高橋幸宏さんの『EGO』(1988)のレコードジャケットのオブジェを制作した。アートディレクターとコーディネーターによると東芝EMIに移籍ということもあり、コンセプトは〝死と再生”だったと思う。何故私の所に話が来たのかは覚えていないが、説明が抽象的で要領を得ない。二つほど首を試作したが、そういうことではない、と。背中を押すつもりか「0か100で行って下さい。」 地元の先輩である陶芸家の工房に泊まり込んで1メートル角のベニア板の上に、作品として使うものでなく、窯の中の作品を支えたりする道具土で顔を作り、後は石膏で、地中より現れ出でるというイメージであった。 レコードの中のパンフレット撮影のため、湾岸で撮影後、撮影の山口ゲン氏、他大勢のスタッフと共に高橋さんも我が家に。お礼を言っていただいたが、目が合うことなく、非常な緊張感を残したまま帰られた。おかげで記念写真を、とも言い出せず。残ったアートディレクターに軽口のつもりで「やり過ぎですか?」といったら「やり過ぎですね。」 後で聞くと社内的に説得が大変だったようだが無事に発売となった。当時唯一レコードジャケット評が載る、ミュージックマガジンに立花ハジメ氏によりアルバムサイズで観たい」と書かれていて嬉しかった。当時はアナログが消滅するかのような時代だったので、アナログLPに間に合った。と思ったのも覚えている。タイトルはピーター・バラカン氏の命名と聞いていたが、後年お会いする機会があり確認したが覚えていないようであった。最も追い詰められた制作として記憶に残る。安らかに。合掌。