二重スリット実験では、光子以外に電子や中性子を飛ばしても干渉模様が現れます。ところが、なんとなん と、炭素原子60個がサッカーボール状になったフラーレン(C60)を使った実験でも干渉模様が観測できたそうで す。炭素原子60個とは、陽子・中性子・電子がそれぞれ360個の集団ですぞ。こんなものまで波としての(電磁 波として)性質を示すとは、改めて実在とは何ぞやと頭を抱えざるを得ません。
二重スリット実験では、こんな大質量を光速まで加速する事は不可能ですから、時空が消滅するというロジ ックは使えません。物質とはもともと素粒子の集まりですから、素粒子とは何ぞやと言う所から考え直さなければ 成りません。ここで、えいやっ!と無理矢理結論にもってゆけば、物質とは実在ではないと言うことです。
目に見える物質世界(と思い込んでいる)の中で進化してきた人間には「そんなバカな」と言わざるを得ませ んが、これはただ人間のア・プリオリな直感がそれを許していないだけなのです。
電子もクオークも(それが三個集まった陽子や中性子も)実在でないとしたら、それらがさらに集まった石コロ や我々人体も実在でないことになる。我々はなぜ物を物として認識しているのだろう。感覚器官と脳細胞によっ てである。その内の視覚について考えてみよう。
人間の目が感知し得る可視光線領域の周波数で見れば、人体は不透明な物体として認識される。それより 波長の短いX線で見れば、かなりスカスカになってくる(レントゲン写真でおなじみのはず)。さらに波長の短い γ線でみれば、完全な透明人間になってしまうでしょう。百聞は一見に如かず、と言いますが視覚で認識する と言うことは、実はかなりあやふやな概念なのです。・・・・・次回に続く。