安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

原 尞著「それまでの明日」(早川書房)

2019-01-03 20:06:18 | 読書

著者の原 尞(はら りょう)さんは、探偵の沢崎を主人公としたハードボイルドのシリーズを書いていますが、十四年ぶりの新作「それまでの明日」が2018年に出されているので、この年末年始休みに読みました。

   

「沢崎は、望月と名乗った金融会社支店長から、赤坂にある老舗料亭の女将の身辺調査を依頼されたが、既に亡くなっていて、報告のために訪れた望月の会社で強盗事件に巻き込まれる。会社の金庫には巨額の現金があり、望月は姿を消してしまう。沢崎は疾走した依頼人の行方を追っていく。」といった粗々の筋です。

探偵の沢崎を主人公にしたシリーズは、今までに5作でていて、これが6作目になります。僕は、はじめの方の2~3作を読んでいますが、主人公の沢崎という探偵のキャラクターが面白いので、ファンになりました。しかし、著者の原さんは、寡作で知られる人で、1990年に3作目の「天使たちの探偵」を刊行した後は、1995年、2004年、今回の2018年と随分と間が空いています。

「それまでの明日」では、テンポのよい文章が続き、謎解きもそれなりにあるのですが、沢崎のキャラクターがかっこよく、話す言葉や行動など、魅力的で印象に残ります。さらに、後半に進むに連れてヒューマンな味わいが入ってきて、ミステリーというだけではくくれない要素が含まれた小説のように思いました。

原 尞さんは、元フリージャズのピアニストで、お兄さんは佐賀県鳥栖市で「コルトレーン・コルトレーン」というジャズ喫茶を経営しています。いつか、この喫茶店を訪れてみたいものです。

【このミステリーがすごい 2019年版(宝島社)】

2019年版の一位は、原 尞著「それまでの明日」です。

   

表紙

   

原 尞さんに対する特別インタビューも行われています。インタビューが行われた場所は、佐賀県鳥栖市のジャズ喫茶「コルトレーン・コルトレーン」です。

【ミステリオーソ】

テンポのよい原さんの文章を読みたくなり、エッセイ集「ミステリオーソ」(1995年初版発行、早川書房)を再読のために本棚から出してきました。「映画とジャズと小説と」という副題がついていて、興味を惹かれます。また、沢崎シリーズの小説の方もハヤカワ文庫で読んでいく予定です。