昨日の滝に打たれた不動明王の、濡れて肌に張り付いた衣だが、濡れた不動明王を見たことがないし、そのディテールを撮る事を想像すると、それは写真的好奇心であり、絵で描けば良いではないか、ということにはならない。 肌に張り付いた布と言えば、三島由紀夫の『潮騒』における初江である。例によってただの素人にモデルをお願いしている。鈴木邦男さんに「何で素人の娘さんがモデルになってくれるの?」と何故か恥ずかしそうに聞かれたのを思い出す。 モデルは近所の居酒屋の長女で、実家でもある居酒屋の屋上で、お母さんに柄杓で水をかけて貰いながら撮影した。他の海女が全裸に海女着なのに初江はブラジャーをしていたが、それを外して、とは彼女の実家の屋上で、母親の前で言えない。 数日後、店で親父相手に飲んでると、娘に電話をかけ「ブラジャー着けてるなんてダメだろ」なんて撮り終わったと思って心にもないことをいっていた。リアルさに欠けるので、初江に許可を取り修正した。確か今は2人の子の母親である。いやもっと殖えてるかもしれない。彼女とお母さんには拙著『貝の穴に河童の居る事』に出てもらったし、次女とお母さんには、牡丹燈篭のお露と待女お米になってもらった。