アイデアが一つ浮かぶ。浮かぶのは良いが、そのためにはまず、その一カットのためだけに、被写体を作らなければならない。随分先の話になってしまうわけだが、しかし完成までのモチベーションを保つためには、作るだけの理由が必要である。その思い付いたアイデアが実現した所を見てみたい、逆に言えば、それがなければ始めることは出来ない。思いついたことというのは、英一蝶の滝に打たれる不動明王が、濡らす訳には行かない、と背中の火炎を傍に置いている、という作品で、この手のユーモアが大好きなのだが、その面白さは戯画的ではあるけれど、一蝶の作品で充分である。なので、それだけで私が手掛ける訳にはいかない。思い付いたのは、不動明王を裸で作り、衣を布で作り、滝に打たれ、慣れた衣が身体に張り付いている。というもので、不動明王の体色は濃いし、むっちりした不動明王に、濡れた衣は効果的だろう。これを見たいがためだけに、数ヶ月かけることが可能となり、私の不動明王図の見どころ、ということになるだろう。