ものは言いよう

　ある先輩と話をしていて、数百万円の報酬金がもらえることになったという事件の話題になった。私は、「それは大きいですねえ」と言ったのだが、その先輩は、「これじゃあ、●か月分の経費にしかならねえ」と吐き捨てるような調子で言った。その言い方を見て、その先輩弁護士が遠くない将来、この仕事で行き詰ると確信した。
　もちろん、私とて「金のために仕事をしているんじゃない」というのが綺麗ごとに過ぎないことは分かっている。だが、業界環境がこれだけ厳しい中で、必要としてくれるお客さんがいて、それなりの報酬をもらえるだけでも恵まれているのではないか。それよりも何よりも、「仕事それ自体が貴重なことなのだ」という基本姿勢を失っているように思えたのだ。