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2018年12月に刊行した『若い読者のためのアメリカ史』(すばる舎)、重版!
みなさんのおかげです。ほんとうにありがとうございます!
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「訳者あとがき」より
本書を読むことで、アメリカ合衆国がどういった歴史の過程を踏んで現在の状態に至ったかのみならず、どうして国民がドナルド・トランプ(1946~ )を第45代大統領に選出したかもおのずとわかるだろう(デイビッドソンの原書はトランプが大統領選に勝利した2016年の1年前の9月に出版されているが、まるで同大統領の誕生を預言するようなことも書かれていて、はっとさせられる)。
自由で平等でひとつでいられる新たな諸策を見出すことができるのか?(448ページ)
著者はアメリカ合衆国が抱える問題をこの視点から一貫して問いつづける。
だがその語り口はただ史実を機械的に羅列するだけでなく、過去の膨大な文献を細かく読み解き、当時に残された人々の言葉を実にたくみに引用しながら、時に各人物の心の中の叫びまで再現しようとすることで、まるで壮大な歴史小説を読んでいるような興奮を読者は覚えるだろう。さらに前半部に記されたアメリカ先住民がたどった悲しい歴史など、日本人があまり知ることがなかったと思われる史実も詳しく書かれているので、それを読んでめくるめくアメリカ史にさらに深く踏み込んでいきたいと思う方もきっと出てくることだろう。
この「偉大なるアメリカの物語」を訳しているときは至福の時間であったし、これだけの大作を訳させていただけるという身にあまる光栄な機会を与えていただいたすばる舎の田中智子さんに、そして翻訳作業を後押ししてくださり、編集段階に入っても地図や詳細な索引の作成を含めてきびしい作業を大変な熱意で進めてくださった中野幸さんに、心より感謝する。また校正刷を念入りに確認してくれて、建設的なコメントをいくつも寄せてくれたフリー編集者の上原昌弘さんにも、この場を借りて厚く御礼を申し上げる。
著者が言うように、アメリカ史は「面白い物語以上のもの」(438ページ)だ。上杉はスター・ウォーズやアベンジャーズやディズニー関連の小説やノンフィクションの翻訳を数多く手がけているが、本書を訳しながら、アメリカ史を読み解くのはこの国が作り上げた一大エンターテインメントを楽しむのと同じくらいわくわくすると何度も感じた。実際アメリカ合衆国がこれほどドラマチックな歴史を歩んできたからこそ、この国から世界中の人々に大きな興奮と感動を与える数多くの作品が生み出されているのかもしれない。
本書によってアメリカ史の測り知れない魅力を読者のみなさんにも感じていただければ、訳者としてこれほどうれしいことはない。
2018年11月
訳者代表 上杉隼人