き合わないと日本も破局に陥ります。中国の北京や上海だけを見ないでもっともっと中国の実態を理解して外交交渉を積み重ねることが日本の将来の安全に繋がると信じています。皆様はどのようにお考えでしょうか?
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人
(参考資料:世界のスラム人口:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1015.html、世界の民族住まいとくらし:http://www.eonet.ne.jp/~no1/index.html、中国の窰洞(ヤオトン):http://www.eonet.ne.jp/~no1/sakaino/yaoton.html、(中国大陸建築紀行:茶谷 正洋 , 八代 克彦 , 中沢 敏彰 共著より)