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7季連続で「御神渡(おみわた)り」が出現しない「明けの海」となった長野県の諏訪湖。今季は3日の「立春」後に寒波が到来したものの、1月の冷え込みが足りなかったとの見方がある。御神渡りの出現に向けた観察を担う八剣神社(諏訪市)の関係者からは残念がる声が上がり、有識者は地球温暖化の影響を指摘した。
【写真】凍り付いた諏訪湖上に出現した御神渡りを前に行われた拝観式=2018年
■「カモと波ばかり見ていた」御神渡り観察
八剣神社に伝わる「当社神幸記(とうしゃしんこうき)」には1507(永正4)年~14(同11)年の室町時代に8季連続の明けの海を記した記録が残る。途中、記録がない時期はあるものの、今季まで7季連続の明けの海はこれに続く。
八剣神社によると、御神渡り出現には氷点下8度程度の気温が4、5日ほど続く必要がある。宮坂清宮司(74)は1月5日の今季の観察開始以降、氷点下8度に達したのは立春の2月3日までに1日あったのみで「結氷した日が少なく、波とカモを見てばかりだった」と振り返った。
暦の上では本格的な冷え込みが期待される「大寒」の1月20日以降は2度台から氷点下5度台を推移。氷点下8度台を下回ったのは寒波が到来した2月9、10日になってからだった。宮坂宮司は「寒さのピークが来るべき大寒に寒さが足りなかった」と残念がる。
■7季連続の明けの海は「最長では」
諏訪湖の御神渡りなどと気候変動の関係を分析している東京都立大名誉教授の三上岳彦さんは、室町時代の記録は世界的に気温が低かった期間で、8季連続の明けの海という記録には疑問符が付くとし、今回の7季連続に「記録が残る中で最長なのではないか」と指摘する。
7季連続の明けの海は「世界的な気候変動を反映しており、地球温暖化の影響と言って間違いない」と断言。1980年代以降は冷え込みが和らぎ、氷点下10度に達する日は減少しており、三上さんは「気温の上がり方の傾向などから今後の御神渡り出現は厳しいだろう」と予測する。
■氷の筋から占っていた吉凶 「もはや占うのが厳しい」
御神渡りと気候変動をテーマにした映画を製作したグリーンピース・ジャパンのプロジェクトマネジャー、高田久代さん(45)は「明けの海が続くのは地球温暖化の象徴であり、自然が警鐘を鳴らしている。ここから自分たちに何ができるかを考え、行動することが重要」とした。
御神渡り出現時には氷の筋からその年の吉凶を占っているが、宮坂宮司は「占いは人々の関心事だが、もはや占いをするのが非常に厳しい」と説明。「地球温暖化が迫っていることを諏訪湖が教えてくれている。自然は正直だ」と話している。
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