「 無題 」 詩 By 翔
少しほどけたススキと、ゆるりと舞う赤とんぼ。
夕日に溶ける赤と、 ゴールドの翼。
どこからか飛ばされてきた麦わら帽子に
浜ヒルガオも少し悲しそう
葉だけがまだ幾分かの青を残している。
まだ緑を残す桜の葉、絡み取られた蜘蛛の糸。
朝日にそまる森は、少しだけ先取り色
置き忘れられて穴の空いた虫取り網。
地面に落ち、二度と唄わず分解されてつつ
故郷(大地)に帰るセミ達
大気に薫る麦の穂、 風の舞う姿と恵みの夢
風見鶏が時を告げ、 気まぐれな唄と
嵐が連れてくる暖かくて、冷たい風。
人の姿も失われ、取り残された海辺の竹垣達が歌う
季節の子守歌
肌に残る太陽、 潮に焼けた髪とブラウンの瞳
握られた暑い砂は、 細い砂の軌跡として散り
「まだ僕はいるよ!」そう呟く海の風。
乾きゆくセイルに、ミクロの粒となって飛んでいく水は、
想い出へと変わっていく
いつかの自分、 汚れた短パンに汗だくのシャツ
片手にカブトムシ、 片方にザリガニ、
蛇口から溢れる生暖かい水の甘い感触
花火と火傷と歓声、 手を付けていない宿題に、
まっさらなままの絵日記
いつかの少年、 何時までも変わらない心
今あるこの一瞬、 僕につながる人達と
母である海、そして地球という親父
強さは人のために、 優しさは愛する人のために、
記憶という煌めきだけが 僕の物
僕は僕の物であって、 僕だけの物でも無く、
人の物ではなくて、人の物でも有る
世に生まれ出る事、それは取り囲む全てと溶け合うこと。
言葉では無く、 言葉で有り、
だから僕たちは囁きながらも囁かずに去って行くんだと、
もうすぐ秋の風が来るから、「よろしく!」
そう言いながら笑顔で去っていくシーブリーズ。
又来年会おうよ! そう彼らに送る言葉と供に・・・・