明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



昨年入手しておいた冷凍マテ貝を解凍し撮影。背景はすでに用意してあるので、どう撮影するかは決まっている。数カットで終了。とりあえず網で焼いて食す。寒い。ついでに芋焼酎。すぐ合成作業に入る。イメージとしては穴の中の河童が、ちょうど諏訪の御柱祭のようにマテ貝にしがみつく予定である。砂浜に100円ライターがただ突っ立っているようなマテ貝より面白いであろう。  鏡花は時間を微妙にずらす。今の事かと思うとさっきのことで、もうすでに済んでしまった事を、思いだしたように差し挟む。こういったことも鏡花作品のリズムに貢献しているのであろう。しかしおかげで勘違いして、人の向きから地面の様子から、何度作り直したことであろう。ビジュアル化している私としては、混乱のもとだと、時間にそって律儀に描いていたが。  昨晩、河童の三郎が長い石段を上り、ようやく境内にたどり着き「願いまっしゅ」と、かしずくあたりを作った。左のページのカットは、神社額の影から白い蝶が飛ぶ。鱗粉をまき散らすようにユラユラ飛ぶ雰囲気も出て完成した。 私は完成した、と思ったとたん未練がましく、合成データを統合せずに保存しておくのが嫌いである。普段はだらしなくノンビリしているくせに、作品制作に関することはせっかちで、完成した。と思ったら要らなくなった物はすぐ捨ててしまう。 マテ貝に焼酎の午後。おおまかなレイアウトを眺めていて、蝶が、右側のページに時間を無視して飛び込んできたらどうだろうか。と思いついた。たいした表現ではないが、1カットで完結させる写真作品とは違い、ページを開く書籍ならではのやり方があるだろう。律儀に時間に沿って描くよりも効果的なシーンが他にもあるかもしれない。 それにしてもすでに作業を昨晩終えてしまっている。“夜書いたラブレターは一晩寝てから投函せよ”である。後悔しても遅い。もう一度作りなおさなければならなくなってしまった。未練がましいことへの嫌悪というのは東京の下町育ちと無縁ではない。どうせもともと未練がましい人間に限って、そんな見栄を張るに違いないが。そんなにさっぱりしているのなら、まず部屋を片付けろ、と自分にいいたい。

去の雑記

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