従軍慰安婦問題2

2007-03-03 11:32:24 | Weblog

 桜井よしこ/人間の人間知らず

 「その兵は戦犯として裁かれて、死刑になってるんですね」は戦争終結後、オランダ軍によって現地で受けた裁判のことだろう。日本軍が裁いたわけではないはずである。「死刑」という極刑からも、単に一人の「オランダ女性」を強姦しただけの問題ではないことが窺える。

 それを一人の「オランダ女性」を強姦しただけの問題とし、しかも「死刑」という重い罰を受けているのだから、問題解決していると言わんばかりの功労者ぶりである。

 NHKがインドネシア・アンバラワの日本軍の抑留所に収容されていたオランダ人少女(入所当時13歳)の日記を基にした番組(「ソニアの日記」)を「NHKスペシャル」として放送している。いつ放送したのか日付を付け忘れて分からないが、番組開始前にニューヨークヤンキースに当時在籍していて伊良部投手の登板する野球中継番組の放送を予告している。伊良部は1997年から1999年まで在籍していたから、その当時の番組だと思う。

 その中に、「17歳から28歳の女性たちの中から10人のきれいな人が選ばれて、そこから連れ去られていった。なぜ、どうしてなの?母親たちが泣き、多くの人たちが抗議した」
 解説「のちにスマラン慰安所事件として裁かれたこの抑留所の慰安婦事件。日本兵により4カ所の抑留所から35人の女性が集められました」

 そのあと解説が、「2カ月後、事件は軍の中央の知るところとなり、慰安所は直ちに閉鎖された」としている。

 「インドネシアで慰安所と言うのがあった。オランダの女性が強姦されたりしたことがあったんですが、これは軍が発覚したときに2ヶ月で閉鎖しているんですよ。そしてその兵は罰せられてるんです。そしてその兵は戦犯として裁かれて、死刑になってるんですね」とか、「明確に軍とか日本政府がその、女性を騙して慰安婦にしたっていうことはない」とする桜井よしこの言う状況が如何に事実を簡略化しいるか分かる。「日本の軍隊は何をしたか、しなかったか、明かにすべき」と〝事実〟を重視しながら、実際には事実の軽視を犯して平然としている。 

 「4カ所の抑留所から35人の女性が集められ」たという〝事実〟は現地の軍の直接的な関与の〝事実〟を覆いがたく証明してあまりある。

 オランダ政府のHP「日欄歴史調査研究」のアンバラワ抑留所「強制慰安」のページの最初に次の日記が記載されている。(他は省略)

 「モドー
1944年2月23日

今日の午後3時一杯の日本兵を乗せて二台の車がやって来た。全バラックリーダー達が歩哨の所に来さされ、そこで18歳から28歳までの全女子と女性は即申し出なければならいと聞いた。この人達に質問されたのは、何歳か、そして結婚しているか子供達は居るかという事だった。その間彼女達は大変きわどく見られた。今又それはどういう意味を持つのだろう?又17歳の二人の女子達が紳士達のリストの中に18歳として記述されていた為率いられた。私達は忌まわしい憶測をしている」――

 まさしく「紳士たち」の所業と言える。NHKの「ソニアの日記」に映し出された彼女の日記帳や他の日記も、表紙もページもどれもがシミがついたように薄茶色に古ぼけていて、その当時のものだと時間の経過を思わせる姿を見せていたが、小池アナが解説していた「強制連行を直接示すような資料」の内に入らないというのだろう。抑留所に閉じ込めるについても、女性を連れ出すについても、連れ出した女性を兵士相手の慰安婦に仕立てたことも、当時の日本軍がオランダ人に対して持っていた絶対権力(=絶対的強制力)が働いていないはずはない。 

 今回の米下院の公聴会でも性病検査のときに医者にまで強姦されたとの証言まで出されたということだが、私のHP『市民ひとりひとり』の第88弾「日本の歴史認識の文脈を読む」(05.04.28.アップロード)でも取上げて、私なりの解釈を施している。「証言」の出典は1992年12月9日の朝日朝刊『憎しみ悔しさを、今
/暴行され続けて/中国・オランダの元慰安婦が証言』

 「朝日」の記事には次のように書いていある。「検診を受けるたびに医者からも暴行された。恐怖は3ヶ月続いた。」

 HP「日本の歴史認識の文脈を読む」――「21歳で慰安婦にさせられ、検診のたびに、医者にも暴行された」と、オランダ人女性が1992年12月に日本軍人の活躍を褒め称える証言を行っている。当時の日本人は白人に現在とは比較にならないほどにコンプレックスを持っていただろうから、オランダ人女性を征服した軍人や医者たちは、これぞ日本男児とばかりに、鬼の首でも取ったかのような征服感と偉大症にどっぷりと浸っただろうことは容易に想像できる。何分にも無抵抗な白人女性に日本男児の権力を思う存分に見せつけたことだろうから。

 日本人が捕虜に対して威張り散らしたのは、それが日本人に於ける自分が強い立場に立ったときの下の弱い者に対する、得意とする代表的な権力発揮の形式だからだろう。

 現在でもその種の権力発揮の形式は、入国管理局の役人が不法入国者に対して、あるいは刑務所の刑務官が服役囚に対して振るう暴力にものの見事に引き継がれ、よりよく発揮されている。中央の役人が地方の役人に何様な威張った態度を取るのも、同じ形式のものだろう。上が下を従わせ、下が上に従うことによって、日本の社会の和は保たれ、2000年の輝かしい歴史を打ち立てることができた。

 オランダは日本の敗戦後、日本軍人をBC級戦犯として逮捕、裁判にかけ、1948年に日本人元陸軍少佐に死刑を課し、元軍人及び民間人9名に7年から20年の有期刑の判決を下している。
 (中略)
 さらに日本はオランダとの間に1956年に締結した日蘭議定書に従って、日本側は当時の金額で1千万ドルを(1ドル360円の時代で、36億円にものぼる)「見舞金」名目で元捕虜や民間人へ支払っている。

 これは捕虜虐待や慰安婦問題を犯罪事実だとして反応した支払いだったはずであるが、賠償ではなく、〝見舞金〟と名目付けた点に、自らが望んでいる国家無罪・民族無罪の意志貫徹に向けた苦心の跡が窺える。

 尤も、日本語訳された議定書には〝見舞金〟とし、オランダ語の議定書には〝賠償〟となっている可能性はある。自国に不都合なことは隠したり、薄めたりする目的で訳語で使い分けることはよくあることだからであるが、日本向けだけであっても、十分な効果が期待できる。

 日蘭議定書第3条は「オランダ王国政府は、同政府又はオランダ国民が、第二次世界大戦の間に日本国政府の機関がオランダ国民に与えた苦痛について、いかなる請求をも日本国政府に対して提起しないことを確認する」としている。

 とにかく、これですべてが片付いた。早く忘れ去るに限る。思い出さない限り、忘却はなかったことと同義を成す。

 日本政府が十八番(オハコ)としている態度からしたら、韓国や中国に対して取っている態度と同様、問題が再燃したとしても、「1951年のサンフランシスコ平和条約と1956年の日蘭議定書で、すべての問題は完全且つ最終的に決着している」と大威張りで宣言するだろうが、 そうはせずに、オランダで1990年に対日道義的債務基金(JES)が結成されて、日本政府に対して法的責任を認めて一人当たり約2万ドルの補償を求めると、日本は国民的な償いの気持という形で2億5500万円を支払い、2001年に「償い事業」を終了させる、民族の誇りを裏切る日本らしからぬ対応を示している。

 なぜ日本は日蘭議定書第3条を楯に、韓国や中国に対してと同様に賠償問題は決着済みだとした上で、インドネシアでの日本軍の行為は日本民族に於ける取るに足らない瑕疵に過ぎないと矮小化する線に添った、従来どおりの日本民族の誇りを擁護する、国家無罪・民族無罪の方向に向けた態度を取らなかったのだろうか。

 まさか白人コンプレックスがぶり返したわけではないだろう。ぶり返したのだとしたら、日本人は白人コンプレックスを払拭して余りある白人に対する権力意志の発揮が、オランダ人女性を慰安婦にし、強姦する形でしか全うすることができないことになり、日本民族を誇る資格を失う。まずいではないか。

 〝補償〟を求められたのに対して、〝国民的な償いの気持〟で決着させた経緯からすると、1995年の中国や韓国その他の国の従軍慰安婦に対する民間基金を原資として見舞金構想の形を取った「アジア平和国民基金」(アジア女性基金)と同様、次々と明るみに出される従軍慰安婦の動かし難い証拠事実とその証拠事実に対する補償請求によって、国家無罪・民族無罪の守備範囲が狭められ、その行く末が危うくなったために、先手を打って、国家無罪・民族無罪が機能停止にまで至らない範囲内の止むを得ない対応――つまり妥協ということだったのだろうか。」――
 
 桜井よしこ「もしくは朝鮮半島でどのようなことが起こっているか、未婚女性の徴用を朝鮮の人たちが慰安婦に為すかのような噂を、荒唐無稽な流言飛語があると、そのようなことがないように、そのような事実がないようにしなさいというので、朝鮮総督府が警察官を増員しているんですね」

 常識だけで考えたとしても、「荒唐無稽な流言飛語」の防止に警察官の増員が役に立つとは思えない。「流言飛語」によって騒乱が発生したということなら分かる。「流言飛語」だけなら、警察官の目の前では誰もが口を閉ざし、「荒唐無稽な流言飛語」を差し控えるからだ。いないところで、行う。もしも「流言飛語」のみに「増員」を役立てるとするら、すべての朝鮮人を四六時中見張ることができるだけの人数の警察官の増員を行わなければならないだろう。尤も今の時代なら、ありとあらゆる家庭に盗聴器を取り付ければ済む。

 「流言飛語」を抑えるには、一般的にはそれを禁じ、守らない者は厳しい罰則で替えることを記したビラの類を掲示するか、回覧板等で配布する方法を採るのではないだろうか。もし桜井よしこが示唆しているように事実でない正真正銘の「流言飛語」なら、たいした時間の経過も待たずに自然消滅するはずである。

 警官を増員したのは事実に基づいた「噂」だったから、植民地支配による世情不安のところに持ってきて、「噂」が火種となって暴動とまでいかなくても、大きな混乱が起きることを恐れた措置ということではなかったろうか。

 常識的に考えて疑わしい点をいくらでも指摘できる。桜井よしこは「日本の軍隊は何をしたか、しなかったか、明かにすべき」とか、「歴史的な文書とか、その措置をきちんと整理して」と言っているが、人間が自分に都合の悪い情報はいくらでも証拠隠滅を図り、如何に情報操作する生きものであるかを無視している。それは自分の主張に都合が悪い事実・情報に向けた一種の証拠隠滅・情報操作の意志がそうさせているゴマカシであろう。

 2月28日(07年)の朝日新聞朝刊に『3・1運動の鎮圧 詳述』なる記事が出ている。朝鮮軍司令官だった宇都宮太郎大将の「15年分の日記」に記してあったそうだ。一部分引用してみると、「3・1独立運動が朝鮮全土に拡大し、朝鮮軍などが鎮圧する中で19年4月15日(大正8年)、『堤岩里事件』が起こった。ソウル南方で1人の日本兵士が約30人を教会に閉じ込め虐殺、放火。宇都宮の日記によれば、彼の知らぬ間に起こった事件だったが、朝鮮軍は発表で虐殺や放火を否認する。そこに至る経緯が日記に詳しい。
 『事実を事実として処分すれば尤も単簡なれども』『虐殺、放火を自認することと為り、帝国の立場甚だしく不利益』となるため、幹部との協議で『抵抗したるを以て殺戮したるものとして虐殺放火等は認めざることに決し、夜十二時に散会す』(4月18日)。翌19日、『鎮圧の方法手段に適当ならざる所ありとして三十日間の重謹慎を命ずることに略(ほぼ)決心』。実際該当の兵士は30日間の重謹慎処分となった。――」

 「昭和17年の政府の書類」どころか、それを遡ること23年も前に「朝鮮半島でどのようなことが起こっているか」、「日本の軍隊は何をしたか、しなかったか」は「帝国の立場甚だしく不利益」となるを以て証拠隠滅を図り、情報操作までして事実の改竄・隠蔽をやらかしているのである。「歴史的な文書とか、その措置をきちんと整理して」は自己都合の力学にかかったなら、事実の資格はいともあっさりと失うことになるだけのこと。

 最後に桜井よしこが用いている「その誘拐に類し、警察当局に検挙取調を受ける者などがあると、騙して連れていった、これに注意しなさい」と実際は軍も警察も正義の立場に立っていたとするする論理展開はHP『陸軍慰安所の設置と慰安婦募集に関する警察史料』も言及している。

 発見された資料の内容解釈に於いて、「軍の要請を受けた募集業者が拉致誘拐などの非合法的方法で慰安婦を集めていた事実を示す動かぬ証拠とみなす解釈があり、他方では逆にそういった手段による強制連行がおこらぬよう、軍と警察が注意をし、厳しく取締を指示していた証拠であるとの反論が出された」

 但しHP作者の永井和氏は前者であることを資料によって証拠立てている。

 ――9-1(内務省警保局警務課長「支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件伺」/1938年11月4日付)と9-2(内務省警保局長発大阪・京都・兵庫・福岡・山口各府県知事宛「南支方面渡航婦女ノ取扱ニ関スル件」/1938年11月8日付)、この二文書は、1938年11月に第21軍参謀と(広東作戦のため編成された南支派遣軍)と陸軍省徴募課長の要請を受けて、内務省警保局が決定・指示した慰安婦400名の調達と輸送に関する通牒の案文であり、慰安婦の徴募と輸送に軍と警察が深く関与したことを示す驚くべき史料である。内務省は大阪、京都、兵庫、福岡、山口各府県に徴募人数を割り当てたうえで、現地で慰安所の経営にあたる適当な業者を選定してこれに引率させ、台湾経由で中国に送るよう手配を命じたのであった。なお、この400人とはべつに台湾総督府が300人の女性を華南に送る手配済みとも記されている。

 これらの警察資料が公開されるにいたった経緯を簡単に紹介しておく。これらの資料は元内務省職員種村一男氏の寄贈にかかるもので、警察大学校に保存されていた。前述の2度にわたる政府調査の際には、その所在がつかめなかったようである。」(以下略)

 桜井よしこや小池アナウンサーを含めた安倍以下の日本民族優越論に侵された国家主義者たちは、資料が示す事実を自らの〝事実〟に引き込む〝事実〟の衣替えを行うであろうことは目に見えている。いずれ判定はつくだろうが、国家主義的事実判定は許されることは決してないだろう。

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従軍慰安婦問題1

2007-03-03 11:12:00 | Weblog

 桜井よしこ/人間の人間知らず

 07年2月25日フジテレビ「報道2001年」で、太平洋戦争中の日本軍の従軍慰安婦問題で日本政府に「明確な謝罪」を求める決議案(提出者/マイク・ホンダ下院議員)が米下院外交委員会に提出されたが、提出者のマイケル・ホンダ氏自身が衛星中継で出演し、その言い分を聞いた後、慰安婦存在否定派の評論家の桜井よしこと2人の自民党議員(1人は若い女性、もう1人は安倍応援隊長の山本一太)、肯定派なのかどうか、はっきりとした発言のなかった民主党議員前代表前原誠司の臨席でそれぞれの発言があった(途中略)。

 先ずフリップで「日本軍が若い女性性的奴隷にした。
 日本政府は
 ●歴史的責任を明確に認め、謝罪すべき
 ●首相の公式的謝罪声明を発表すべき
    などとなっている」と説明。 

 「決議」の裏を返すと、日本は「歴史的責任を明確に認め」ていない、明確に「謝罪」していない。日本の首相も「公式的謝罪声明を発表」していないと見ているということだろう。それらが形式的、その場逃れとなっていると。そしてどちらが〝事実〟なのかを問題にするということなのだろう。マイケル・ホンダ氏も「心の底から謝っていない」と直接的な表現で言っていた。

 小池アナが順番としてまず質問した。「そもそも慰安婦問題っていう事実に対する認識なんですけどもね、これ日本の見解っていうのは軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような資料は見つからない、見い出せないということなんですがね。日本政府がそういう事実そのものは認めていないという状況の中でアメリカ議会で決議して日本で認めろと言うことはどういうことなのか、この辺りの気持はどうなんですか?」

 相変わらずどの局のアナウンサーも美しい日本語の見事な使用者となっている。

 マイケル・ホンダは慰安婦とされた女性の公聴会での証言を証拠として挙げたが、小池アナは、日本政府は慰安婦の存在は認めているが、強制の事実は認めていない、女性アナは彼女たちの証言を聞いても、日本人から話を聞いているのかと、発言がさも偽証であるかのように言う。尤も女性アナの言う「日本人」とは「慰安婦の存在は認めているが、強制の事実は認めていない」に限定した日本人のことを言っているのは間違いない。

 そこでホンダ氏か、ではなぜ首相たちは謝罪しているのかと問うと、慰安婦の事実は認めているが強制は認めていないの一点張り。

 マイケル・ホンダ氏の決議案の動機はレーガン大統領時代にアメリカ政府が戦争中アメリカの日系人を収容所に収容したことは過ちだったと謝罪したように、謝罪すべきだと言うものらしい。それが潔い態度だとしているのだろう。

 過去八度こういった決議案が米下院に提出されて、いずれも廃案になっているという。

 桜井よしこが評論家を職業とする人間をしていながら、あまりにも人間知らずなので、彼女の発言を主として取り上げ、検証してみることにした。

 桜井よしこ、前原氏の「甘言で釣られて行った、借金の肩代わりに承知した、兵士の慰安(慰問のことだろう)の理由が実際には身体を提供させられた女性がいたのも事実」といった発言を受けて、「日本の軍隊は何をしたか、しなかったか、明かにすべき。軍が強制しなくても、そういう女性がいたことに対して私たち日本人がどのような思いを表現するかということはあるわけですよ。そこにアメリカの決議案があった。この三つを分けて考えるべき。アメリカの決議案と日本が何をしたか、しなかったかを結びつけてばっかり言わなければならない。例えばインドネシアで慰安所と言うのがあった。オランダの女性が強姦されたりしたことがあったんですが、これは軍が発覚したときに2ヶ月で閉鎖しているんですよ。そしてその兵は罰せられてるんです。そしてその兵は戦犯として裁かれて、死刑になってるんですね。ですから、ここにちょっと資料があるんですけれども、例えば、(昭和)17年にですね、どのようなことが軍が決めているか。例えば、その誘拐に類し、警察当局に検挙取調を受ける者などがあると、騙して連れていった、これに注意しなさい、このようなことをしていけません。昭和17年のあの、政府の書類ですね。もしくは朝鮮半島でどのようなことが起こっているか、未婚女性の徴用を朝鮮の人たちが慰安婦に為すかのような噂を、荒唐無稽な流言飛語があると、そのようなことがないように、そのような事実がないようにしなさいというので、朝鮮総督府が警察官を増員しているんですね。ですから、明確に軍とか日本政府がその、女性を騙して慰安婦にしたっていうことはない。こういった歴史的な文書とか、その措置をきちんと整理して、国際社会にも韓国にも中国にもどこにも、言うべきなんです。でも日本政府はまったくこれを言ってこなかった。事実関係については本当に押し黙ってきた。ここがやっぱ日本側の最大の(と声を強め)ミスだと思いますね」

 山本一太「桜井さんのおっしゃることは賛同できる部分あるんですですけどね、議論整理して、考えなければいけないと思うが、河野談話というのはかなり駆け込みでやって客観的な事実の検証がないのにあそこまで踏み込んだ談話を出したことについては、かなり不満なんです。ただ事実としてあの官房長官の談話があのときに出て、歴代の内閣がそれを引き継いでいると。安倍さんもそれを踏襲するといういうふうに言っていると。今ねアメリカに対して、どういう外交的な対応をしないかっていうことを考えたときには、一応今の河野談話ですね、この安倍内閣もある程度踏襲っているって(文字の入力間違えではありません)前提で考えないといけない。私はさっき河野談話の文章を見て、ここで強制があったいうふうにおっしゃってるんだけど、私は河野談話を見直してみたんですが、必ずしもこれは軍が強制したとは言ってないし、安倍総理を河野談話を踏襲するって言った答弁の中で、狭義の強制はなかったと思うと、直接軍がまるで何か、性的奴隷とかの決議案の中、ひどい文言があるわけですよ。今世紀最大の人身売買とかね。こういうことはなかったと。たださっき言った、社会情勢とか、前原さんもおっしゃったような色んな意味で、広義のそういうことはあったというふうな答弁してあって、だから、河野談話を見直そうかっという議論、勿論党内であるかと思うんですけど。今のアメリカにどうやって対応するかというときに、今まで出ている今まで出している日本政府の立場はおかしいって言っちゃうと、なかなかここは対応できないので、私は河野談話は日本政府の公式な立場になっている。その前提であっても、その決議案は極めておかしいと十二分に反駁できると思います」

 言葉はやたらと多いが、言いたいことを予め頭の中で絞ってないらしく筋道だった物言いとなっていなく、散漫で、言っている事柄があっちこっちに飛ぶ。人間が軽く仕上がっているからなのだろう。要するに「河野談話」は内容的にはおかしいが、歴代内閣が踏襲する姿勢を取っている以上、その前提を崩すわけにはいかないが、「河野談話」が示している〝罪状〟は決議案が示す〝罪状〟程には重くない、ずっと罪は軽いから決議案は受け入れるわけにはいかないということだろう。

 いわば桜井よしこの〝事実〟の存在を問題としているのに対して、〝罪状〟の比較を問題とする姿勢となっている。お前は俺をさも人殺しのような悪党だと言っているが、そこまではいっていないから問題はないと言っているようなものである。

 小池アナ「僕は最大の問題はやっぱりさっき桜井さんがおっしゃったように自分たちが過去何が起きたかという歴史的事実をしっかり把握していないにも関わらずですよ、謝っちゃった。謝ったら、向こうからやっぱりそうだったの、さっきのマイケル・ホンダさんの言い方、全部そうなったんですよね。あんたたち謝ったんだから、認めたってことですよとなっちゃう。それがずっときているって感じですよね」

 決して「全部そうだった」わけではないが、「全部そうだ」とする〝事実〟をさっそくつくり上げてしまっている。

 桜井よしこ「情報戦略に於いて日本が如何に遅れているか、殆どやっていないか、それに対して中国、特に中国はですね、どれだけのお金を使って人脈をつくり、情報を提供し、在米の、もしくは在ヨーロッパの華僑団体を間接的に支援して、このような歴史問題において日本を追いつめようとしているかということの違いなんですね。中国は今日本に対して微笑外交に転じていますね。安倍さんにもまた来てください、温家宝さんも来ます。胡錦涛さんも来ます。でもそのウラで何十年もやってきた。今もやっている。これからもやっていく。それに対して日本は無防備だと思いますね」

 中国の情報戦略が米国下院で〝日本追いつめ〟の「決議案」を生み出したという主張である。

 これを受けて山本一太は中国の情報戦略が優れている理由は中国が共産党一党独裁で、上が下に対して何でもでき、下が上のどのような指示・命令であっても、言われたとおりに動くからだといったようなことを発言していたが、ではアメリカは一党独裁ではなく、自由主義国家だから、中国よりも情報戦略に劣るという論理になる。そこまで頭がまわらないらしい。

 情報の活用は起こった事実や与えられた情報を如何に解読するか、解読して知識化した情報を新たな事実や情報に如何に応用して読み取り可能・対処可能とするかの想像性(創造性)にかかっている。情報戦略の優劣は一党独裁とか自由主義体制とかに関係しない。

 金持ち日本が情報戦略にどれ程にカネをかけたとしても、今更ながらに「自分で考え、自分で判断して、自分で決定する」思考様式を学校教育に取り入れようなどと言いながら満足に具体化できないようでは、たいした役には立たないだろう。子どもたちの思考様式は大人の思考様式を受けたヒナ型の形を取っているに過ぎない大人にもある思考欠陥だから、具体化できないのだろう。

 「自分で考え、自分で判断して、自分で決定する」は事実解読・情報解読とその応用に必要な基本中の基本であって、それがなければ、どう逆立ちしたって、桜井よしこが言うように「情報戦略に於いて日本が如何に遅れているか」の状況は永遠に続くだろう。中国のように「どれだけのお金を使って人脈をつく」ると言ったことではない。日本が暗記教育から抜け出れない限り、情報戦略の貧弱状態を政治後進国性と共に後生大事に自らの勲章とし続けることになるに違いない。

 桜井よしこの言っていることのすべてが資料に頼るまでもなく、人間の姿・人間の現実から判断した常識に照らすだけで合理性に欠ける内容だと証明できる。それ程までに発言内容が人間の人間知らずになっている。

 「軍が強制しなくても、そういう女性がいたことに対して私たち日本人がどのような思いを表現するかということはあるわけですよ」

 従軍慰安婦問題は軍が慰安所の設置と慰安婦募集に直接的な関与があったかどうかの点と、あった場合、慰安婦募集に関して強制性が存在したかどうかが論点となっているのであって、強制がないとしても、それが軍関与を否定する要件とはならない。軍の関与なしを前提とした自分の主張に都合のいい発言となっている。

 「その誘拐に類し、警察当局に検挙取調を受ける者などがあると、騙して連れていった、これに注意しなさい、このようなことをしていけません。昭和17年のあの、政府の書類ですね。もしくは朝鮮半島でどのようなことが起こっているか、未婚女性の徴用を朝鮮の人たちが慰安婦に為すかのような噂を、荒唐無稽な流言飛語があると、そのようなことがないように、そのような事実がないようにしなさいというので、朝鮮総督府が警察官を増員しているんですね。ですから、明確に軍とか日本政府がその、女性を騙して慰安婦にしたっていうことはない」

 「これに注意しなさい、このようなことをしていけません」と「警察当局」か「政府」が禁止の通達を出したからと言って、その行為が止むとしたら、大手ゼネコンは脱談合宣言を出さなくても、談合行為は一切犯さないだろう。脱談合宣言を出しても、人間は談合を行う。脱談合宣言の舌の根も乾かないうちに名古屋市地下鉄建設で談合を行い、逮捕者を出している。脱談合は世間向けの体裁に過ぎなかった。かくこのように、人間は始末の悪い生きものであり、それが人間という生きものの現実の姿となっている。そのことへの認識が一切ない幸せな人間知らずの主張展開となっている。

 酔払い運転で幼稚園児や高校生を何人も殺す事故が起きていながら、後追いの形で同種事故が跡を絶たない。

 1998年に防衛庁調達実施本部が企業の水増し請求のままに装備品の代金を過払いしていた事実が発覚して、その返納算定額を防衛施設庁長官や調達実施本部副部長その他が共謀して減額処理を指示し、国に巨額の損害を与えたとする背任事件で逮捕者も出して調達実施本部は解体されたが、その不正を受け継ぐ形で反省の色も無く防衛施設庁が官製談合を行っている。

 防衛施設庁発注の空調設備工事(04年11月~05年3月の市ケ谷庁舎、三宿病院など3件の新設空調工事/落札価格10億5000万円~12億6000万円)・04年度発注の岩国基地の滑走路沖合移設工事・同じく04年発注自衛隊中央病院新設建築工事や硫黄島浄水施設工事等の談合――。

 防衛庁調達実施本部の減額処理は取引企業に天下っている元職員の立場を守る措置であり、防衛施設庁の談合も同じく天下っている元職員の立場を有利にする措置であった。天下り職員を通して天下り先の企業に利益を与え、自らも接待を受けたりの恩恵に授かる、始末の悪いギブアンドテークの結構な関係にあった。

 03年1月に「これに注意しなさい、このようなことをしていけません」と官製談合防止法を施行した。如何に「これに注意しなさい、このようにしていけません」が当てにならないか証明して余りある。「これに注意しなさい、このようにしていけません」と通達した、もしくは指示したからと、「明確に軍とか日本政府がその、女性を騙して慰安婦にしたっていうことはない」と短絡的に断言できる桜井よしこは文化功労賞ものである。身のまわりの現実世界、人間の姿を見まわすだけで、人間たちがこうあるべきとする社会のルールを勝手に無視して、どういうことをルールとしているか、評論家を名乗っているなら敏感に気づくべきだが、鈍感にも気づかないでいられる。

 「警察当局に検挙取調を受ける者」があった。しかし「検挙取調」自体が効果のないことを防衛庁調達実施本部の背任事件逮捕と防衛施設庁の官製談合逮捕が教えている。

 慰安婦を紹介する業者にしても、相手が軍で言いなり出すからカネになる、兵士も男の常として年のいった女よりも若い女の方を好む事情から募集だけしていたのでは、いつ現れるかも分からない目ぼしい女の採用を待つだけではカネにならない、自分の方から出かけていって目をつけたほうが早いわけで、そうなればカネのために騙しもするし、力づくといったこともしただろう。大学出の大手銀行員・大手証券マンでさえも、自分の成績を上げるためにリスクを隠して金融商品を言葉巧みに売るといったことをする。その他その他言葉巧みに騙す詐欺事件はありとあらゆる種類に亘っている。軍隊相手の商売で、装備品納入なら装備品納入でといったふうにそれぞれの専門分野で不正・誤魔化しが横行したのは現在と何ら変わらないだろう。

 「オランダの女性が強姦されたりしたことがあったんですが、これは軍が発覚したときに2ヶ月で閉鎖しているんですよ。そしてその兵は罰せられてるんです。そしてその兵は戦犯として裁かれて、死刑になってるんですね」

 この発言は「強姦」という事実はあったが、「罰せられ」、「戦犯として裁かれて、死刑になってる」からそれで終了したこととしている。この主張を正当化させているカギは、「強姦」を個人としての「兵」の問題とすることで、論点となっている軍の関与の有無・軍の強制性の有無を除去していることだろう。逆に「発覚したときに2ヶ月で閉鎖している」と「軍」を正義の味方に置いている。

 「オランダ女性」が食糧も満足に与えられない、外出もままならない、時間で制限される窮屈な収容所暮らしから逃げるために、自発的に慰安婦になることを申し出て純粋に民間業者の経営による慰安所に雇われていたとしたら、いわば桜井よしこがいう「軍が強制しなくても、そういう女性がいた」状況であったなら、「強姦」はあくまでも兵士個人の問題として、慰安所まで「閉鎖」されることはなかったのではないか。

 逆に「閉鎖」されたと言うことは、オランダ女性に対する軍の強制力が働いていたと見なければならないはずである。

 通常の人間が保有している常識で考えるとしたら、「オランダ女性」が強制的に連行されて慰安婦にさせられていた、自発的意志からの境遇ではないから、生理的な嫌悪で身体の提供を断る、断られて力尽くで姦す「強姦」に及んだということから、問題になるのを恐れて、「閉鎖」の処置を取らざるを得なかった。「閉鎖」しなければならない程、個人的問題で済ますわけにはいかなかったということである。吉原の高位の花魁でもあるまいし、一般的にいわゆる売春宿で売春婦が客の選り好みは勿論、拒絶することも困難であるし、それが趣味でない限り、当然強姦といった暴力行為に及ぶ必要性は生じないことになる。(「従軍慰安婦問題2」に続く)

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