映画「狼よさらば(Death Wish)」(1974年公開)を借りてきて観ました。チャールズ・ブロンソンの主演作ですが、ハービー・ハンコックが音楽をつけているので興味があったからです。ハードボイルドタッチの復讐ものといっていい作品ですが、ニューヨークの治安の悪さを描いてもいます。ハンコックは、エレクトリックピアノなどを用いてサウンドを作っていましたが、ストーリーが強烈だけに、音楽は脇役でした。ハンコックが刺激的な演奏をしているライブ録音。
HERBIE HANCOCK (ハービー・ハンコック)
LIVE UNDER THE SKY '79 (SONY MUSIC 1979年録音)
今回ソニーから発売された廉価盤CDに、1979年7月26日に東京田園コロシアムで行われたV.S.O.P. THE QUINTETの公演の実況録音が含まれていたので、購入しました。昼夜2回の公演が行われたのですが、今回の復刻では、昼と夜の二つの公演を収録してあり、CD2枚組でその日の演奏をすべて聴くことができます。
メンバーは、ハービー・ハンコック(p)、ウェイン・ショーター(ts,ss)、フレディ・ハバード(tp)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)。1960年代のマイルス・デイヴィス・グループのメンバーで、マイルスの代わりにハバードが入ったもの。すごい顔ぶれです。
曲は、昼と夜と同じで、メンバーのオリジナルが演奏されています。ハンコックの「Eye of The Hurricane」、「Domo」、ロン・カーターの「Teardrop」、「Fragile」、トニー・ウィリアムスの「Para Orienete」、「Pee Wee」、ハバードの「One Of Another Kind」の7曲。夜の公演では、アンコールとしてショーターとハンコックのデュオで演奏された「Stella By Starlight」と「On Green Dolphin Street」が加えられています。
僕は、この7月26日の夜の部を実際に聴きました。豪雨の中の公演として語り継がれていますが、会場全体の熱気がすごく誰一人として帰ろうという聴衆はいませんでした。隣の人と一緒に傘の中に入って聴いていましたが、ウェイン・ショーターの吹く「Stella by Starlight」の出だしが強く印象に残っています。ハンコックのリズミックなピアノ、ロン・カーターとトニー・ウィリアムスの奔放なプレイ、煽られてハバードもエキサイティングです。ショーターは、比較的クールに演奏しています。どの曲も興奮ものですが、ハンコックの「Eye of The Hurricane」や「Domo」は抽象度も低く馴染みやすい。
【映画「狼よさらば」】
予告編:Death Wish (youtube)
【ジャズ批評2015年11月号】
ロバート・グラスパーとハービー・ハンコックの特集です。ハンコックの奏法の特徴も解説されています。