家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

気田川 泥水

2010-07-16 08:27:05 | Weblog
「夕べはガンコ降ったで」とY爺さんが軽トラの窓から大きな声で言った。

天竜川の河口近くから川を見ながら北上する私は水の多さを実感してきた。

堤防下のグラウンドや自転車道等は水没していないがモトクロス場として利用している場所は完全に水の中だ。

途中で二俣川が天竜川に合流するが、こちらはきれいな色をしている。

釣り客までいるぐらい、ごく普通の状態に近い。

春野の我が家の前を通る気田川は泥色をした大水がとうとうと流れている。

土石流とは言えないが普段は透き通った水が有名な川だけにY爺さんの言ったことばの重さが分かる。

この泥水が天竜川の色の源だったと知る。

川床の砂利を少し移動させて別荘群を水没させないようにした処置は正しかった。

さもないと濁流に飲み込まれる家を見ることになりそうだ。

泥を含んだ水の音は、いつものサラサラ流れる清流とは違って、まるで恨みを持っているかのような不気味なすご味を持つ。

水底から泥を押し上げたかと思うと上から下に押し戻す。

そんなことを繰り返しながら橋脚にぶつかり押し流そうとする。

流れている水だけでなく川底から川全体が怒っているかのようだ。

猛り狂う川に住む魚たちは命からがら、どこかに避難して怒りの納まるのを待っているのだろう。

雲の色は、まだ怒りが収まっていないことを示している。

時折現われる青空が余計に黒い雲の恐ろしさを物語る。

空の神の怒りが鎮まるのを切に望む。