なぎのあとさき

日記です。

グラン・トリノ

2009年05月12日 | 映画の話(ネタばれ)
元軍人の老人が移民の家族を救う話、と聞いて、
久々のエンタテイメント作品だ、と、
気楽な感じで観に行った、けど、やはり、
そんなヒトコトではくくれない。

まず、とにかく、
イーストウッドがかっこいい。
イーストウッドは1930年生まれ
(ゴダールと同じ)、78歳。
そんな年になっても、
人がこんなにかっこよくいられるとは。

映画は、偏屈な老人のボヤキがおかしくて、
ラスト近くまで笑いがたえなかったほど。
孤独な老人が、スーや少年に、
少しずつ心を開いていく様は、
微笑ましくさえあった。
神父さんの顔、
天使を大人にしたような顔。
床屋のおっさんとのやりとりもおかしかった。

途中でチンピラを脅す、
イーストウッドの目力が!
『許されざる者』の頃と変わらない鋭さ。
眼力だけでド迫力のバイオレンス。

笑いありの楽しいシーンの間も、
ワンコと車の無事が気にかかって、
なんだかドキドキするけれど、
彼を信じていればいいのだった。

ラスト近くになって、
ガツーンと心臓をつかまれ、
揺さぶられて、涙が止まらない。
そのシーンは、心につきささり、
刻まれる。
映画史上最強にかっこいい男に、
ふさわしい壮絶なそのシーンに、
感動とともに哀しみが、
一気にこみあげる。
そして、美しいラストシーンへ。

70年代は誰よりアメ車が似合っていたことをふまえての、
グラン・トリノの扱い、
ラストの歌までかっこよかったなぁ。
次の世代へ、譲り渡すもの。
彼の生き様、彼の映画。
イーストウッドにはずっとイーストウッドでいてほしい者には、
哀しくてしかたないラストシーンでもある。

少年との友情、
全てに落とし前をつける生き様もよかったけど、
老人のラブストーリーとしても、よかった。
命をかけた、最後の恋。
その枯れなさがまた、
イーストウッドのかっこよさ。

先日たまたま読んだ『elle』のインタビューで、
ご自身に一番近い役は?の質問に、
『マディソン郡の橋』とのお答え。
ジョークかと思ったけど、本当かも。

渋谷にて。
私だけでなく、
ダーも「イーストウッドかっこよすぎ!」、と、
二人でメロメロしながら上の居酒屋で余韻にひたりつつ、
一服&ビール。
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