明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



銀座4丁目でYさん等と待ち合わせ、灘本唯人、宇野亜喜良、和田誠、横尾忠則4氏のギャラリートークの会場に向かう。Yさんが拙著2冊を直接横尾さんに渡してくれており、今日はサインをしていただこうと、中学一年の時に買った講談社版『江戸川乱歩全集』第一巻(昭和44年)を持っていく。この全集により乱歩にはまった読者は多いはずだが、私にとっても、初めての大人向け乱歩であったし、布張りの装丁本を買ったのも生まれて始めてであった。全巻予約すると挿絵セットがもらえたが、私は小遣いが続かず全巻予約とはいかなかったのだが、なぜだか何巻目かにセットが紛れていた。それにサインをいただくつもりであったが、何処にしまったかでてこない。しかたがないので本そのものを持って行った。鳩居堂で金色の筆ペンを買う。「使う前に良く振ってください」。多少念入りに振り過ぎたかもしれない。  トークはお互いが青年時代からの付き合いゆえに、気心の知れた非常にリラックスした楽しい展開であった。私にしてもそうだが、若い時代に知り合った友人は貴重であり、大人になって知り合った友人とは、一味違うものである。 終了後、控え室の横尾さんにご挨拶。サインをお願いすると、「この本僕が挿絵を描いたんだ?」『白昼夢』の女の切断された首にお願いすると「もっといいのがあるんじゃない?」選ばれたのは『D坂の殺人事件』であった。ところが件のペン。インクが溢れて横尾さんの靴の上にポタリ。すぐ拭いてことなきをえたが、肝を冷やすとはこのことである。そしてこんどは紙にインクが乗らない。結局傍らの方に黒のサインペンをお借りした。 宇野亜喜良さんには、2003年『私の劇場3』にお誘いいただいて以来である。壇上より気付かれたそうで嬉しかった。アダージョの数号を差上げ話をしていると、どこの業界の女だか、私が目に入らないかのように割ってはいって一方的に話し始めた。なんでこういう無礼なことができるのか、私は8歳までは東京の下町のような、うっとおしいくらい狭い地域に強制的に住まわせ、人間関係の距離感覚を叩き込むべきだと考えている。ただし、施行すべきは凡人に限る。 それにしても横尾さん、宇野さん、こういう方々はオーラの割りに偉そうなところは一つもない。偉そうな奴で、出来る人間に私は会ったことがないのである。そこで私は出来る人間に見せかけるため、腰だけは低くしている、というわけなのである。

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