最近、日本人の太平洋戦争に対する考え方が少しずつ変わってきました。
大型帆船による大航海時代になってから、西洋の諸国はアフリカやアジアの国々を侵略し、植民地にして400年以上の長きにわたって搾取していたのです。
ですから日本が朝鮮を併合し、中国を侵略しても、それはたかだか数十年の間に過ぎないと言う人がいるのです。
そして日本の行為は、欧米の広大な植民地支配の悪に比べれば日本は悪くないと考える人々が増えてきたのです。
この傾向は戦後の自虐的な歴史観を否定し、日本社会の新しい潮流になっています。
この潮流は一つの日本人の社会心理の変化として大変興味深いものがあります。
そしてこの潮流のなかにキリスト教が植民地獲得の原動力になったという意見や主張が散見されます。
私は1971年に中年になってからカトリックの洗礼を受けました。あまり熱心な信者ではありません。
しかしキリスト教の内側から見ると、「植民地拡大の原動力はキリスト教」という説が非常に間違っていると実感しています。この実感は多くのプロテスタント宗派の人々もロシア正教の人もまったく同じだと思います。
間違いの原因はイエスの言ったことばの前半分だけを取りあげたからです。
イエスは弟子たちに「世界中へ広まってこの教えを伝えよ」と言いました。しかし「その伝道の旅には質素な着物以外何物も持って行くな」とも言ったのです。
武器を持って行くのは厳禁です。しかしスペイン人もポルトガル人も大型帆船に大砲を積んで銃を持ち、槍を持ってアジアに来たのです。
その武装した帆船に宣教師が乗っていたのです。それは宣教師の間違った行いでした。軍隊と一緒になって宣教をしてはいけないのです。宣教師も人間として名誉欲にかられて安易な宣教の仕方をとってしまったのです。
しかしイエスは着物以外、何物も持って行くなと言ったのです。
ですから日本にいるキリスト教信者は「植民地拡大の原動力はキリスト教」という説が間違いだと理解しています。
同じようなことは仏教でもイスラム教でも起きています。
釈迦は生き物を殺すなと言いました。しかし歴史をみると日本を含めて仏教国が戦争をします。イスラム教でも同じことです。
人間の欲の深さはイエスや釈迦の教えを忘れさせるのです。私も時々忘れます。
ですから他人を批判出来ません。しかし、「植民地拡大の原動力はキリスト教」という説は間違っているように思っています。
今日の挿絵は長崎県にある教会の写真です。一番上の写真が脇浜天主堂の写真で、下の2枚は堂崎天主堂の写真です。
出典は、「写真紀行★風に吹かれて」、http://www.ne.jp/asahi/oda/kaze/ です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)