安倍晋三が言う「美しい国」のモデルは?

2006-08-27 07:06:25 | Weblog

 安倍晋三は言う。「日本を美しい国にしていく」

 現在、日本が美しい国ではないから、美しくする必要が生じているということだろう。今の日本の国がどう美しくないのか、その美しくない姿をどう変えて、これこれこのような美しい日本にしていくというそれぞれの具体的な説明があって、初めて「日本を美しい国にしていく」という政策立案が目に見えてくる。その是非も判断可能となる。

 『美しい国』という書名の自著があるとのことだが、そこにどう書いてあるか知らないが、知りたければ書いてあるから読めとは言えないだろう。知りたいすべての人間は読めということになったら、一種のファシズムとなる。テレビで「美しい国にする」と喋っている以上、どう美しくないのか、それをどう美しくしていくのか、時・場所を同じくしたテレビ上で責任上機会あるごとに説明すべきである。それが日本の政治をリードしていくべく目指している政治家としての説明責任と言うべきものだろう。
 
 説明がなければ、空理空論を弄ぶ類と化す。

 「日本を美しい国」としなければならない現在の〝美しくない日本〟は戦後自民党政治がその殆どに関わって自らの手でつくり上げてきた日本であろう。現時点ではその最終場面を小泉構造改革も手を貸して〝美しくなさ〟を補強した。「格差社会」日本も〝美しくない〟日本の一つであろう。

 補強したと言って悪ければ、少なくとも小泉構造改革は〝美しくない〟日本を「美しい国」に戻すに力不足だった。いや、何ら役に立たなかった。そこで安倍晋三は、ならばと自分が総理総裁になったなら、この〝美しくない〟日本を「美しい国」にしようと思い立ったというプロセスでなければならない。

 だが、安倍晋三は〝美しくない〟日本を「美しい国」に戻すに何ら役に立たなかった小泉構造改革のメンバーの一員として重要な位置に加わっていたのである。言ってみれば「美しい国」とするに無能であった面々の一人であった。別の言い方をするなら、無能という点に関して同じ穴のムジナだったのである。

 その人間が総理総裁になった暁には「日本を美しい国にする」と、例えマイクに向かって片手をハイルヒトラー式に斜め上に伸ばし、高らかに宣言したとしても、信用できるだろうか。

 それとも自らが所属する政党が戦後60年かかって〝美しくない日本〟をつくり上げてきたとは認めがたく、戦後の時代そのものがアメリカ主導でつくられた日本国憲法や教育基本法を出発点として〝美しくない日本〟を少しずつ積み上げてきたと見て、その〝美しくなさ〟を否定・排除するために戦後の時代そのものを否定・排除しようとしているのだろうか。戦後の否定・排除は戦前の肯定、そこに「美しい日本」を見ているのだろうか。

 安倍晋三は改憲論者である。但し、時代及び世界情勢が大きく変わり、現憲法が現状に即さなくなったからとする改憲意志からではなく、日本人自らの手で制定した憲法の必要性を前面に出して訴えていることから、日本人が自らの手で制定することに重点を置いた改憲意志からの改正論者であろう。それは教育基本法に於いても、同じく日本人自らの手でつくることを訴えている。

 言ってみれば、現憲法にしても現教育基本法にしても、日本人が自らの手(=自らの考え・思想)でつくったものではない点で否定し、それが改正意志へとつながっている。日本人以外の思想が関与していることへの否定でもあろう。

 そのあまりの日本人自身の思想への拘泥とその裏返しである日本人以外の思想への否定は排外主義、明治維新前後の傾向で言うと、攘夷思想にも通じる民族主義、もしくは国家主義の態度から出ている意識としてあるものであろう。

 となると、日本人自らの手(=自らの考え・思想)でつくるべしと執心している改正憲法と改正教育基本法の双方に等しく規定すべく謀っている「愛国心」思想は民族主義意識、もしくは国家主義意識から発した欲求と言うことになる。

安倍晋三が民族主義人間、もしくは国家主義人間であるなら、彼が戦前の日本を「美しい国」のモデルとしても不思議はないことになる。当然の志向であり、当然の戦前回帰であろう。靖国神社の参拝を通して、戦前の「お国のために戦った」日本人戦死者を顕彰することで、戦死者の奉仕対象である戦前の「お国」日本を、奉仕することを正義としたから対象自体をも正義とする置き換えで正当化してもいるのだから。

 このことは戦前の「お国」がどんな内容の国だったのか問わないことによって証明されている。

 「美しい国」のモデルが戦前の日本だから、簡単には説明できないのもかもしれない。戦前的な民族主義者、もしくは国家主義者だと自らを告白するようなことは誰もしないだろうから。

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