明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



2体目の芯を作る。実は最初に浮んだのは、寝姿であるこちらであった。寝ているといっても穏やかな状態ではなく、どちらかというと寝転ばされている、に近い。鏑木清方作の『三遊亭円朝像へのオマージュ』に続いてのオマージュ作品といって良いだろう。ただ円朝は構図をそのまま拝借しただけであったし、円朝ではなく清方作品へのオマージュであったが、今回は画家自身へのオマージュとなる予定である。 手足のモデルに起用した爺は、すでに方々の飲み屋の女の子にその人物になるのだ、といいふらしているらしい。『貝の穴に河童の居る事』には、女の尻を触ろうとして怪我をする哀れな河童に優しい眼差しを向ける翁役に柳田國男を使った。その手足もその爺さんを起用したのだが、河童は爺さんがモデルだろう、と周囲に思われ実に迷惑している。確かに河童は作中で翁に、お前等一族は昔からそれで怪我をする、と諌められると、人間も河童も口に出さないだけで一緒だ、という。一方の爺も、「いわないだけでみんな女(おなご)が好きなの!」という口癖に、河童と同じこといっていやがる、と苦笑したものである。 身長160センチを180センチにサイズアップしている上に艶消しのために肌色の白粉を塗ってある。老人班も消えてしまって、案外若々しくなってしまった。完成の暁には写真を持ち歩き、飲み屋で見せびらかして回るのは目に見えてる。パンツ一丁で協力してもらっていうのもなんだが、少々ムカつく。画家は老人なのでリアルに老人斑だらけにするか決めかねているのだが、老人斑を加えない場合は「白粉とデジタルで染みを消すの大変だったよ」。老人斑だらけにする場合は、手足伸ばしただけで他は一切無加工。と横でいってやる。

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真

※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」

HP

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