以前、買っておいた池波正太郎著「夜明けのブランデー」を読みました。週刊「文春」に連載されたエッセイ集です。単行本は、昭和60(1985)年11月に文芸春秋から刊行されています。
(著者略歴)
大正12(1923)年、東京生まれ。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、昭和35年、「錯乱」によって直木賞を受賞。以後、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」、「真田太平記」など多数の作品を発表。平成2(1990)年没。このエッセイは、著者が60代前半の時に書いたものになります。
カバーの裏にある本書の紹介。
(目 次)
全部で40編です。
(感 想)
池波正太郎練達の流麗な文章で綴られていて、テンポ良く読めました。著者の日常生活や子供の時の話、芝居や映画、ヨーロッパの旅の話など、話題がとても広くて飽きる間もありません。人気作家が書くと、こんなに面白いものになるのだと思わされるエッセイ集です。
著者直筆による挿絵がそれぞれについていて、観る楽しみモ加わっています。さらっと書き流している感じの絵は、軽みがあり、挿絵として相応しいものです。40編のうち、特に印象に残ったのは次の3編です。
まず、「永倉新八と映画」です。そのページの一部を掲げます。
初めて知りましたが、永倉新八は、新選組の生き残り隊士で、大正3年に77歳の生涯を小樽で終えたそうです。新選組は、幕末までに皆亡くなったと思い込んでいたので、驚きました。今、永倉新八を主人公にした池波正太郎著「幕末新撰組」を読んでいるところです。
2番目は、「田中冬二の世界」です。
池波さんは、田中冬二の詩を愛好していました。『戦後、ことに近年の詩壇は、やたら難渋な語彙をもてあそんでいて、少しも感興をそそられず、たとえば、〈日本詩人全集〉のようなものが編まれるとき、田中冬二は、いつも敬遠されてしまい、私はおもしろくなかった。』と記しています。まとめて田中冬二の詩を読んでみようと思わされました。
3つ目は、「職業」という一編。
ユトリロが画家になった経緯が記されていて面白く、続編の「ユトリロと、母」という一編も感興を覚えました。
【現在、読んでいる池波正太郎の「幕末新選組」】