PCI(「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」東京都多摩市)の元幹部(66)の自宅に東京地検特捜部は18日(07年10月)特別背任容疑で捜索に入った。
容疑は<国から受注した中国の遺棄化学兵器の処理事業で約9000万円を流用していた≫(07.10.17『朝日』夕刊≪PCI関係先を捜索 東京地検 国事業で流用容疑)中国遺棄兵器処理)いうもので、<特捜部は、巨額の国費が投じられる事業を舞台に行われた不正経理の実態解明を目指す。>(同記事)と伝えている。
記事の最後に《ODAからむ不正次々》と題して<海外での建設コンサルタント業務を手がけるPCIをめぐっては、過去に政府の途上国援助(ODA)事業で不正経理が次々と発覚している。>とその前科ふりを解説している。箇条書きにしてみると、
①00年、中米コスタリカではPCIが共同事業体を組み、同国の農業開発計画
事業を受注。同国の政府機関「国土地理院」に測量などを下請け発注したが、
約1800万円が使途不明になっていることが判明。
②国際協力機構(JICA)の調査で、使途不明金のうち約500万円分は
PCI側が架空の人物のサインを使った領収書を作成し、流用していた。
③06年3月までの間に、JICAから計18カ月間の指名停止処分を受け
ている。
④会計検査院の調査で06年、ODAをJICAから請け負ったPCIが
、16カ国で実施した20事業で、契約書や領収書を偽造して経費を水増しした
り、架空の契約をしたりしていた疑いがあることが発覚。水増しなどの総額
は計1億4千万円だったと指摘されている。
⑤06年の汚泥・し尿処理施設工事の入札をめぐる談合事件では、大阪地
検特捜部が、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、グループ会社「パシ
フィックコンサルタンツ」の中国支社(広島市)を捜索している。
いわば悪質な累犯常習者だということなのだろう。
記事の内容に限って言えば、00年の中米コスタリカの農業開発計画事業での不正経理が最初で、<16カ国で実施した20事業で、契約書や領収書を偽造して経費を水増ししたり、架空の契約をしたり>の経緯を踏み、そのことに関連してのことだろう、<06年3月までの間に、JICAから計18カ月間の指名停止処分を受け>、今回の中国遺棄兵器処理事業での約9000万円を不正流用へと見事なまでに美しい歴史を刻んでいる。
安倍内閣が発足したのは06年9月26日。安倍首相が自ら掲げていた国家像「美しい国、日本」を内外に発信する「美しい国づくり」企画会議(平山郁夫座長)を安倍首相の下に設置したのは07年4月。ところが07年9月12日に辞意表明、そして辞任記者会見へと続き、内閣を無責任不法投棄(国会で所信表明演説をした直後の辞任だから、不法投棄にも等しいだろう)、それを受けて設置していた「美しい国づくり」企画会議の廃止を9月21日に政府は決定している。
安倍内閣が1年の短命。「美しい国づくり」企画会議はその半分の6ヶ月の短命である。しかし安倍首相は首相になる前に「美しい国へ」と題した自著を06年7月20日に第一刷発行している。「美しい国、日本」は前々から持論としていた国家像であり、その本格的な実現に向けて「美しい国づくり」企画会議を正式に発足させた。そのプロジェクトを安倍内閣時代の首相官邸HPから見てみると、
①美しい国づくりプロジェクトでは、私たち日本人の暮らしや仕事の中に
息づいている、本来持っている良さや「薫り豊かな」もの、途絶えては
いけないもの、失われつつあるもの、これから創っていくべき美しいも
のがあることを踏まえながら、皆さんと一緒に、一人ひとりが日本"らし
さ"を見つめなおすことから始める。
②これからの私たちの成長や活力の"糧"として、日本 "ならでは"の
感性、知恵、工夫、そして行動に気づき
共有し、そのことを日々の暮らしや仕事の中で磨き上げ、創り出してい
くことで、「美しい国、日本」を築いていくことを目指す。
③その具体化の第一弾として、<あなたが思う、日本"らしさ"、日本"
ならでは"のものとして推薦できる「美しい日本の粋」>を
平成19年4月20日(金)~6月22日(金)の募集期間で公募。
要するに日本人の心の中に息づいているとしている「日本"らしさ"」を再発見して、「日本"らしさ"」が請合っている「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」を把え直し、それを行動基準とすることで「美しい国、日本」へ持っていくという一大計画なのだろう。
そして「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」は「美しい日本の粋」に最も象徴的に集約されているゆえに、まずは「美しい日本の粋」の再認識から取り掛かると言うことなのだろう。
安倍前首相が「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」に最重要の価値を置き、「美しい国、日本」をあるべき国家の目標として「美しい日本の粋」を公募している足元で、「薫り豊かな」「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」を爪の垢ともせずに「ODAからむ不正次々」が止むことなく繰り広げられていた。
「ODAからむ不正」は上記『朝日』夕刊記事内の事例に限られているわけではなく、ほんの一例に過ぎない。07年10月17日の「毎日jp」の≪<ODA>無償の施設工事、7割が落札率99%以上≫は次のように伝えている。
<政府開発援助(ODA)の無償資金協力の施設建設工事で、03~06年度に成立した入札166件のうち7割近い112件が落札率99%以上だったことが会計検査院の調べで分かった。同90%未満の入札はわずか15件で、成立しなかった100件についても予定価格すれすれの金額で価格交渉が成立する不落随意契約で、割高な契約になっていた。検査院は外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)に、競争性と透明性を確保するよう一層の努力を求めた。
参議院からの検査要請で、検査院は03~06年度のODAの無償資金協力、技術協力を巡る建設工事や資機材調達の入札契約について調査、17日に結果を参院に報告した。
検査院によると、4年間に入札された266件のうち成立は166件だった。平均落札率は96.81%で、落札率が99%以上だったのは、アフガニスタンの空港ターミナル建設(05年度)など112件。最高はマダガスカルの国道建設(03年度)の99.99%だった。
入札参加社数が少ないほど、落札率がつり上がる実態も浮かんだ。1社のみ参加の29件の平均落札率は99.31%、2社参加の48件は97.98%。一方、最大の5社が参加したカンボジアの村落飲料水供給事業(06年度)の落札率は62.16%だった。
不落随契も割高な契約となり、ガーナの幹線道路改修計画(04年度)の場合、予定価格約35億円を約1億円引き上げて、ようやく交渉が成立した。
無償資金協力はODAの一環で、途上国の開発に必要なインフラ施設の建設や資機材の購入に必要な資金を日本が無償で援助するもの。事業の主体は途上国側だが、日本会計法令を基にしたガイドラインに従って入札、契約などが行われる。
外務省報道課は「競争性などを向上させるよう、より一層努力していきたい」とコメントした。【斎藤良太】>
PCIが上の契約にどれ程関わっているか。落札率が95%を越える入札は確信犯的談合だと通説になっているが、談合だとすると、誰が談合によって利益を得ていたのか。「不落随意契約」にしても、より高値にするために各社が談合して最初の入札は不成立に持っていくということもするだろう。
また不正は「ODA」だけの問題ではなく、政治家のカネにまつわる不正、役人・官僚の類の談合、収賄、企業の偽装や偽造、脱税、その他・その他、不正は尽きることなく日本の社会を覆い尽くしている。
譬えて言うと、国立劇場とかの立派な舞台で安倍晋三が自らの主演でドラマ「美しい国、日本」を熱演していたが、舞台真下の客席の観客は談合の新たな手口、その他の悪巧みやカネ儲けの話、税金をうまく誤魔化す方法、愛人の自慢、女をうまく口説く方法などを好き勝手に話し合うばかりで、安倍信三が演ずる「日本の『薫り豊かな』」な息遣いには(思い込みに過ぎないということもあるが)毛程も関心を持たず、当然爪の垢ともせず、主役の安倍晋三が張り上げる「規律」だとか「凛とした」だとかのセリフも柳に風で、劇場空間を覆っていたのはただ単に二項対立の世界(美しさへの思い込みと人間の現実の姿)に過ぎなかったということではないだろうか。
安倍首相は自らの演技、自らが練り上げたドラマの展開にのみ目を奪われて最後の最後まで観客を惹きつける力を持たないことに気づきもせずに「美しい国、日本」が日本人の規律を律する最善のドラマであり、素晴らしい国家像へとつながっていくと信じて演じていた。――
「美しい国、日本」に無関心なのは客席だけではない。政府は<「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会を作った」と意義を強調>(≪美しい国づくり:企画会議に4900万円 2回で解散≫07.10.17/毎日jp)しているが、舞台で安倍晋三が熱演しているすぐ背後の舞台裏でも、舞台を裏から支える役目を担っていた、いわば「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会」づくりを実務面から担っていた企画会議のスタッフ自らが、熱演を嘲笑うかのように「美しい国づくり」企画会議を半年の間に2回開催しただけで経費を5千万円近くもかける、ドラマの趣旨を何ら理解していない、趣旨に真っ向から反する浪費を演じていた。<経費の内訳は、職員9人の人件費約1600万円▽事務所費約3100万円▽通信・交通費約200万円。一方で同会議の実績は、日本特有の生活様式や気質を問うアンケートだけだった。>(同記事)と伝えている。
安倍首相が「美しい国、日本」を理想の国家像として掲げた以上、社会のありとあらゆる不正と正面から対決しなければならなかったにも関わらず、現実の社会を動かす力とはなっていない、それゆえに幻想でしかない「『香り豊かな』日本"らしさ"」、「日本 "ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」に価値を置いて、それを追い求める裸の王様を演じるに至り、結果として社会の不正の前に「美しい国、日本」はスローガンで始まり、スローガンで終わった。その程度の安倍式「美しい国、日本」だったということなのだろう。
上記「毎日」記事を参考までに引用。
<安倍晋三前首相の肝いりで設置された政府の「『美しい国づくり』企画会議」に約4900万円の国費が投じられたことが、政府が16日に閣議決定した答弁書で明らかになった。同会議は日本画家の平山郁夫氏ら有識者12人を集めて4月に発足したが、2回会合を開いただけで、目立った成果もなく9月に解散した。
喜納昌吉参院議員(民主)の質問主意書に答えた。それによると、同会議を運営するために内閣官房が支出した経費の内訳は、職員9人の人件費約1600万円▽事務所費約3100万円▽通信・交通費約200万円。一方で同会議の実績は、日本特有の生活様式や気質を問うアンケートだけだった。
答弁書は「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会を作った」と意義を強調したが、政権を投げ出した代償は高いものとなった。【坂口裕彦】>
容疑は<国から受注した中国の遺棄化学兵器の処理事業で約9000万円を流用していた≫(07.10.17『朝日』夕刊≪PCI関係先を捜索 東京地検 国事業で流用容疑)中国遺棄兵器処理)いうもので、<特捜部は、巨額の国費が投じられる事業を舞台に行われた不正経理の実態解明を目指す。>(同記事)と伝えている。
記事の最後に《ODAからむ不正次々》と題して<海外での建設コンサルタント業務を手がけるPCIをめぐっては、過去に政府の途上国援助(ODA)事業で不正経理が次々と発覚している。>とその前科ふりを解説している。箇条書きにしてみると、
①00年、中米コスタリカではPCIが共同事業体を組み、同国の農業開発計画
事業を受注。同国の政府機関「国土地理院」に測量などを下請け発注したが、
約1800万円が使途不明になっていることが判明。
②国際協力機構(JICA)の調査で、使途不明金のうち約500万円分は
PCI側が架空の人物のサインを使った領収書を作成し、流用していた。
③06年3月までの間に、JICAから計18カ月間の指名停止処分を受け
ている。
④会計検査院の調査で06年、ODAをJICAから請け負ったPCIが
、16カ国で実施した20事業で、契約書や領収書を偽造して経費を水増しした
り、架空の契約をしたりしていた疑いがあることが発覚。水増しなどの総額
は計1億4千万円だったと指摘されている。
⑤06年の汚泥・し尿処理施設工事の入札をめぐる談合事件では、大阪地
検特捜部が、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、グループ会社「パシ
フィックコンサルタンツ」の中国支社(広島市)を捜索している。
いわば悪質な累犯常習者だということなのだろう。
記事の内容に限って言えば、00年の中米コスタリカの農業開発計画事業での不正経理が最初で、<16カ国で実施した20事業で、契約書や領収書を偽造して経費を水増ししたり、架空の契約をしたり>の経緯を踏み、そのことに関連してのことだろう、<06年3月までの間に、JICAから計18カ月間の指名停止処分を受け>、今回の中国遺棄兵器処理事業での約9000万円を不正流用へと見事なまでに美しい歴史を刻んでいる。
安倍内閣が発足したのは06年9月26日。安倍首相が自ら掲げていた国家像「美しい国、日本」を内外に発信する「美しい国づくり」企画会議(平山郁夫座長)を安倍首相の下に設置したのは07年4月。ところが07年9月12日に辞意表明、そして辞任記者会見へと続き、内閣を無責任不法投棄(国会で所信表明演説をした直後の辞任だから、不法投棄にも等しいだろう)、それを受けて設置していた「美しい国づくり」企画会議の廃止を9月21日に政府は決定している。
安倍内閣が1年の短命。「美しい国づくり」企画会議はその半分の6ヶ月の短命である。しかし安倍首相は首相になる前に「美しい国へ」と題した自著を06年7月20日に第一刷発行している。「美しい国、日本」は前々から持論としていた国家像であり、その本格的な実現に向けて「美しい国づくり」企画会議を正式に発足させた。そのプロジェクトを安倍内閣時代の首相官邸HPから見てみると、
①美しい国づくりプロジェクトでは、私たち日本人の暮らしや仕事の中に
息づいている、本来持っている良さや「薫り豊かな」もの、途絶えては
いけないもの、失われつつあるもの、これから創っていくべき美しいも
のがあることを踏まえながら、皆さんと一緒に、一人ひとりが日本"らし
さ"を見つめなおすことから始める。
②これからの私たちの成長や活力の"糧"として、日本 "ならでは"の
感性、知恵、工夫、そして行動に気づき
共有し、そのことを日々の暮らしや仕事の中で磨き上げ、創り出してい
くことで、「美しい国、日本」を築いていくことを目指す。
③その具体化の第一弾として、<あなたが思う、日本"らしさ"、日本"
ならでは"のものとして推薦できる「美しい日本の粋」>を
平成19年4月20日(金)~6月22日(金)の募集期間で公募。
要するに日本人の心の中に息づいているとしている「日本"らしさ"」を再発見して、「日本"らしさ"」が請合っている「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」を把え直し、それを行動基準とすることで「美しい国、日本」へ持っていくという一大計画なのだろう。
そして「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」は「美しい日本の粋」に最も象徴的に集約されているゆえに、まずは「美しい日本の粋」の再認識から取り掛かると言うことなのだろう。
安倍前首相が「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」に最重要の価値を置き、「美しい国、日本」をあるべき国家の目標として「美しい日本の粋」を公募している足元で、「薫り豊かな」「日本"らしさ"」、「日本"ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」を爪の垢ともせずに「ODAからむ不正次々」が止むことなく繰り広げられていた。
「ODAからむ不正」は上記『朝日』夕刊記事内の事例に限られているわけではなく、ほんの一例に過ぎない。07年10月17日の「毎日jp」の≪<ODA>無償の施設工事、7割が落札率99%以上≫は次のように伝えている。
<政府開発援助(ODA)の無償資金協力の施設建設工事で、03~06年度に成立した入札166件のうち7割近い112件が落札率99%以上だったことが会計検査院の調べで分かった。同90%未満の入札はわずか15件で、成立しなかった100件についても予定価格すれすれの金額で価格交渉が成立する不落随意契約で、割高な契約になっていた。検査院は外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)に、競争性と透明性を確保するよう一層の努力を求めた。
参議院からの検査要請で、検査院は03~06年度のODAの無償資金協力、技術協力を巡る建設工事や資機材調達の入札契約について調査、17日に結果を参院に報告した。
検査院によると、4年間に入札された266件のうち成立は166件だった。平均落札率は96.81%で、落札率が99%以上だったのは、アフガニスタンの空港ターミナル建設(05年度)など112件。最高はマダガスカルの国道建設(03年度)の99.99%だった。
入札参加社数が少ないほど、落札率がつり上がる実態も浮かんだ。1社のみ参加の29件の平均落札率は99.31%、2社参加の48件は97.98%。一方、最大の5社が参加したカンボジアの村落飲料水供給事業(06年度)の落札率は62.16%だった。
不落随契も割高な契約となり、ガーナの幹線道路改修計画(04年度)の場合、予定価格約35億円を約1億円引き上げて、ようやく交渉が成立した。
無償資金協力はODAの一環で、途上国の開発に必要なインフラ施設の建設や資機材の購入に必要な資金を日本が無償で援助するもの。事業の主体は途上国側だが、日本会計法令を基にしたガイドラインに従って入札、契約などが行われる。
外務省報道課は「競争性などを向上させるよう、より一層努力していきたい」とコメントした。【斎藤良太】>
PCIが上の契約にどれ程関わっているか。落札率が95%を越える入札は確信犯的談合だと通説になっているが、談合だとすると、誰が談合によって利益を得ていたのか。「不落随意契約」にしても、より高値にするために各社が談合して最初の入札は不成立に持っていくということもするだろう。
また不正は「ODA」だけの問題ではなく、政治家のカネにまつわる不正、役人・官僚の類の談合、収賄、企業の偽装や偽造、脱税、その他・その他、不正は尽きることなく日本の社会を覆い尽くしている。
譬えて言うと、国立劇場とかの立派な舞台で安倍晋三が自らの主演でドラマ「美しい国、日本」を熱演していたが、舞台真下の客席の観客は談合の新たな手口、その他の悪巧みやカネ儲けの話、税金をうまく誤魔化す方法、愛人の自慢、女をうまく口説く方法などを好き勝手に話し合うばかりで、安倍信三が演ずる「日本の『薫り豊かな』」な息遣いには(思い込みに過ぎないということもあるが)毛程も関心を持たず、当然爪の垢ともせず、主役の安倍晋三が張り上げる「規律」だとか「凛とした」だとかのセリフも柳に風で、劇場空間を覆っていたのはただ単に二項対立の世界(美しさへの思い込みと人間の現実の姿)に過ぎなかったということではないだろうか。
安倍首相は自らの演技、自らが練り上げたドラマの展開にのみ目を奪われて最後の最後まで観客を惹きつける力を持たないことに気づきもせずに「美しい国、日本」が日本人の規律を律する最善のドラマであり、素晴らしい国家像へとつながっていくと信じて演じていた。――
「美しい国、日本」に無関心なのは客席だけではない。政府は<「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会を作った」と意義を強調>(≪美しい国づくり:企画会議に4900万円 2回で解散≫07.10.17/毎日jp)しているが、舞台で安倍晋三が熱演しているすぐ背後の舞台裏でも、舞台を裏から支える役目を担っていた、いわば「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会」づくりを実務面から担っていた企画会議のスタッフ自らが、熱演を嘲笑うかのように「美しい国づくり」企画会議を半年の間に2回開催しただけで経費を5千万円近くもかける、ドラマの趣旨を何ら理解していない、趣旨に真っ向から反する浪費を演じていた。<経費の内訳は、職員9人の人件費約1600万円▽事務所費約3100万円▽通信・交通費約200万円。一方で同会議の実績は、日本特有の生活様式や気質を問うアンケートだけだった。>(同記事)と伝えている。
安倍首相が「美しい国、日本」を理想の国家像として掲げた以上、社会のありとあらゆる不正と正面から対決しなければならなかったにも関わらず、現実の社会を動かす力とはなっていない、それゆえに幻想でしかない「『香り豊かな』日本"らしさ"」、「日本 "ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動」に価値を置いて、それを追い求める裸の王様を演じるに至り、結果として社会の不正の前に「美しい国、日本」はスローガンで始まり、スローガンで終わった。その程度の安倍式「美しい国、日本」だったということなのだろう。
上記「毎日」記事を参考までに引用。
<安倍晋三前首相の肝いりで設置された政府の「『美しい国づくり』企画会議」に約4900万円の国費が投じられたことが、政府が16日に閣議決定した答弁書で明らかになった。同会議は日本画家の平山郁夫氏ら有識者12人を集めて4月に発足したが、2回会合を開いただけで、目立った成果もなく9月に解散した。
喜納昌吉参院議員(民主)の質問主意書に答えた。それによると、同会議を運営するために内閣官房が支出した経費の内訳は、職員9人の人件費約1600万円▽事務所費約3100万円▽通信・交通費約200万円。一方で同会議の実績は、日本特有の生活様式や気質を問うアンケートだけだった。
答弁書は「わが国の良さ、素晴らしさを国民が再認識する機会を作った」と意義を強調したが、政権を投げ出した代償は高いものとなった。【坂口裕彦】>