昨日、「写真で見る我が故郷、仙台の戦前、戦後の風景」という記事を掲載しました。仙台の戦前、戦後の風景なので貧しげで侘しい町の風景写真でした。しかし当時でも美しい風景があったのです。それは仙台市を流れる広瀬川の清流です。そこで昨日の記事の続編として美しい広瀬川の風景をご紹介したいと思います。
早速ですが広瀬川の風景写真をご覧下さい。
広瀬川の写真の出典は、「技師の黙想」;http://www.alexforencich.com/blog/ja/2010/11/17/hirose-river/ です。





美しい瀬音をたてて流れる広瀬川は仙台の人々の誇りです。人々の心を豊かにしてくれます。私は昭和11年に仙台に生まれました。広瀬川は故郷の懐かしい川です。川の南側には、お霊屋下や向山と呼ばれる住宅地になっていました。
以下は広瀬川にまつわる思い出の記です。
私の家は向山にありましたので市街地に行くには鹿落坂(ししおちざか)を下ってお霊屋橋か評定河原橋を渡ります。
お霊屋とは伊達政宗の霊廟のことで、その霊廟は経ヶ峰という小高い山の上にありました。その霊廟のある山の麓一帯をお霊屋下と呼んでいたのです。
評定河原とは伊達藩政の頃、藩の評定所があった河原の呼び名です。お霊屋橋の少し上流にありました。
このような場所で育ったので、思い出としては お霊屋橋と評定河原橋から見下ろした広瀬川の風景が心に焼き付いています。
(1)動物園と川遊びの思い出
幼児の頃、お霊屋下の住宅街を通リ抜けて評定河原橋を渡って左に行くと、動物園があったのです。戦前は象もキリンもライオンもいました。幼稚園に入る前に何度か胸を躍らせて見にいったものでした。
その行き帰りに必ず評定河原橋を渡り、川の流れの風景を随分と長い間眺めていました。川波が岸辺に寄せて、やがて下流に流れて行く様子が子供心に面白かったのです。
小学校に上がると同級生がお霊屋下に住んでいたので広瀬川の岸辺に降りて水遊びをしました。そして川石をソオッーとのけると小魚のカジカがいます。それを取るのに夢中になりました。
(2)旧軍の上陸用舟艇での川下りの思い出
中学校に上がると親友が評定河原橋の近くに住んでいました。何度も遊びに行くうちに評定河原橋の下で悪い遊びもしました。
ずっと上流の青葉城の城門の近くまで行くと軍隊が捨ててしまった折り畳み式の上陸用の小舟が何隻も並んでいるのです。その一隻に悪童連とともに勝手に乗って、川を流れ下るのです。始めは川がゆったり蛇行して、動物園のあった琵琶首丁の周りを丸く流れています。そして、やがて馴染みの評定河原橋の付近の瀬にさしかかります。
すると上陸用舟艇は瀬の岩に乗り上げて止まってしまいます。
悪童連の舟遊びはそこで終わりです。土手を這いあがって評定河原橋の上から上陸用舟艇へ別れを告げます。
その後、あの船はどうなったでしょうか?何度も勝手に上陸用舟艇に乗りに行く度に消えて無くなっています。そして終いには軍隊が捨ててしまった上陸用舟艇が全て無くなってしまいました。多分、太平洋に流れ出て、海の底に行ったのでしょう。戦後の大人たちは忙しく、誰も子供の遊びに干渉する暇が無かったのです。
(3)広瀬川を泳いで渡ったことやボート遊びの思い出
やがて高校生になると泳ぎも上手になったので鹿落坂の下の広瀬川を泳ぎ渡りました。川を泳ぎ渡ることが自慢でした。
泳ぎ渡るのにはコツがあるのです。斜めに泳ぎ、川の流れに身を任せるのです。
高校になると通っていた仙台一高が東の市街地にありましたので、今度は下流の愛宕橋を毎日のように渡りました。
すると橋下に堰があり、川幅が広くなっています。そこに貸ボートが並んでいます。随分と何度もこのボートに乗ったものです。
ボートを漕ぐ面白さに目覚めたのは広瀬川でした。それで塩釜から松島までカッターを漕いだり、レース用のエイトを漕ぐことになったのです。
そんな遊びの相手をしてくれたのが広瀬川です。
遊び相手だけでなく夏の夜に岸辺を歩くとカジカ蛙がコロコロと実に心地良い声で鳴いているのです。今は亡き叔父の肩車に乗って、夜の鹿落坂をカジカ蛙の声を聞きながら何度も行き来した情景を思い出します。
広瀬川。嗚呼、それは懐かしいいとおしい思い出の川でした。
皆様も川にまつわる思い出を沢山お持ちのことと思います。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===参考資料=================
青葉城恋歌の動画;https://www.youtube.com/watch?v=u-GYBCktieU&feature=youtu.be
「青葉城恋唄」
星間船一作詞・さとう宗幸作曲
広瀬川流れる岸辺 想い出は帰らず
早瀬(はやせ)躍(おど)る光に 揺れていた君の瞳
時はめぐり また夏が来て
あの日と同じ 流れの岸
瀬音(せおと)ゆかしき 杜(もり)の都
あの人は もういない
七夕の飾りは揺れて 想い出は帰らず
夜空輝く星に 願いをこめた君の囁(ささや)き
時はめぐり また夏が来て
あの日と同じ 七夕祭り
葉ずれさやけき 杜の都
あの人は もういない
青葉通り薫る葉緑 想い出は帰らず
樹(こ)かげこぼれる灯(ともしび)に ぬれていた君の頬
時はめぐり また夏が来て
あの日と同じ 通りの角(かど)
吹く風やさしき 杜の都
あの人は もういない
時はめぐり また夏が来て
あの日と同じ 流れの岸
瀬音(せおと)ゆかしき 杜(もり)の都
あの人は もういない