踊りの師匠の丸髷は、鏡花の時代の挿絵をみると、ちょっと雰囲気が違う。調整してみたらぐっと良くなった。髪型は時代により様々である。櫛、笄はネットオークションで落札しておいた物がある。モニターでみても良い物だと判ったので、どうせ落ちるわけがない、とそのまま飲みにいってしまったが、帰ったら落札していた。これでお礼をいわれてはまったく申し訳ない品で、ベッコウに漆に金彩などの櫛と笄がいくつも届いた。いくつも届いたところで、たった一日の物語である。櫛はともかく、髷の中から頭を出す笄はそう取り替える物でもなさそうである。 河童の三郎は鎮守の社の姫神に、腕を折った人間どもへの仇討ちを願い出る。そこでまず用件を聞くのが柳田國男演ずる、禰宜姿の翁である。今の所、ただ突っ立っている翁しかないので、かがんで三郎の話を聞く翁を作ることにした。 娘の尻を触ろうとした三郎は、見つかりそうになりマテ貝の穴に隠れる。そうとも知らない人間が、貝を掘り出そうとしてステッキで穴を突く。翁もいうが、それで仇討ちとは道理がとおらない話である。しかし翁はあくまで三郎に愛情深く接し、一応姫神に伺ってみようということになる。 三郎はマテ貝の穴に入るくらいだから、小さい方にはいくらでも変われるが、普段の大きさは90センチ程度である。この場面はひれ伏す子犬に接する老人。そんな場面をイメージしている。私は柳田が、盟友鏡花のこの作品に対し、「河童を馬鹿にしてござる」と評していたのを知っている。それを承知で出演いただくのであるから、ここは一つ、それに見合う場面にしたいところである。
それにしてもつくづく思うが、手前勝手な理由で喜んだり腹を立てたり、三郎と身も心もそっくりな人物が近所にいる。違いをあえてあげるならば、執着箇所が尻より胸であることくらいであろう。先日の夜、飲んだ別れ際の信号待ち。何かぐずぐずいっている。要約すると、自分の置かれている状況の問題点は、女性が自分に焼きもちをやくせいだ。ということのようである。一度鎮守の杜の姫神様に相談したほうが良かろう。私はこの男の頭頂部に金ダライが直撃する様を想像していた。
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