タップ 詩 by 翔
走りながら 左手で少しだけシールドを上げる
とたんにヘルメットの中に流れ込んでくるのは 初夏の風
その温かさは僕の心をタップする
その左手をクラッチレバーに戻す その一瞬
流れてくるエアストリームは5つの指先で4つの流れを創りあげ
乾いた空気が指先をタップする
アクセルを握る右手 少しだけ煽りこまれるスロットル
4気筒シリンダーのエンジンはメロディを刻み 踊る新芽達
木影の譜線に音符をタップする
常に変調を要求されるギアは 次々とシフトを繰り返す
左足の指先はあたかもリズムを刻むバスドラムのハンマーペダル
路端に輝く タンポポ達のシンバル
右足の指先は、いつも始まりと終わりをタクト
流れの速さも、強弱も、そして一つの曲の終わりは大地と供にあり
停止し静寂になった時、バイクはたたずむ
少しだけ汗ばんだTシャツを海風が貫き、空と海を蒼くペイントする
色とりどりの季節は確実に陽炎の季節へと変化し、そこには常に太陽。
ヘルメットを脱ぐと 瞳に流れ込む季節の光は眩しく それでいて心を躍らせる
目を閉じて心を研ぎ澄ますと聞こえてくる音
命の証明
生まれた瞬間からもらった 鼓動というタップ。