明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



昼過ぎに制作中の人物に合成する人の手脚を撮影する。私の撮影は、現場では実に馬鹿々しい状況であることが多い。私の中には画が浮んでいるが、そうでない人からすれば実に奇妙なものであろう。そういう意味でいえば、本日の撮影はトップクラスの馬鹿々しさであった。パンツ一丁のおじさんに艶消し用の白粉を塗っての撮影である。できればこんなことはしたくないのだが、最初に浮んだ画がこれだったのでしかたがない。養老孟司がいうところの“人間は頭に浮かんだ物を作るように出来ている”という仕組みのせいである。もっとも目の前のおじさんも、身体に白粉を塗られ、なおかつあられもないポーズを取らされていい迷惑であろうが、数時間後にちゃんと元を取るのである。 おじさんは本日休みだったのだが、明日は仕事だし、軽く打ち上げを、とT千穂へ。定年後、酔っぱらってコタツの角で額を二十数針縫っているし、頭にホッチキスも体験済みだし鎖骨も折り、救急車9回、パトカー2回の強者であるが、女性客が多くなり次第に本性が現れてくる。カウンタ−に南京の医学生だという美女が登場するに及んで最高調。早く帰るといっていたのに数年間惚れ込んでいるほとんどの怪我の原因である女性に、自分だと出てくれないからメールしてくれという。あまりぐずぐずいうので、Iさんと私とおじさんで、彼女が飲んでいる立ち飲み屋へ。満面の笑みでパンツ一丁の元を取るおじさんであった。

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』より

月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真

※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」

HP

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