明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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『生誕120年 野島康三 肖像の核心展』
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/
2009-09-29
田村写真の田村さんから、松涛美術館でやっている
野島康三展
を観に行きましょうと電話。本来渋谷など、できるだけ行きたくない場所だが、野島康三となれば別である。1991年の松涛美術館の野島康三展の開催直後の図録を入手し、ブロムオイルなどの油性絵の具を使う古典技法に衝撃を受けた。ブロムオイルはモノクロ印画紙を使うが、インターネットなどもやっていなかったので、海外でいまだに制作している人たちがいることも知らず、情報もないので、神田古書街に通って、主に大正時代の文献を入手し、ブロムオイルの一歩手前、さらに古いオイルプリントを試みたのであった。その辺りのことは以前
クラッシックカメラ専科
という雑誌に書き、泉鏡花のオイル作品とともに掲載された。今と違ってこの類の古典的プロセスを試みる人も少なく、ましてオイルプリントは誰もやっていない。写真展など思いもつかなかったのに係わらず、人形も作らず、数ヶ月熱に浮かされ、とりつかれたようにオイルプリント制作に没頭した。ブロムオイルやオイルプリントには独特の用語があるが、こんなものは、話し相手がいてこそだと気付いて可笑しかった。野島康三の素晴らしいプリントを見て、当時の気持ちが蘇えってくるが、あんな暴走行為は二度とできないだろう。私のもともとの企みは、人形作品をオイルプリント化するところにある。当然、野島康三はもとより、海外にだってそんなことをする作家などいないが、人形というウソにオイルプリントというウソを重ねるとホントになる。例によって自分ではなんでこんなことを、と理解も出きずに没頭していた当時、私はすでに、どこかで気付いていたはずである。またこのアナログの極みのような技法は、デジタルと出会ったとき面白い効果が生まれる。 しばらくオイルプリント作品を発表していないが、作家作品を中心に、いずれオイルプリント化されるであろうデータが蓄積されつつある。泉鏡花などこの技法にぴったりだし、夏目漱石を猫とともに作品化してみたいし、ニジンスキーのシャトレ座初登場時の大ジャンプも、というようなことは常に頭にある。そもそも私がHPを始めた目的の一つに、この廃れた技法を再興するための記録の公開にあった。 それにしても松涛美術館、次の展覧が村山槐多だというからたまらない。ただ場所が悪い。
オイルプリントについて
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