NHK番組『インドの衝撃』から見る安倍教育再生・2

2007-03-27 11:29:09 | Weblog

 (「MR・ラビシャンカルさん 技術サービス部統括」のテロップ)
 ラビシャンカル「ここで行っているのは未来の製品開発と言えます。この頭脳を利用したいという企業が世界中にいます」

 男性解説「ここは最先端の開発を行っているソフトウエア工学技術研究所です(その映像)。独自の技術を開発し、世界の顧客に提案しようとしています。400人の技術者たちが10年20年先を見越した研究を行っています」

 ラビシャンカル「これには小さなコンピューターが搭載されています(タバコのケースの2倍ほどの大きさ。アンテナがついている)」

 男性解説「今取り組んでいるのは小型無線センサーです。温度や湿度、振動などを感知し、互いに無線でメッセージを交信し合います。異変があれば、直ちに警報を発して知らせます」

 ラビシャンカル「担当者のところにすぐにメッセージが届きます」

 男性解説「より高度なソフトウエアと組み合わせることで原子力発電所から地震や津波の監視まで、幅広い利用の仕方を提案しようとしています。培ってきた技術と専門知識によって、これまでI T企業を超えた新しいビジネスモデルをつくるというのです」

 (「去年11月」のテロップ)

 男性解説「今インフォシスでは、より多くの頭脳の獲得に乗り出しています。この1年間で採用した社員は2万5千人。2週間に一度入社式が行われています。社員たちは130万人の応募者から選ばれました。IITを初め、いずれもインドトップの大学を卒業した人材ばかりです。次々と湧き上がってくる若い頭脳に最新のテクノロジーを吸収させ、かつてない規模の頭脳集団をつくるといいます」

 インフォシス社長「私たちが目指すのは次世代のI Tサービスとコンサルティングを両方兼ね備えた企業になることです。最高の頭脳と世界規模の実行力を組み合わせれば、解決できない問題はありません。そうすれば世界で誰もできない仕事ができるのです」

 (アメリカサンフランシスコ プラカードを片手に掲げた街頭デモの映像)

 女性解説「インドの頭脳は先進国に脅威を与える存在になりつつあります。アメリカではこの数年仕事を失うI T技術者が増えています。背景の一つに大容量のデータを高速遣り取りできる通信網の整備が進み、インドが世界と結びついたことがあります。インドは英語を話せる多数の技術者を武器にソフトウエアの開発など欧米から様々な仕事を獲得するようになりました。変貌するインドの姿を通して今世界で何が起きているのかを描き、ベストセラーになった本があります。(『The World Is Flat』と題名のついた書物の映像)『フラット化する世界』です。40カ国で300万人に読まれています。このフラットが均一化した世界では地球規模の一つのネットワークがあり、世界中の人々が初めて同じ土俵で平等に競争できるようになったのです。この本を書いたのはピュリッツァ賞を3度受賞したアメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンさんです」

 フリードマン「すべては頭脳で決まるのです。もはや地理的概念も距離も意味をなさなくなりました。テクノロジーもインフラも、どこでも誰でも同じよう物を持っています。では、違いは何かと言えば、頭脳だけです。世界がフラットになったことで、インドの多くの頭脳が突然世界とつながり、パワーが爆発したのです」

 女性解説「フリードマンさんがこの本を書いたのは2004年にインドを訪れ、インフォシスのムラカニ社長に会ったことがキッカケでした。頭脳を武器に世界にビジネスを展開する姿に衝撃を受けたと言います。科学者や高度な技術者を生み出すには長い時間がかかる。アメリカは国を挙げて、科学や工学の教育に無制限の予算を組み、直ちに行動を起こさなければならない。これはこっそりと忍び寄る、しかし本物の危機なのだ」

 フリードマン「フラット化によって新しい仕事を手にするには十分に頭脳を磨いておかなければなりません。少年時代は私は両親にいつも言われていました。ご飯を残さず食べなさい、インドの人たちはおなかを空かせているのだ。しかし今、私は孫たちにこう言います。しっかり勉強しなさい。インドの人たちは君たちの仕事をおなかを空かせて狙っているのだからだ」

 男性解説「頭脳だけで世界をリードし始めたインド。しかし11億の国民の中には自分の名前を書くことのできない人も大勢います。識字率は65%です。子どもたちは働き手とされ、学校に通えない子供も少なくありません。(「インドの進学率」のテロップと進学率を示した表)11歳から14歳の子供のうち学校に通っているのは61%。高校生の年齢になるとさらに減ります。大学まで進む人は7%。日本の7分の1です。(「18~24歳――7%」のテロップ)政府は2015年までに大学進学率を倍にしたいとしています。しかしそれだけの教育費を払える人はまだ限られています。インド北部にあるセパール州。インドでも特に貧しい地域です。そのビハール州で頭脳の力で貧しさから脱け出そうと若者たちが集まる場所があります。理工系大学の受験塾。(番組の最初の場面に戻る)ラマヌジャン数学アカデミーです。インドが生んだ天才数学者に因んで名づけられました。(一方の壁は吹き抜けていてなく、天井にいくつもの扇風機。生徒はスシ詰め状態)トタン屋根の吹きさらしの教室で毎日1000人の生徒が学んでいます。朝10時から7時間。土日も休みなしで数学・化学・物理の授業が行われています。授業料は1年半で1万円。普通の塾と比べて格段に安くなっています。(机のない生徒もいる。膝にノートを置き、書き込んでいる)この学校を始めたのはアーナンド・クラル先生、34歳です。優秀な成績でケンブリッジ大学に合格しながら、学費が払えないために留学を断念しました。若者たちに同じ思いをして欲しくないと5年前にこの塾を始めました」

 アーナンド・クラル先生「大学を諦めたときは本当に悲しかったです。エンジニアになる夢も叶わなくなり、もう人生が終わったと思いました。その痛みは今でも忘れません。ですから、貧しい者でも学べる場所を何とかつくりたいと思ったのです」

 男性解説「アーナンド先生は夕方の時間を使って特別な授業を行っています。IITインド工科大学を専門に目指す特選クラス『スーパー30』です。授業料は無料です。優秀であるにも関わらず、家が貧しくて授業料を払えない生徒30人を選抜して行われています。全員のIIT合格を目指し、高度な問題に取り組ませています。去年は30人中28人が合格しました。インド各地に数ある塾で最も高い合格率です。アーザード・クマールさん19歳。スーパー30に選ばれた一人です。アザードさんはたちは学校が借りているアパートに住み込んで勉強しています。4畳半一間に2人の生徒が暮らしています。IITを目指しているアーザードさんは家が貧しいため、高校卒業後2年間働きながら勉強しなくてはなりませんでした。スーパー30の生徒は家賃も食費も塾から援助されているため、勉強に専念できるといいいます。スーパー30の生徒たちの家は殆どが農家や露天商などです。生徒たちは家計を助けるために働かなければなりませんでした。好きなでき勉強できる環境は生徒たちにとって願ってもないことです。毎日16時間勉強に打ち込みます」

 アーザード・クマール「物心がついたときから家の貧しさばかりを見てきました。お祭りのとき、周りのみんなは新しい服を買ってもらっているのに、うちだけは買って貰えませんでした。IITに入り、立派なエンジニアになって会社を興したいです」

 男性解説「IITの受験を半年後に控えた去年11月、アーザードさんは受験勉強が本格化する前に久しぶりに村に帰りました。アーザードさんの村は電気も水道もありません。村人は500人です。全員が小規模な農業で生計を立てています」

 (家族の紹介)

 男性解説「家族は両親・祖父・二人の弟、それに妹の合わせて7人です。アーザードさんの家族は人から土地を借りて小麦や菜の花を栽培しています。(鍬を使って、腰を曲げながら土を掘り起こしている裸足姿の映像)1年間の収入はおよそ5万円。アーザードさんがIITに合格することは一家にとって貧しさから脱け出すことを意味するのです。IITに合格すれば、学費の融資を受けられます。今一家はIITの受験料3000円だけは何とか工面しようと80歳の祖父まで家族総出で働いています」

 父親「生活が苦しく、じいちゃんの薬代にも事欠きます。スーパー30がなかったら、IITの受験など諦めるしかありませんでした」

 男性解説「アーザードさんがIITを目指したのは自分や家族のためだけではありません。村には小学校しかなく、アーザードさんは毎日2時間かけて別の村の中学校に通っていました。こうした状況を何とかしたいと思ってしたのです」

 父親(アーザードさんに)「IITに必ず合格するんだよ。お前は貧しさを身を以て知っているのだから。村のみんなのためにも頑張りなさい」(カースト制度に縛られているのか)

 祖父「孫が合格して外国で働くようになれば、村の道路もよくなりますよ。事業もしたら、村も変わりますよ」

 男性解説「アーザードさんはIIT入り、成功したら村に中学校を建てて、子どもたちに学ぶチャンスを与えたいと考えています」

 アーザードさん「お金を稼いで、家族の暮らしも村のみんなの暮らしもよくしたいと思っています。スーパー30のみんながIITに合格し、それぞれの村をよくしていけば貧困もなくなり、インドはきっと素晴しい国になると思います」

 (雨が降っている。ラマヌジャン数学アカデミー・受験塾。壁のない側の席に陣取った生徒は吹き込む雨を避けるためにこうもりを差しかけて授業を受けている)

 男性解説「今、若者たちは貧しさから脱け出し成功を掴むために真剣に頭脳を磨き始めています。インドでは人口の半分が25歳以下の若者です。その数は5億4千万人。インドがもつ最大の資源・頭脳が大きなパワーとなって湧き出そうとしています」

 (ムンバイ・IITの映像)

 男性解説「先月ムンバイでIITインド工科大学の総会が開かれました。(「IIT年次総会」の字幕)総会にはカラム大統領も出席しました。自らも化学者である大統領はインドの将来は頭脳立国戦略の更なる発展にかかっていると訴えました」

 カラム大統領「IITのみなさんの力でインドの若者を刺激し盛り立ててください。2020年にまでにインドを先進国にしましょう」

 男性解説「総会には卒業生5千人が世界中から集まりました。卒業生たちはインドの発展に力を合わせようと世界規模のネットワークを結成しています。これまでにI T産業の将来や貧困、インフラ整備の問題などについて話し合い、政府に提言を行ってきました」

 コンサルタント会社社長「IITで培った頭脳は我々の強みです。インドに変化を起こすために政府に掛け合い、政府と協力して物事を前進させます」

 I T関連企業会長「インドにはエネルギーが漲っていますが、同時に問題も抱えています。卒業生たちはIITで受けた恩を今こそインドのために返したいのです」

 男性解説「インドの頭脳パワーはどのような発展の道を辿るのか。インフォシスのニレカニ(?)会長はネールが始めた技術エリートによる国づくりの裾野を大幅に広げようと訴えました。

 ニレカニ会長「インドのすべての若者が教育を受けられる環境をつくることは私たちIIT卒業生の重大な責務です。若者たちが平等に競争に参加し、大きな夢を見ることができるようにしなければ、インドに富という野望をもたらすことはできないのです」

 男性解説「総会ではIIT卒業生たちが国や社会に積極的に働きかけて頭脳大国を目指していくことで一致しました。独立から今年60年目を迎えたインド。困難な状況の中で頭脳立国を目指してきました。生み出されてきた人材はインドの成長を支え、世界を揺るがす力にもなろうとしています。わき上がるインドの頭脳パワー。その勢いはさらに加速しようとしています」

 「第1回 わき上がる頭脳パワー」――
 * * * * * * * *
 インドの全てが優秀な価値状況にあるというわけではない。この「第1回 わき上がる頭脳パワー」でも貧困の存在を取上げているが、07年2月6日NHK放送「インドの衝撃 第三部」でも、インドには1日1ドル以下の生活者が3億人いると紹介しているし、06年の1年間で100人を超える貧しい農作業者が借金苦で自殺している村があるという農村の貧困問題や3人に1人が字を読めないといった深刻な問題も抱えている。

 だが、「世界で最もソフトウエアエンジニアが多いのはインド」であり、「NASAでは技術者の10人に一人がインド人」と紹介されているようにインド人の多くが優秀な頭脳の持ち主であり、そのような優秀な頭脳がインド国内は愚か、世界中で活躍しているという状況は紛れもない事実であろう。NASAで何人の日本人科学者が活躍しているのだろうか。

 そのようなインド人の「優れた頭脳を生み出しているのは建国以来の頭脳立国戦略」だと解説は言っている。具体的な方策としては大学では「学生に徹底的に考えさせる」思考重視を中心に据えた教育の実施であり、そのことを実現させるために試験では「時間内に多くの問題を解くのではなく、一つ一つの問題を時間をかけて考え」、「答に辿りつくまでの思考過程」を重視する方法が採られているとしている。

 小学校の数学授業でも、計算式と答の関係に何らかの法則を見い出すことができる計算方法を訓練づけているが、それは法則を見い出そうと全体を見る目(=全体を考える目、全体を知る目)と同時に、全体を法則によって成り立たせている原理(=基本)を見る目(=基本を考える目、基本を知る目)を相互関連的に養って合理的思考能力を高めさせようと図る教育目的からのものだろう。その成果が小学校のチラグ・アガルワール女教師が言ってたように、「子どもたちは自分で解き方を発見することもあります。考えることの面白さを知るのです」ということなのだろう。

 日本のコマ切れ知識をそのままになぞって暗記して自らの知識とする従属的な思考形式では全体を見る目を養われることはないだろう。ここからよく言われる日本人の視野の狭さ、多角的ものの見方の不足がきているのは言うまでもない。、

 インドの教育に於ける物事を成り立たせている法則とその原理を知ろうとする思考の働き(=知の働き)は訓練づけられることによって数式計算だけではなく、人間の営為や自然界の現象にも自然と向けられるだろうから、国語の授業や歴史の授業でも活用され、それが数学の授業にも撥ね返って、相互に高めあう働きをしているに違いない。音楽を学べば、学び始めた早い段階で、単に歌うだけで終わるのではなく、それぞれの曲を成り立たせている音の動き・音符の動きには一定の法則があり、何らかの原理に則っているということを知るのではないだろうか。

 小学校や中学校での法則と原理を学ぶ思考訓練と大学での「学生に徹底的に考えさせ」、「模範解答を覚えさせること」よりも、「答に辿りつくまでの思考過程が最も重視され」る思考一辺倒の授業プロセスとが必然的に対応し合い、相互刺激しあってより高度な思考の質を獲得することとなり、小学校から大学まで通した総合的な成果と発展が「インドの頭脳」ということではないだろうか。

 とすると、単に縦横に如何に早く足し算・引き算するか、あるいは掛け算・割り算するかで成績を競わせる百ます計算が日本の教育の現場で持て囃されているが、そこにあるのは数字の全体的な配列を見てそこに何らかの法則や原理を見い出そうとするインド式の思考訓練教育とは正反対の、思考過程をまったく排除した機械的計算教育を主眼としたものに過ぎないということにならないだろうか。

 既に取上げた「時間内に多くの問題を解くのではなく、一つ一つの問題を時間をかけて考え」、「答に辿りつくまでの思考過程」を重視する方法は百ます計算のどこにも存在しない。

 いわば機械的に素早く計算する能力は獲得できても、計算に思考の働きを添わせて身につけていく想像性(創造性)は養うべくもない機会提供で終わっていると言えるのではないだろうか。

 番組に紹介されていた小学校3年生の姉と未就学の妹が盤を挟んで対戦していたインドで人気のゲームにしても、百ます計算のように単に足したり引いたり、あるいは掛けたり割ったりするだけではなく、左右の計算式の答がイコール(=)を挟んで等しくなるように兼ね合いを考えることを覚えさせる仕組となっている。そこに足し算や掛け算を入れたら、左の式の数字よりも大きくなってしまうから、引き算が割り算で対応して、左の式の答えに近づけ、最終的にイコールになるよう計算式を立てるべく考えることを否応もなしに求められることになる。繰返すうちに、自分なりの計算の法則を打ち立て、それがどのような原理を持っているか考え至るのではないだろうか。

 機械的計算能力を養う百ます計算が持て囃されるのも、元々日本の教育が詰め込み暗記式教育を日本の美しい歴史とし、伝統・文化としているのだから無理もない話だが、インドの小学校では「子どもたちはノートも鉛筆も一切使わずに頭の中だけで計算します」と女性解説者が解説していたのとは逆に日本ではゆとり教育の導入で教科授業が減らされ教科書が薄くなったことが問題化し、内容を増やす動きがあるが、日本の教育が暗記教育だから暗記するための材料を必要とするからで、暗記量を増やして学力を上げようとする方向に対応して教科書を厚くしなければならないことから起こっている当然の事態でもあろう。

 考える教育なら、問題となるのは教師の思考能力のみで、極端なことを言えば、教科書がなくても考える素材を一つ提供するだけで、教師の思考能力・想像性(創造性)に応じて素材を如何ようにも応用して生徒の思考能力に反映せしめ、それを高めることができるし、授業時間を充実した状態で埋めることもできる。いわば教科書の有無、あるいは薄い厚いは教育を行う上での絶対的な必要不可欠条件ではない。インドの教育がそれを証明している。

 しかしこの不思議の国、「美しい国」日本では教科書の「薄い・厚い」が問題となる。

 敗戦後日本の国家主義教育を改革すべく日本に乗り込んできたアメリカの教育使節団はその報告書の第一章「日本の教育の目的及び内容」で、「高度に中央集権化された教育制度は、仮にそれが極端な国家主義と軍国主義の網の中にとらえられていないにしても、強固な官僚政治にともなう害悪を受ける恐れがある。教師各自が画一化されることなく適当な指導のもとに、それぞれの職務を自由に発展させるためには、地方分権化が必要である。
 斯くするとき教師は初めて、自由な日本国民を作りあげる上で、その役割を果たし得るであろう。この目的のためには、ただ一冊の認定教科書や参考書では得られぬ広い知識と、型通りの試験では試され得ぬ深い知識が、得られなくてはならない」(文部省・学制百年史 資料編 [一 教育法規等 (一) 米国教育使節団報告書])としているが、「地方分権化」云々以前に、60年後の日本の教育の現実は国定教科書制度から脱し得たものの、検定制度でそれを補い、その影響下で学校及び学校教師は似たような教科書を用いて年々似たような授業で大学のテストに合わせた似たような項目的知識を暗記させる、思考過程を剥ぐことによって成り立たせることができる「画一化」教育を専門としているのみである。

 このことは「自ら考え、自ら判断して、自ら決定する」思考過程を備えたゆとり教育を結局のところ根付かせることができず、ゆとり教育とは逆行した本来的な教育形式である暗記知識強化による学力向上教育への一斉回帰現象が証明している。その顕著な表れが全国一斉テストの復活であり、テスト成績の発表による学校評価であろう。

 「自ら考え、自ら判断して、自ら決定する」思考能力はテストの点数では一律的には計れない。

 現在テストの点数教育を加速させているのは安倍教育再生政策である。個人の権利・自由を国家に画一的に従属させたい衝動を抱えている国家主義者にとっては、従属思考を基本原理とした暗記教育は従属人間を育てるには好都合で、暗記式従属思考から離れて自由な発想を求める思考能力教育は却って国家主義の障害となるからである。

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NHK番組『インドの衝撃』から見る安倍教育再生・1

2007-03-27 10:01:07 | Weblog

 もう大分前のことで、視聴した人もいるだろうが、07年1月29日NHKスペシャル『インドの衝撃 第1回わき上がる頭脳パワー』。

 「インド・ビハール州」(テロップ)
 男性解説「インド北部のビハール州。インドの中で特に貧しいこの州で、大学の合格を目指し懸命に学ぶ若者たちがいます。(乗客で混雑する駅のコンコードかプラットフォーム、あるいは澁谷か新宿の最も人混みの多い時間帯のスクランブル交差点の人混みのみたいにスシ詰め状態になった生徒の映像)およそ1000人が吹きさらしの教室で毎日7時間勉強しています。貧困から脱け出し、成功へのキップを手にしようとしています(どの目も真剣に黒板に向けられている)。若者たちを駆り立てているのは頭脳を武器に世界中に活躍するインド人の存在です」

 (NASAの噴煙を噴き上げてロケットが宇宙に向けて打ち上げられていく瞬間の映像・「2003年6月」のテロップ)

 男性解説「4年前、アメリカのNASAが打ち上げた火星探査機。初めて火星(の表面の映像)に水が存在していたことを確認した歴史的プロジェクトを支えたのはインド人でした。NASAでは技術者の10人に一人がインド人です(飛行管制センターの中なのか、打ち上げの成功をだろう、白人女性と抱き合い大きく左手を振りながら喜び合う色の黒いインド人女性。)

 「アミーゴ・ゴーシュ博士 火星探査チーム」(テロップ)
 博士「私たちインド人は化学や物理では誰にも負けません」

 「WindowsVista」のテロップ。

 男性解説「明後日世界で同意発売される最新の基本ソフト。この開発にも大勢のインド人が関わっています。世界で最もソフトウエアエンジニアが多いのはインドです。その数160万人。今やインドの頭脳は世界をリードし始めています。

 (小学校教室風景)

 女教師「333333×333333は?」(数字を読み上げながら黒板に書いていく。黒板に
   33333×33333
  333333×333333 の文字。

 男性解説「優れた頭脳を生み出しているのは建国以来の頭脳立国戦略。(「頭脳立国戦略」のテロップ)子どもたちが算数を好きになるために様々な工夫がインドにはあります。」

 (小学生が席から立ち上がってまで競い合うように手を上げ、口々に答を言い合っている。次に大学キャンパスの映像。歩いている大学生の殆どがノートか教科書を持ち、見ながら歩いている大学生もいる。)

 男性解説「さらにインド最先端の理工系大学では60倍の競争率を勝ち抜いた学生たちに独自のエリート教育を行っています。インドが生み出す膨大な頭脳。今、世界を圧倒しようとしているのです」

 (「トーマス・フリードマンさん ジャーナリスト)のテロップ」
 アメリカ白人男性・フリードマン「国境が消え、時代が変わり、突然インドの頭脳が世界とつながり、爆発したのです」

 男性解説「広大な国土に11億人が暮らすインド。今、苦難の歴史を超え、21世紀最も成功する国と言われています。インドの衝撃。第1回は世界で台頭する頭脳パワーの秘密に迫ります」

 『第1回 わき上がる頭脳パワー』(テロップ)

 (近代的なショッピングモールの光景。客で混んでいる。列になった客を乗せて動くエスカレーター)

 男性解説「年率8%の高い成長率に湧くインド。街中のショッピングモールは商品を買い求める人々で賑わっています。(ファッショナブルな服装を身に纏った若いインド人女性がサンダルを選んだり、指輪を選んだりしている購買光景の映像)

 男性解説「2005年のインドのGDPは7885億ドル。およそ94兆円です。この20年間で3倍以上になりました。25年後には日本を超える経済大国となり、およそ40年後にはアメリカに迫ると言われています。(山積みされたハイカラなシャツの山の映像)この好景気を支えているのがI T産業です。(「バンガロール」のテロップ)その中心地ガルタカタナ州の中心都市バンガロール。国内で最もI T技術者が多く、インドのシリコンバレーと呼ばれています。この町だけでソフトウエアエンジニアが20万人もいます。今、バンガロールでは世界の企業が優秀な人材を求めて、研究開発の拠点を次々とつくっています」

 (DELL Microsoft の商標看板・社名看板をつけた建物の映像)

 男性解説「その数は100を超えます。殆どが欧米の大手企業です。アメリカのインテルもその一つです。(「インテル・インド」のテロップ。インテルの社名看板のついた建物の映像から社内にカメラがパン。無数のセクションで仕切られた一つ一つのコンパートメントでパソコンに向かっている社員)現在3000人の技術者がコンピューターの心臓部であるCPUを初め、最先端の技術の開発を行っています。インドに進出して7年。質の高い技術者を大勢採用してきたことで今や最も重要な研究開発の拠点の一つとなりました。

 (「フランク・ジョーンズさん インテル・インド社長」のテロップ)
 ジョーンズ「インドに進出した理由はインドにある莫大な人材の金脈を発掘するためでした。もはやインドの頭脳なくしてわが社は1日も成り立ちません」

 男性解説「このバンガロールの郊外(空から見た光景の映像)に近代的なビル群が建ち並ぶ一画があります。敷地面積32万平方メートル。インドを代表するI T企業・インフォシス・テクノロジーズの本社です(「インフォシス・テクノロジーズ)のテロップ。敷地内の一画にピラミッド型の青々とした建物の映像」。世界39箇所に拠点を広げ、急速な成長を続けています。この1年間の売り上げは3600億円に達する見込みです。従業員はおよそ7万人で、その94%がI T技術者です。平均年齢27歳。インドの若い頭脳が世界の企業を相手にソフトウエアを開発しています。明後日世界で同時発売されるマイクロソフトの次世代基本ソフト・ウインドウズビスタ。(「Winndowsvista」の商標映像)インフォシスはこの開発に深く関わっています。マイクロソフトとインフォシスの共同開発センターです(その光景映像)。両者は技術的な協力関係を結び、ソフトウエアの開発に当たってきました(社内風景)。ビスタの開発でこの会社が行ったのはシステムの詳細な検証です。従来よりも多機能になったこのソフトがスムーズに作動するかどうか確認し、その上で具体的な改善策を提案してきました。アメリカとインドにはおよそ半日の時差がありました。アメリカが夜の間はインフォシスの技術者たちがソフトウエアの開発に取り組みます。こうした開発が可能なのは高い技術力があるためです。インフォシスはこの技術力を武器に世界の500社とビジネスを展開しています」

 (「ナンダニ・ニレカニさん インフォシス社長」のテロップ) 
 ニレカニ「何より重要なのは頭脳なのです。優秀な頭脳がさらに最先端のテクノロジーを身につければ、非常に高い競争力を発揮できるのです。私たちはそうすることで、世界の中で誰にも負けない存在になるのです」

 男性解説「質が高く、豊富なインドのI T技術者たちは一体どこから生まれてくるのか。(「ムンバイ」のテロップ)インドでは毎年およそ40万人もの理工系の学生が卒業します。中でも最も優秀な学生を輩出するのがIIT(アイ・アイ・ティ)インド工科大学です。(大学キャンパス風景)ムンバイの他、ニューデリーやチェンナなど全国に7つのキャンパスがあります。学生はおよそ2万6千人です。(英語での授業風景)コンピューターサイエンスや都市工学、宇宙工学などについて高度な内容の授業や研究が行われています。IITには厳しい試験に合格した選りすぐりの学生たちがインド各地から集まってきます。(食堂内の映像)化学工学を専攻するジッタールター・ジョーシさん(男性)です。ジョーシさんはインド北部の町の出身です。町でIITに合格したのはジョーシさんが初めてでした。IITの競争率は60倍。世界で最も高い倍率です。毎年30万人が受験しますが、合格できるのは5000人です。インドのトップエリートとしての自覚が生まれます。

 (「ジッタールター・ジョーシさん IIT化学工学専攻」のテロップ)
 ジョーシ「IITに合格することは大きな喜びであり、達成感を与えてくれます。そして次はもっと大きなチャレンジをしたくなります。高い目標を定め、そこに向かって全力で頑張ろうと思うのです――」

 (授業風景)

 男性解説「IIT教育の特徴は、学生に徹底的に考えさせることです。授業では答に辿りつくまでの思考過程が最も重視されます。この日、ジョーシさんは化学工学の授業を受けました。教授は模範解答を覚えさせることはしません。常に答に辿りつく方法を自分で、しかも複数考えるように指導します。

 授業中の教授「みなさんがよく使う方程式の他にも、実は3種類の方程式があります。すべての場合について、自分で方程式を完成させて置いてください」

 男性解説「IITでは基礎的な実験が重視されます。(化学実験室の映像)ジョーシさんは実験で得られたデータをどのように応用すれば高度な問題を解くことができるか考えています。

 (「サンジャイ・マルジャニさん IIT科学部助教授」のテロップ)
 助教授「産業界は非常に複雑で、化学の知識がなければ解けない問題がたくさんあります。こうした複雑な問題を物理や化学や数学を用いてどのように解決するのかを身につけさせるのです」

 男性解説「この日ジョーシさんは期末試験に向かいました。試験にも特徴があります。短時間内に多くの問題を解くのではなく、一つ一つの問題を時間をかけて考えます。1科目につき3時間、この日の試験問題は10問。すべて技術式です。難しい問題でも最後まで考えることが重視されます。例え答を出せなくても、その過程が論理的で、独創性に富んでいれば評価されます」

 (夜、学生寮の外観)

 男性解説「IITでは学生たちは大学内の寮で暮らしています。(1人部屋の映像)部屋にはパソコンとベッド以外は何もありません。毎日出される膨大な課題。ジョーシさんはこの日も化学問題に関する課題と10時間向き合っていました。学生たちは互いに独創的な解き方を競い合います。(ジョーシの部屋に二人の学生が訪れている)自分一人では気づかない問題点が明かになり、新たな発想が生まれるといいます」

 学生1(ジョーシに)「この二つの気体は互いに影響し合うはずだ。他の条件も考える必要があるよ。反応があるかないかで違ってくるはずだ」
 学生2(ジョーシに)「君の解き方だと、ちょっと違うと僕は思うよ。気体を別々に分けて考えなければならないはずだ」
 ジョーシ「なる程、そういう方法もあるかもしれないね」

 男性解説「いつでも調べ物ができるよう、図書館は夜中の1時まで開いています。(図書館内の映像)授業料は寮費も含めて年間7万5千円。他の理工系大学の6分の1です。インド政府はIITに年間75億円を投じて、将来のインドを支えるエリートを育成しています。

 ジョーシ「私たちは自分や家族のためだけに勉強しているのではありません。誰もが国のために貢献したいと考えています。他の人たちが受けられない教育を受けているのですから。IITの出身者の名にふさわしい活躍をして、期待に応えたいと思っています」

 男性解説「IITが設立されたのは1951年、インドが独立してから4年後のことでした。最初にキャンパスが設置されたのは西ベンガル州のカラグプル。独立運動の盛んな地域でした。設立当初から教壇に立つサミュアル名誉教授は当時の教授や学生たちの意気込みをはっきりと覚えています。

 (「G.S.サミュアルさん IITカラグプル校名誉教授」の字幕)
 名誉教授「インドを発展させるためには私たちが頑張らなければ、一体誰がやるんだとみんなが思っていました」
 
 男性解説「IITが校舎として使ったのは植民地時代イギリスが政治犯を収容した刑務所の跡でした。収容されていたのは独立運動のために戦ったインドの知識人でした。ここにIITを設立することを決めたのはインドの初代首相ネールです。インド建国の父といわれるネール。(当時の映像。人力車が走る)200年に及ぶ植民地支配の間に大きく立ち遅れたインドを発展させなくてはならない。そのためには産業の基盤を一からつくり上げる技術エリートの養成が急務だと考えたのです。長年独立のために使ってきたエネルギーと優秀な頭を国家の発展のために生かして欲しい。(IIT第1回卒業式の記念写真。かなりの年齢に達しているネールが教授や学生に囲まれて正面に座っている)」

 男性解説「資金や設備も乏しい中で頭脳さえあれば成果をあげられる数学や化学に特化した教育が行われました。ネールからインドの将来を託されたIIT。頭脳によって国を興す。インドの頭脳立国戦略が始まりました」

 サミュアル名誉教授「自分の将来のためでなく、インドの未来を作るのだといつも励まし合ってきました。私たちはこの場所から世界のトップレベルを目指してきたのです」

 男性解説「この決意どおり、卒業生たちは世界中で活躍しています。NASAで火星探査に携わるアミタープ・ゴーシュ、(と次々と顔写真つきで照会されていく)企業向けコンピューター大手サンマイクロシステムズ創業者ビノット・コースラ、世界最大規模の携帯電話会社ボーダフォン最高経営責任者アルン・サリン、大手航空会社USエアウエイズ元社長、ラケシュ・ガングワールなど、その舞台は多岐に亘ります」

 (「IITボンベイ校学長 アショーク・ミシュラさん」字幕) 

 学長「IITでは何もないところから考えて、新しいアイデアを生み出せる人材、そしてリーダーにもなれる人材を育ててきました。だからこそ、卒業生たちは科学の分野は勿論、ビジネスの世界で成功し、トップに上り詰めることができるのです」


 男性解説「IITの学生を獲得しようと今、世界中の企業が殺到しています」

 教室での企業説明「今わが社はアジアで急速に業務を拡大しています。優秀なみなさんに是非とも来ていただきたいのです」

 男性解説「世界大手のI T企業から金融やコンサルティングの会社など(ヒューレッドパッカードやマイクロソフトの商標が映し出される)160社が今年求人の訪れました」

 (「ニシャド・カマートさん ヤフー技術責任者」の字幕)
 インド人らしき風貌のカマート「わが社なら、あなたの能力を十分に発揮できます。デザインの開発責任者として大いに活躍できます」

 男性解説「ジョーシさんも今年4年生。大手金融機関への就職を希望しています。欧米の企業の中には初任給1千万円を提示するところもありますが、しかし最近ではインド国内で就職したり、自分でビジネスを起こす学生が増えています。インド経済の活況を受け、これまで海外に流出していた卒業生たちもインドに戻り始めています」

 ジョーシ「IITで学んだあらゆる物事を深く考え、分析する姿勢はどんな分野でも役立ちます。社会に出てからも、それを大いに役立てたいと思います」

 男性解説「インド最大の資源である人材で国を興そうというネルーの頭脳立国戦略。世界が求める優秀な頭脳を次々と生み出しています」

 (「小学校の教室風景」

 女性解説「インドでは子どもたちが算数を好きになるような様々な工夫をしています。小学校では算数の授業は毎日必ずあります。3年生の授業では先生は黒板を使わずに口頭だけで計算問題を出しています」

 女教師「5505÷は?」

 女性解説「子どもたちはノートも鉛筆も一切使わずに頭の中だけで計算します」(日本の教科書が薄くなったは無意味と化す)

 子どもたちが一斉に「1101」と答える。

 女性解説「毎日10分間繰返すうちに桁数の多い数字でも頭の中で計算できるようになるといいます」

 (別の女教師、黒板に
     3×3=9
      33×33=1,089
     333×333=110,889
     3333×3333=1,110,889と書いた紙を張る。
 女性解説「こちらは5年生の教室です。算数に興味を持たせるための授業が行われていました。掛け算に現れる不思議な法則です」

 女教師「33×33は1,089です。よく見比べてみてください。法則がありますよ。333×333は110,889になりますねえ」

 女性解説「33×33の答1,089と333×333の答を比べると、1の前に1を、8の前に8を足せば答が出ることが分かります」

 女教師「それでは33万3333×33万3333はいくつになりますか?」

 女性解説「この法則さえ覚えれば、例え何桁になっても答を出すことができます。(子どもたちが手を上げ、椅子から立ち上がって口々に答をいう)子どもたちは他にも法則がないか競って計算するようになります」

 女子生徒「数字で遊べるから、とても楽しいの」
 男子生徒「簡単じゃないし、楽しくもないけど、算数は世界で一番素晴しいと思う」
 男子生徒「頭を鍛えてくれるし、算数ができれば他の教科は何でもできるから」

 チラグ・アガルワール女教師「子どもたちは自分で解き方を発見することもあります。考えることの面白さを知るのです」

 女性解説「インドでは学校から帰った後も、家庭で算数を愉しんでいます。小学校3年生のビドゥシちゃんの家で、家族団欒の時間にも算数は欠かせません。これはインドでは人気のゲームです。手持ちのコマで上下か左右に計算式を成り立たせるのがルールです」

 (両親に見守られながら、姉妹で対戦している。碁盤よりも一回り程度大きな升目のついた盤上に=(イコール)で挟んだ左右、あるいは上下の数式の答が同じになるように数字や記号を書き入れたコマを使って足し算や引き算、あるいは掛け算や割り算を複雑に組み合わせて数式を組み立てていく。組み合わせが多い程、升目を早く埋めていくことができる。そのようなゲームのようである)

 女性解説「1年生の妹とこのゲームをするのが日課になっています。ゲームに勝つためにビドゥシちゃんと妹は競って計算します。4×3=12-0」

 ビドゥシちゃん「18×3=8+16-2・・・・」

 女性解説「ビドゥシちゃんはまだ学校で習っていない掛け算と足し算を組合わせた計算ができるようになりました」

 母親「下の子もまだ掛け算を習っていないのに3×4は12だと、ゲームで自然に覚えてしまいました」
 父親「興味を持って楽しみながらやるのが一番なので、どんどん新しい計算の仕方を身につけていきますからね」

 (「インフォシス25周年記念式典 去年78月」の字幕)

 男性解説「インドの頭脳立国戦略は今、企業にまで広がっています。優秀な頭脳をさらに磨き上げて成長を続けているのがインドのI T企業インフォシスです。創業者のエレカニ社長、ムルティ名誉会長。二人は共にIITの卒業生です。1981年、二人はIITの卒業生の仲間と共にソフトウエア会社を立ち上げました。元手は借金して集めた250ドル。当時の金額で5万円程でした」

 ムルティ名誉会長「インドでは長年紙とペンだけで考えるしかありませんでした。だから、物理や数学には自信があったのです。幸いにしてソフトウエアの開発なら、多額の投資は要りません。必要なのは頭脳だけです。それならいくらでもありましたからね」

 男性解説「頭脳の重要性を知る創業者たちは人材戦略に大きな力を入れてきました。5年前総工費360億円をかけて巨大な研究センターを造りました。(インフォシス研究センターを空から俯瞰した映像)70万平方メートル。この研究センターでは一度に6千人が学ぶことができます。ここには様々な設備が整えられています。スポーツジムからビリヤード、ボーリングやロッククライミングの練習場(ロッククライミングをしている社員の映像)まであります。能力を最大に発揮させるにはゆとりある環境も必要だという考えからです。この日は採用されたばかりの新入社員の研修が行われていました。研修は16週間に及びます。大学で身につけた専門知識をビジネスの現場でどう生かすかが教え込まれます」

 女性研修教師「私たちインド人によくありますが、会話の途中に少しでも間があると、すぐに話し始めます」

 男性解説「顧客が抱えている問題を聞き出すための訓練です。ここでも考える姿勢が重視されます。相手の表情や声の調子、契約内容まで様々な情報を分析し、顧客にとって最適な解決策を考え出します」

 同女性研修教師(新入社員に)「相手の話を積極的に聞いてください。そしてしっかりと理解することです。行間も読まなければなりません。相手が言わないことまで想像力を働かせてください。口に出して言うことよりも、言わないことの方が大事なこともあるからです」

 男性解説「頭脳こそが競争力の要だとするこの会社では、新入社員に限らず、頻繁に研修が行われます。人材育成に投じられる費用は年170億円。最新の情報とテクノロジーを吸収していくためには欠かせないといいます」

 ニレカ・インフォシス社長「わが社ではアウトソーシングの受け手だけはなく、世界規模で変革を起こすためのパートナーになりたいと考えています。私たちはテクノロジーの分野で何が起きているか分かっていますが、本当の挑戦はその知識を生かして、最高の解決策を生み出すことなのです」

 男性解説「インフォシスでは社員の専門性を高めることにも力を入れています。社員は航空・運輸・金融・エネルギーなど業種別に17の分野に分かれ(「航空・運輸・自動車・金融・流通・通信・エネルギー・保険・生命科学など」のテロップ)、担当を変えることは殆どありません。専門知識を蓄えることで、より高度な仕事ができるようにするのが狙いです。その成功例の一つが最新鋭の航空機エアバスA380(空飛ぶ映像)です。世界初の総2階建て。ヨーロッパが威信をかけて造り上げた超大型機。中でも重要な主翼の設計にインフォシスは関わりました。A380を担当したチームは航空機の構造に関する専門知識を持つ技術者で構成されています。その高い分析力とシュミレーションソフトを組み合わせることで殆どの工程をコンピューター上で検証できるようにしたのです。これは翼構造の内部構造です(その映像)。様々なパーツを複雑に組み合わせるため、従来は試作品をつくり何度もテストを繰返さなければなりませんでした。しかし、シュミレーションによってその回数を大幅に減らし、製品開発の在り方を大きく変えました。画面の赤い部分は強い圧力がかかっていることを示します。それぞれの部部にかかる圧力を高度や速度など様々な条件に応じて詳しく分析し、設計することができます」

(「NHK番組『インドの衝撃』から見る安倍教育再生・2」に続く)

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