ニック・カタラーノ著「クリフォード・ブラウン」という本を読んだことは、一昨日付の記事に書きました。ブラウンの演奏に詳細に触れているので、読んでいると、いくつも聴きたいアルバムが出てきて、ここしばらくは彼のリーダー作をあらためて聴いていました。それぞれ素晴らしいものばかりですが、文章を読んでいる中でダントツに聴きたくなったのは「THE BEGINNING AND THE END」です。
CLIFFORD BROWN (クリフォード・ブラウン)
THE BEGINNING AND THE END (Columbia 1952年、1955年録音)
ブラウンがはじめて録音した2曲と、交通事故で亡くなる直前に行われたジャム・セッションの録音が収録されているとされたので、このようなタイトルがつけられました。現在では、ジャム・セッションの日付は彼が亡くなる1年ほど前だったことが明らかにされていて、「The End」は正しいとはいえません。しかし、このタイトルで、ジャズファンの脳裏には焼き付いているのではないでしょうか。
メンバーは、「The Beginning」の方が、クリス・パウエル(vo,perc)とThe Blues Bandで、ブラウンもその一員です。「The End」の方は、ブラウン(tp)、ビリー・ルート(ts)、ジギー・ヴァインス(ts)、サム・ドッケリー(p)、エイス・ティソン(b)、エリス・トリン(ds)。ビリー・ルートは、「Dizzy Atmosphere」(Specialty)でバリトンサックスを吹いていますし、ドッケリーはジャズ・メッセンジャーズの一員になるので、結構知られているミュージシャンが参加しています。
曲は、「The Beginning」の方が、クリス・パウエル作の「I Come From Jamaica」と「Ida Red」でどちらもヴォーカルものです。「The End」の方は、カーペンターズ作「Walkin'」、ガレスピー作「A Night in Tunisia」(チュニジアの夜)、パーカー作「Donna Lee」(ドナ・リー)で、ジャムセッションだけに有名曲が取り上げられています。
「The Beginning」では、歌の間にブラウンのソロが入りますが、既にモダンなスタイルで、後年録音する歌伴の素晴らしさにつながるものです。「The End」の方は、ブラウン(tp)が傑出していますが、ビリー・ルート(ts)やサム・ドッケリー(p)らのソロも悪くありません。「A Night in Tunisia」と「Donna Lee」におけるブラウンの長いソロは、高度な技術に裏打ちされた伸び伸びとしたもので、フレーズが次々と出てくる様には、唖然とするほかありません。