![]() | 播磨灘物語〈4〉講談社このアイテムの詳細を見る |
【一口紹介】
黒田官兵衛

出版社/著者からの内容紹介
信長の死。官兵衛は恵瓊との講和を急ぐ。いよいよ「中国大返し」。秀吉の成功は益軒によれば官兵衛の作戦を採用した故。のち、官兵衛は豊臣政権の新官僚石田三成らに失望する。世から隠れたい――と秀吉に言う。更に5年後、入道して、如水。子、長政。秀次に自評して、臣ハソレ中才ノミ、と。
【読んだ理由】
「世に棲む日日」に続いての司馬遼太郎作品。
【印象に残った一行】
『日本の合戦というのは、純粋に軍事的なものであるのかどうか。純粋に軍事的とは、双方の将が軍事のみに知力を傾け、士卒はその勇怯はべつとして、味方の陣営に裏切者が大量に出てどっと崩されるという心配をすることなくひたすら戦闘に従事できる状態をいう。ともかく双方武力のみで対決するというのを純粋に軍事的であるとすれば、どうも、日本の合戦は純粋ではない。
双方つねに、軍事のなかに攻略感覚がつきまとっている。味方に属しながらも敵のほうが優勢である場合、いっそのこと敵方へ転んでしまおうという衝動をおさえかねている。もしくは敵からの誘いにひそかに応じてしまっている小集団がつねに存在し、双方がそういう小集団群を抱えているのである。このことが源平合戦以来の特徴といっていい。
日本において大軍が形成されるのは、その総帥の子飼いの兵のみによってではない。総帥は他からみれば人数の多い譜代衆を持っているが、実体はその譜代勢力を磁石のようにし、他から多くの鉄片を吸い寄せて大軍を形成しているのである。つまり本来外様である小集団群が、臣従というよりも同盟に加盟するような動機と態度で寄り集まって大軍をなしているだけで、総帥はその盟主といってよい。』

