一昨日(07.3.6.)午後4時からの都庁での浅野史郎前宮城県知事の都知事選出馬表明会見を昨日のTBS 「みのもんた朝ズバッ!」でやっていた。時間を分けて何度か流しているから、纏めて引用。
「ハイ、みなさんこんにちは。浅野史郎、59歳です。石原都政の実態を詳しく知るにつれ、私の心の中のコップに水が注がれて、徐々にその量が増し、いつかコップから溢れ出すが如き感じで、何かが変わったのです。東京や都民にとってだけではなく、日本の政治にとっても取り返しのつかないところまで行ってしまう――その危機感をしっかりと受け止めて、私は今、都知事選挙に出ることを決意いたしました」
女性解説「具体的な出馬理由については――」
浅野「社会的弱者に対する差別発言、都政の私物化、公私混同、側近政治、恐怖政治のような教育現場など、石原都政がもたらした数々の問題点を指摘しながら、その変革を必死になって願うメールや意見に接するうちに、誰かがこういった都政を変革するために立ち上がらなければならないと思うようになりました。石原さんは1期目はよかったと思うんです。1期目は。で、私も期待をしました。2期目になって、えー、大分変わったと、いうことを感じざるを得ないんですね。もういいでしょう。もう4年やると言うのは、もうやめて下さい――」
女性解説者「会見から3時間後――。この出場表明を受けて3選を目指す石原慎太郎都知事は――」
女性インタビュアー「浅野史郎さんが今日正式に出馬を表明されましたが、そのことに対する受け止めを先ずは一口お願いします」
石原「出たり引っ込んだり、また出たりね。出るかでないか、やっぱり出たってとこかな。まあ、あのね、あの人のマニフェスト読みましたがね、やっぱ分かんないねえ、抽象的で。大体みんな東京やってきたことだな。まあ江戸っ子向き、東京っ子向きじゃないねって感じがしますね」――
* * * * * * * *
浅野史郎の「マニフェスト」に書いてある政策は「大体みんな東京やってきたこと」で、その過程で「社会的弱者に対する差別発言、都政の私物化、公私混同、側近政治、恐怖政治のような教育現場など、石原都政がもたらした」ということなら、そういった「都政」が「まあ江戸っ子向き、東京っ子向き」ということになる。
だったら、東京都民はそのような「まあ江戸っ子向き、東京っ子向き」の「都政」は御免蒙りましょうとそれぞれの1票で意思表示する必要があるのではないか。それとも、政策がまあまあの形で実行されさえしたなら、「社会的弱者に対する差別発言、都政の私物化、公私混同」等々があったとしても、「まあ江戸っ子向き、東京っ子向き」であることに変わりはないからと、3期目も石原だと支持するのだろうか。
財政的にも各種産業活動・商業活動に於いても東京という日本で一番有利な立地・有利な果実が可能にしているに過ぎない活動を、かつての有力自民党国会議員、小なりと言えども派閥の領袖、総裁選立候補者といった色褪せた経歴を巧妙に活用し、ときには恫喝の道具に利用して、それを切り札に謙虚さのかけらもなく大物政治家ふうに振舞い、周囲もそれを許している。そのような振舞いの行く先々で誇示することとなった「社会的弱者に対する差別発言、都政の私物化、公私混同、側近政治、恐怖政治のような教育現場」等々の美しい景観ということではないだろうか。
既に自作HPやブログに書いたことと重なるが、プチ独裁者石原慎太郎に敬意を表して改めてここにご紹介申し上げると、「社会的弱者に対する差別発言」とは、「少子社会と東京の未来の福祉会議」(2001年10月23日)での「ババア発言」もその一つではないか。
「これは僕が言っているんじゃなくて、松井孝典(東大教授)が言っているんだけど、文明がもたらした最も悪しき有害なものはババアなんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪です、って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を産む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって・・・・。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね」
「生殖能力」の有無のみで男女を価値づける思い上がった視野狭窄。閉経した女性にとっては迷惑な話だろう。閉経して子どもを産む力を失ったとしても、恋愛もできれば、セックスもできる、いたって溌剌な生き方を選択して、充実した後期人生を送れるかどうかは、それぞれの生き方にかかっているのだから、それぞれに任せればいいこと。愚かしい思い上がったお節介に過ぎない。
「差別発言」ということに関して言うなら、「民族的DNA発言」にしても勲章の一つも与えないわけにはいかない。人間は国籍に関係なしにどのような種類の犯罪も犯すし、それが凶悪犯罪の場合もあれば、そうでない場合もあるが、「何だろうと日本人ならこうした手口の犯行はしない」との絶対前提を設けて犯罪手口が「民族的DNAを表示する」とする文脈で、凶悪犯罪を犯すのはさも特定の国民だけだといった先入観を与える偏見を撒き散らした。オウムのサリン撒布は実害があって処罰されたが、石原慎太郎の「差別発言」は実害が見られないということで情状酌量されたのか、公安から観察処分を受けることもなく、自由の身であることを活用して「都政の私物化、公私混同、側近政治」と次々と金字塔を打ち立てていった。
政治家は犯罪を問題にしなければならないが、それ以前に自分たち政治家自身のありようをこそ問題にしなければならない。上の為すところ、下これに倣う、からだ。上に位置する政治家がカネにイヤシイから、下もカネのために様々な犯罪を犯す。
次の「都政の私物化」は、その氷山の一角として海外豪遊視察があるのだろう。改めて紹介すると、06年11月16日(木)の「しんぶん赤旗」は次のように伝えている。『石原東京都知事 税金使った“海外旅行”』
「ガラパゴス諸島でのクルージングやオートバイレース見物、費用は1回平均2千万円、宿泊費は東京都条例の規定の6・6倍も―。日本共産党都議団が告発した石原慎太郎都知事の豪華海外出張は、内容面では実施する意義がとぼしく、金額面でも他県と比べ、税金の無駄遣いが際立っています。
就任以来7年半で行った19回の海外出張のほとんどは、知事の個人的な関心で計画され、うち六回が知事の思い入れの深い台湾でした。海外出張の目的も福祉や教育の充実というものはなく、観光的なものが多数です。
たとえば2001年6月のガラパゴス諸島(エクアドル)への出張(総額14444万円)。38万円で小型クルーザーを借り切ったクルージングを楽しみ、206万円をかけホテル並みの施設を備えた大型クルーザーで、バルコニー付きの最高級の部屋を借り、四日間の諸島見物に興じました。
今年5―6月には、五輪招致や観光にかんする調査として、ロンドンと、オートバイの公道レースで有名なマン島へ出張し、総額35174万円をかけました。」――
石原慎太郎はワシントン出張で最高で1泊26万3000円の高級ホテルに泊まってもいる。この豪遊海外出張も、「まあ江戸っ子向き、東京っ子向き」の趣向ということなのだろうか。
石原慎太郎の豪華海外視察の間、幹部部下たちも豪華視察としゃれ込んでいたのではないのか。東京銀座の高級クラブ視察とか、赤坂高級料亭視察とか。下は上に倣うからだ。鬼の居ぬ間の命の洗濯とばかりに。
「公私混同」とは主たる事例として都の文化事業に関連して公費で欧州出張を行わせた四男問題を指すに違いない。「都政の私物化」とも関係する事柄だが、石原本人は「何を以て私物化と言うのか」とか、「余人を以て代え難いから使っている」と抜けぬけしたことを言っているが、公人たる者、カネ・人間関係等で足をすくわれないよう常に身辺を清潔に保つべきを、広範囲に亘る公平・公正な手続きを踏まずに四男を使う目のくらんだ身内重用のネポティズム(縁故採用)を犯して平然としている。それともネポティズム(縁故採用)は「まあ江戸っ子、東京っ子」が得意技としている人事だとでも言うのだろうか。
「現代ネット」(「石原知事 四男作品にも公費」2006年11月24日 掲載)によると、「海外豪遊視察で抗議殺到中の石原都知事、四男の延啓氏までが公費を使って海外出張していたことが発覚したが、公私混同のデタラメがまだあった。石原知事がトップダウンで決めたとされる美術ギャラリー「ワンダーサイト」、そこに飾られているステンドグラスの原画の作者というのが自称画家の四男で、『お買い上げ』費用は300万円。都の補助金が使われていたが、知事は議会にも都民にもこの事実を隠していた。」
最後に「側近政治」と教育現場だけではない「恐怖政治」を取上げる。これらは石原慎太郎都知事が操り出すことになったマリオネット、副知事だった浜渦武生ワールドのことを言うのだろう。
浜渦武生ミニジョンイルは石原慎太郎の国会議員時代の私設秘書で、石原と共に青嵐界にも関わり、側近中の側近だそうだ。週に2、3回しか都庁に出勤しない石原に代わって〝知事〟を務める副知事という構図でミニジョンイルの地位を獲得していった。そのミニジョンイルぶりについては、05年5月26日の『朝日』朝刊の『側近に強権 議会が不満』(主題)が詳しく解説している。
「ミスのたび『詫び状』」(副題)
「副知事 浜渦武夫様
○○にあたり不手際があり申し訳ありませんでした。深く反省します。
二度とこうしたことがないよう肝に銘じます。
○○局長
都庁ではミスが起きるたび、浜渦氏に『詫び状』が届く。局長、部長、課長がセットで出すことさえあった。『パソコンで打ったら、「自筆で書け」と突き返された人もいた』という。
浜渦氏は石原都知事が国会議員だった時から秘書を務めた側近中の側近。知事就任の99年に特別秘書として都庁に入り、翌年から副知事になった。
週3日しか登庁しない石原知事の名代を務める浜渦氏に、徐々に権力は集中していった。
知事に事業内容を説明する際は浜渦氏に『お手紙』と呼ばれる依頼書を出し、事前に了解を取りつける。同氏を通さなければ、都政が進まない。石原都政6年の間に、そんなシステムが築かれた。
苦々しく思う都庁職員も多い。だが、浜渦氏とそりが合わなかった幹部が次々と都庁を去るのを目の当たりにする中で、もの言わぬ幹部が増えていった。」
そのようなミニジョンイル浜渦武生も年貢の納め時が突然やって来た。上記『朝日』記事の最初の部分で伝えているところを手短に解説すると、05年3月の都議会予算特別委員会で取上げられた東京都社会福祉事業団の事業委託をめぐる補助金問題に関して浜渦武生が不正を示唆する発言をしたことに対して、自民議員が「提案者側が予算の不正を示唆する発言はおかしいと」反発して設置されることになった百条委で、そもそもの不正疑惑追及の質問が「自らの答弁で不正をほのめかし、事業に関わった都幹部を陥れ、次の副知事人事を自分の思うように」するために民主党に依頼して行わせた『ヤラセ質問』ではないかと問われ、それを否定。実際は依頼してさせた質問であったとされて偽証罪で問責決議を受け、ついに石原親分・石原ミニキム・イルソンも泣く泣く浜渦ミニジョンイルのクビを切るに至った。
「東京都社会福祉事業団の事業委託」とは民主党都議会議員の柿沢未途のHPで調べてみた。
「都社会福祉事業団の設置する社会福祉総合学院の運営委託が取り上げられ、『建物賃貸料が適正かどうか不明』など抜本的な見直しを求められました。『都有地に補助金19億円で施設 専門学校へ不適切便宜』と新聞でも取り上げられ、石原知事も『けが人が出るかもしれない』と発言するなど、その背後に何らかの不正があったのではないかと疑われていました。
問題の社会福祉総合学院については、その事業を民間学校法人に委託し、さらに同じ学校法人に施設全体を貸し付けていますが、これについて包括外部監査を行なった公認会計士は『結果として学校法人のために施設を作ってあげた形になってしまっている』と指摘しています。
そのように捉えると、社会福祉総合学院の建設費返済のため都が支出している補助金は、すべてこの学校法人への補助金と見なすこともできます。その建設費は19億円。これだけの補助金が、私たちの知らないうちに学校法人に支出されていることになります」
上記朝日記事は「都議選へ思惑絡む」と題して「前回の都議選で、就任直後の『小泉ブーム』に乗って完勝した自民党も、今回の頼りは石原知事だ。多くの議員が知事とツーショットのポスターを選挙区に張っている。浜渦氏の問題を追及しながら、『選挙が終わるまでは知事を攻めるわけにはいかない』との本音がある。
一方、民主党にとって、百条委問題は逆風だ。質問の経緯ついて証言を求められたが応じなかった同会派幹部は『正当な理由なく出頭を拒否した』として同委で告発の方針が議決された。さらに、『浜渦氏の質問依頼は明らか』とする民主党議員数人が、会派執行部を批判する勉強会を立ち上げ、『分派』の動きを見せる。
自民党は『敵失に乗っているだけ』(幹部)と言うが、民主党は『自民党は百条委を政治ショーにしている』と、いらだちを募らせている」――
こう見てくると、浜渦ミニキム・ジョンイルは質問依頼という巧妙な手を使ってまで自民党議員が関わっているかもしれない利権を暴き、それを相手の弱点として自己をより優位な位置に立たせてより確かな支配権を手に入れようと企み、自民党側は自分たちの利権が暴かれるのを恐れて、質問依頼を逆利用して疑惑を隠す必要からの浜渦追い落としには成功したが、親分のミニキム・イルソンまで攻めるのは選挙上都合が悪いから、攻め手はそこまでの暗闘が相互に展開されたという図が見えてくる。
浜渦ミニジョンイルはしぶとく昨年(06年)7月に、「国との交渉役」として都の参与に任命されたということだが、石原慎太郎の裏も表も熟知しているミニジョンイルを簡単には縁の切れた場所に置くことはできないのではないのか。石原ミニキム・イルソン共々浜渦ミニジョンイルを完全追い落としとするには、石原慎太郎3期目にノーを突きつけるしかないが、生まれつきの「まあ江戸っ子、東京っ子」にしても、地方出の「まあ江戸っ子、東京っ子」にしても、突きつけることができるかどうかである。
いずれにしても投げたコインがウラを見せるかオモテを見せるか、「まあ江戸っ子、東京っ子」次第となる。責任重大であることは「まあ江戸っ子、東京っ子」は十分に自覚しているだろうとは思う。