母がショ一トステイに行っていると、一週間があっという間である。まったく解せない。迎えにいくと、よほど楽しかったのか名残惜しそうである。ム一ドメ一カ一になってるそうだが、私の考えすぎか、担当者の笑顔は本当は苦いのに無理しているように思えてしまう。無事帰宅。すると行きつけの居酒屋から意味なく追い出されてしまい、おそらく昨年から替えられていない熊手の祝儀袋に名を残すのみの、以来彷徨っている落ち武者仲間からお誘いのメ一ル。母との“出所祝い”は後日にして洲崎に向かう。例によって平家の落ち武者もかくや、とブチブチいいながら瓶がならぶ。店を出て、昔アルバイトで作ったパラダイス入り口の子供の銅像の尻を叩いたりしてもう一軒。 昔からあるのは知っていたが、外から中が見えないせいか入るのは初めてである。中は想像と違い磨きこまれた店内に品がある。お客も落ち着いている。低いテ一ブル席から眺めるとまるで小津映画で娘の結婚について話し合っている3人組が座っていそうである。お店の中年夫婦もよい感じだし、つまみもシミジミとしていて良い。なんでこんな場所にありながら、こんな調子が保たれているのか。そこへ品の良いお婆さん登場。この店の雰囲気の源はこれだ、とすぐ解った。お婆さんに夫婦。私たちにはどこかの店と同じ構成で小津監督が撮り直した映画のように思えてしまい、晴れ晴れとした気分で店を出た。落ち武者の皆さんには朗報である。だがしかし、だからといって落ち武を全員集めて、なんてことはしてはいけない。少人数でシミジミするに限る。
青木画廊サイト。小津安二郎像に写真2点出品。
開廊55周年記念「眼展2016Part1〜妄想キャバレー〜」銀座青木画廊
2016.11/05(土)~2016.11/18(金)アートスケープ 展評『深川の人形作家 石塚公昭の世界』
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