「スター・ウォーズ」を訳している時は、まさしく至福の時でした。
「エピソード3」では、オビ=ワン・ケノービの活躍が堪能できました。
オビ=ワンがフォースとひとつになった時の動きは、特に慎重に訳しました。
第15章にこんな描写があります。
Leaping girder to girder, slashing cables on which to swing through swarms of ricocheting particle beams, blade flickering so fast it became a deflector shield that splattered blaster bolts in all directions, his presence alone became a weapon: as he spun and whirled through the control center's superstructure, the blasts of particle cannons from power droids destroyed equipment and shattered girders and unleashed a torrent of red-hot debris that crashed to the deck, crushing droids on all sides. By the time he flipped down through the air to land catfooted on the deck once more, nearly half the droids between him and Grievous had been destroyed by their own not-so-friendly fire.
これを最初は次のように訳してみました。
梁から梁へと飛び移り、断ち切ったケーブルにつかまって、跳ね返った粒子ビームが激しく飛び交う中を通りぬけていった。ライトセーバーが素早く動いて偏向シールドとなり、ブラスター弾をあらゆる方向へはじき返した。オビ=ワン自身がいわば一つの武器となっていた。オビ=ワンが司令センターの上部構造の中でくるくる回転したり、走り回ったりするので、戦闘ドロイドが放った粒子弾で装置は破壊され、梁もめちゃめちゃに壊された。そのため、熱で赤くなっている残骸がデッキへどっと崩れ落ち、あたりのドロイドをすべて押しつぶした。オビ=ワンはひょいと身をひるがえして、再び静かにデッキに降り立った。その時にはすでに、グリーバスとのあいだにいるドロイドのほぼ半数が破壊されていた。味方同士による、あまり友好的とは言えない撃ち合いのせいだった。
「熱で赤くなっている残骸」「あまり友好的とは言えない撃ち合い」あたりは訳語として調整が必要なものの、大きな英語の読み違いはありません。
ただ、訳文が「ぶつ切れ」で、フォースとひとつになったオビ=ワンのあの動きのすばやさが出ていません。
最終的に、次のように調整してみましたが、いかがでしょうか?
梁から梁へと飛び移り、ケーブルを断ち切ってはそれにぶら下がり、跳ね返った粒子ビームが激しく飛び交う中をくぐりぬけ、猛スピードでライトセーバーを動かして弾を跳ね返すシールドとし、ブラスター弾をあらゆる方向へ弾はじき返す。オビ= ワンの存在そのものがひとつの武器となっていた。オビ= ワンが司令センターの上部構造のあいだをあちこちかけ巡り、くるくると跳びまわるうちに、戦闘ドロイドの放つ粒子弾が設備を破壊し、梁を粉々に吹き飛ばし、真っ赤に熱せられた瓦礫が床にどっと崩れ落ち、四方八方でドロイドを押しつぶした。オビ= ワンがひょいと身を翻して、音も立てずにふたたび床に降り立ったときにはすでに、グリーバスとのあいだにいるドロイドのほぼ半数が、友軍誤射とも言いがたい味方の攻撃によって破壊されていた。
昨年12月には「スター・ウォーズ」の「エピソードIV」「エピソードV」「エピソードVI」を、そして今年2016年の10月から12月にかけて、「エピソードI」「エピソードII」「エピソードIII」を刊行することができました。
多くの読者のみなさまにお楽しみいただけますことを、関係者一同、祈っております。
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
原作:ルーカス,ジョージ 著:ストーヴァー,マシュー 訳:上杉隼人 訳:有馬さとこ
「スター・ウォーズ」新三部作の新訳ノベライズ、第3弾!
クローン大戦の勃発から3年後。分離主義勢力によるパルパティーン最高議長拉致事件が起きる。アナキンはオビワンとともに無事パルパティーンを救出するが、パルパティーンの巧みな言葉に触発され、ジェダイの掟を逸脱してしまう。
さらに妻パドメを失う予知夢にうなされ、強大な力を欲するようになるアナキンに、暗黒面の誘惑が忍び寄り――!?
(C) & TM 2016 LUCASFILM LTD.
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935647
目次
序章 英雄たちの時代
第一部 勝利
第1章 アナキンとオビ=ワン
第2章 ドゥークー
第3章 シスの流儀
第4章 ジェダイに仕掛けた罠
第5章 グリーバス
第6章 救出
第7章 アナキンとオビ=ワン その二
第二部 誘惑
第8章 断層線
第9章 パドメ
第10章 マスター
第11章 政治
第12章 ジェダイからは得られないもの
第13章 フォースの意志
第14章 闇の中を落ちていく
第15章 ウータパウに死す
第16章 啓示
第三部 黙示録
第17章 闇の顔
第18章 オーダー66
第19章 シスの顔
第20章 光と闇
第21章 新たなジェダイ騎士団
訳者あとがき
製品情報
製品名
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
著者名
原作:ルーカス,ジョージ 著:ストーヴァー,マシュー 訳:上杉隼人 訳:有馬さとこ
発売日
2016年12月15日
価格
定価 : 本体1,100円(税別)
ISBN
978-4-06-293564-7
判型
A6
ページ数
608ページ
電子版製品名
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
シリーズ
講談社文庫
著者紹介
原作:ルーカス,ジョージ(ルーカス,ジョージ)
著:ストーヴァー,マシュー(ストーヴァー,マシュー)
訳:上杉隼人(ウエスギハヤト)
訳:有馬さとこ(アリマサトコ)