毎日記憶がなくなるまで飲む人がいる。そういう人と飲んでいると、今私と話していることも覚えていないのだろうな、と死体と話しているような虚しさを感じる。一応動いているのでゾンビが近いかもしれない。 朝目が覚めたらパソコンが着けっぱなしである。残ったマテ貝を肴に飲む前に、閉じたことは間違いないのだが。驚いたことに制作中のデータが完成しているではないか。これを完成させた奴は私とセンスが似ている。これだから寝る前に玄関の鍵はしめなければならない。犯人はいつだったか、身に覚えのないコンビニのソフトクリームを、寝ている私の頭に擦り付けていった奴であろう。
表紙を担当した某社長自伝本。もう来月十何日に発売だそうである。訊いたのに何日だったか忘れてしまった。相変わらず数字は訊いているそばから忘れる。スケジュールはかなり厳しかったようで、完成は早ければ早い方が良いという感じであった。新大阪で編集者と待ち合わせ、背景撮影は20分ほどで終わった。ちょうど商店街だったので、うどんやたこ焼きでも食べて帰ろうとしたら新大阪まで送ってくれるという。それでは駅周辺で、と思ったら切符売り場で、何時の新幹線にしますか?「えーっと。じゃあ次ので」。そのまま帰ってしまった。今になってみると、ぐずぐずしてないで、早く帰って作りなさい。とホウキで掃出されたような気がする。いやそれは考え過ぎであろう。 制作中、原稿を読ませてもらった。現在の顔と、ちょっと前の顔が別人のようにみえて、何かヒントがないか、ともう一度読んだ。特になかったので、最新の写真だけを参考にした。人物伝好きな私とはいえ、数日の間で二度読めるのだから、面白いことは間違いがない。 続いてロシアの文豪を作ることになった。 フリーペーパー『中央公論Adagio』。都営地下鉄沿線の地域にちなんだ人物を、誰々と何処そこを歩く。という趣旨で4年続いたフリーペーパーであったが、都営地下鉄が東京をまんべんなく網羅しているとはいえず、末期には特集人物決を決めることは難航した。そしてこの人物の名前があがったことがある。この人物、来日していないのである。時に頓知を働かせないと画面内に納まらない場合があったが、ついに何処も歩いていない人物が浮上した。唖然としたが幸い、どんな画にしてよいか苦しむ寸前に没になった。なんだかようやく再会する人、のような気がしている。
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