犯罪・不祥事・冤罪+目こぼしは警察の習い?

2007-10-16 09:46:23 | Weblog

 時太山暴行死が炙り出す警察の体質

 このところ冤罪や署員の痴漢行為等の犯罪・不祥事で目がまわるほどに忙しい日々を送り、商売繁盛で結構なことだなと思っていた警察だが、部屋の力士時太山への暴行死を起こした時津風部屋親方(前)に対する警察の処置は冤罪とは反対の「目こぼし」なのではないだろうか。説明するまでもないが、「冤罪」は犯してもいない犯罪を犯したと濡れ衣を着せる、日本の警察がよくやることだが、「目こぼし」は逆に犯した犯罪を犯していないとして見逃すことを言う。

 力士や相撲部屋の後援者であるいわゆるタニマチは土地の有力者が殆どで(100万からするマワシをポンと贈るといったことははっきり言って我々貧乏人には真似のできないことだからだ)、タニマチとなる有力者の方も力士や相撲部屋を贔屓にして、それを周囲に自慢したり見せびらかしたりして自らの虚栄心を満足させる。そして警察署長自体、赴任以来その土地の名士として扱われる。市町村長への挨拶から始まって市町村会議長への挨拶と続き、次第にその土地の他の有力者と面識を深めていく。権威に弱い日本人は特に公的権威に弱い上に犯罪を取締る公的領域にいる者と取締られる私的領域にいる者との公私立場からして、私的立場にいる土地の人間は公に対して畏まった一歩下がった関係を強いられがちとなる。

 所轄署の署長がそうだから、県警幹部となれば一段上の名士の列に加えられることになるに違いない。いわば土地の有力者と昵懇の関係となる。

 昨日15日の昼からの朝日テレビで「目こぼし」と確信させるような発言をルポライターの武田頼政氏が行っていた。主な箇所を拾ってみると、そのコーナーの最初の方で両親に依頼されて死体解剖した新潟大学院の出羽厚二准教授のインタビュー画面を映し出した。、

 「愛知県警の、県警本部のですね、検視官がやってきて、しっかりと外傷所見を見て、そして司法解剖に愛知県(警)でまわすべき事件だったと指摘しているわけです
 
 だが、県警はそうしなかった。

 次いで元東京都監察医の上野雅彦氏のインタビュー画面。

 「両目が腫れて、皮下出血のようになっていますよ。倒れたときは鼻の天辺とか、おでこに擦り傷・打撲傷があってもいいけど、目には普通出血しないですよ。目に出血しているってことは、(握った拳で目を目掛けて殴る真似をして)直接の外力が目に作用している。体中に打撲傷が、その散在しているので1対1、と言うよりは集団的なリンチみたいな感じを受けますよね。専門の医者がですよ、いきなりこの顔を見て、急性心不全って診断を下す、それ自身おかしいことだと思いますよ

 直接見せるわけにはいかないからと死体写真から起こしたというイラストのフリップを示して、内出血がひどく顔が2倍ぐらいに腫れていた、額に親方が前日ビール瓶で殴った傷跡らしき3センチ程の裂傷がある、右耳に挫滅させられた跡が見える・・・とコメンテーターとして出演していたルポライターの武田頼政氏が全身の傷跡の如何にひどいものだったかを紹介したあと、再び死体解剖した新潟大学院の出羽厚二准教授のインタビュー画面。

 「初動段階での捜査ミスっていうか、初動捜査もしていないと言っている、申し上げているわけですね。最初の犬山署の捜査が不十分?そして犬山署が親代わりという時津風親方に返したと、いうところがおかしいと指摘しているわけです」

 愛知県警のコメントを女子アナが読み上げる。「批判されるべき点はあると思うが、我々としてはできる限りのことはやったという認識だ。今後も慎重に捜査していきたい」

 武田頼政ルポライター「犬山署の説明ですけどね、今回の鑑定が出次第、強制捜査に入ると僕にも言ってたんですけども、数日経つんですけど、何も動かないっていうね、ちょっと考えられない。あの要するに時津風部屋と犬山署の、まあ、これまでの関係もあったんでしょう。毎年毎年に、その、チャンコに招かれたとかね、署長が。そんな関係ですからね。すべてが信頼できないですよ

 県警の「我々としてはできる限りのことはやった」としてることが、「司法解剖に愛知県(警)でまわすべき事件だった」にも関わらず、まわさなかったことであり、遺体が運び込まれた病院が行った「専門の医者がですよ、いきなりこの顔を見て、急性心不全って診断を下す、それ自身おかしい」診断を警察は疑い一つ見せずに素直に聞き入れたことと、さらに死因を「虚血性心疾患」と変えて発表したことである。

 その経緯を15日『朝日』夕刊≪力士急死 検視怠る≫で部分的に見てみると、犬山消防署は救急車で搬送中に犬山署に「労働災害の可能性あり。不審死の疑い」と連絡した。救急救命士ではあっても「専門の医者」ではない消防士が「不審死の疑い」とまで見立てているにも関わらず、「専門の医者」でありながら、遺体が証拠立てている痕跡を問題外として単に「心不全」と診断した死因を警察は「虚血性心疾患」と発表。

 病院が「なぜ警察が虚血性心疾患と発表したか分からない」としているのに対して、県警は「心不全も虚血性心疾患も一緒だ」との認識を示したと記事は伝えている。

 名称を違えた疑問を解く鍵が記事の病名の違いを解説している箇所から窺うことができる。

 <急性心不全は事件性の有無にかかわらず、急に心臓が止まった「状態」を示す。一方、虚血性心疾患は狭心症や心筋梗塞を含む病名であるため、事件性のない病死を意味する。>

 そして<遺体は外傷の多さを不審に感じた遺族の希望で解剖され、多発外傷によるショック死と判明。>(同『朝日』夕刊)

 「不審死の疑い」と見立てた消防士よりも「専門の医者」ではないはずの遺族が「遺体の外傷の多さに不審を感じ」る見立てをした。解剖の結果、「専門の医者」ではない遺族でも分かる「不審死」だったことが証明された。<多発外傷によるショック死>

 外傷を加えられた多くの遺体を見てきているはずだから、警察は何らかの「不審」を抱いていいはずだが、検視官も呼ばず、司法解剖にまわすべきをまわさず、何ら「不審」を抱かなかった。

 もしも警察が時津風親方からも、親方の意を受けた土地の有力者からも、何分よろしくお願いしますと頭を低く下げられたとしたら。――

 県警や犬山署は時津部屋のタニマチとなっている土地の有力者とも親交があるだろうし、<毎年毎年に、その、チャンコに招かれたとかね、署長が。そんな関係>もあったことから、病院が死因とした「心不全」だとしたら、事件性の可能性もあることになってまずいから、<事件性のない病死を意味する>「虚血性心疾患」とすることで事件性を抹消する「目こぼし」で頭を下げてきたことでもあるし、普段の親交に応えた。

 一方は国技大相撲の名門時津風部屋の師匠であり、飲み食いの世話も受けている。一方は入門仕立ての、多分、ちょっと稽古を厳しくしただけで、あっちが痛いの、こっちが痛いの、部屋としては強くしてやりたい一心で厳しく当たったところ、おかしくなってしまって・・・・ぐらいの自己正当化の言い逃れぐらいはしているだろうから、最近の我慢にない若者と見くだして、両者の人間価値に差をつけたといったことも疑うことができる。何しろ社会的地位や財産、学歴で人間の価値を計る権威主義性を民族性としている日本人であり、その中でも国家権力を背景に権威そのものを自己存在性としている警察官である。

 勿論すべてではないが、幹部になるほど侵されやすい権威的自己存在性であろう。

 以下、メディアによって新潟大学大学院の出羽厚二准教授(法医学)の発言内容に少々違いがあるから、インターネットで拾った言葉を列挙してみる。
 * * * * * * * *
 「無数の外傷がある遺体を解剖せずに病死と判断したのはおかしい」(07.10。15/13:33 読売新聞≪時津風部屋力士急死、解剖医が愛知県警の検視ミス指摘≫

 愛知県警が死因とした「虚血性心疾患」について、「17歳と若く、体も元気な斉藤さんの死因と判断するのは通常ありえない」(同読売)

 「通常は遺族に返すべきで、暴行を加えた疑いのある側に返すのはおかしい。遺族が解剖を希望しなければ、捜査が行われなかったことになり、大きな問題」(同読売)

 出羽准教授の指摘に対し、愛知県警「当時、犬山中央病院が実施した脳検査の結果でも異常はなく、親方や兄弟子が稽古でできた傷と説明したことなどから、事件性はなく、虚血性心疾患と判断した。最終的には死因が違ったわけで、ミスと言われれば仕方がない」(同読売)
 * * * * * * * *
「説明」を鵜呑みにしている不自然に注目しなければならない。
 「無数の外傷があり、事件の可能性を考慮すべきだった。初動捜査がなっていない」(2007/10/15-22:56時事通信社≪「初動捜査なってない」=力士死亡で新潟大解剖医-愛知県警を批判≫

 遺体を見た時の印象について「すぐに病死でないとは言い切れないが、解剖しないといけないと感じた。検視官の出動要請は最低限すべきだった」(同時事通信社記事)

 県警が死因を虚血性心疾患としたことについて「混乱していたのかもしれないが、搬送された病院は急性心不全と診断したのに、事件性の薄い診断名が1人歩きしてしまい、その後の捜査をミスリードすることになった」(同時事通信社記事)

 最初から事件ではないとする意図的「ミスリード」ではなかったのか。
 * * * * * * * *
 「親方らの話をうのみにし、遺体を司法解剖もせずに返した。捜査の基本が抜け落ちていたのではないか」(デーリースポーツ≪斉藤さん解剖医が愛知県警ミス糾弾≫

 「死亡確認をした臨床医が気付かなくても、県警の検視官が傷を見ればすぐに分かるはず」(同デーリースポーツ)

 「法医学の担当者が足りなかったり手続きが煩雑だったりするため、臨床医が自然死と判断した場合は、当局側がそれに飛び付いてしまう傾向がある」(同デーリースポーツ)

 いくら「法医学の担当者が足りな」くても、そういった「傾向」は職務上の怠慢以外の何ものでもなく、職業上の使命としている守るべき社会の治安を逆に破る挑戦を犯したことになる。見逃していたなら、殺人者を野放しにすることになりかねない。しかも社会的地位ある人間として。
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 愛知県警幹部は「けがと死因には関連性がないという医師の判断と、関係者の聴取から当初事件性はないと判断した。初動捜査はきちんとしたと考えている。今後真相究明に向け全力を挙げる」(新潟日報2007年10月15日≪力士の解剖医が捜査ミス指摘≫

 「関係者の聴取」を頭から信じていたなら、冤罪は生じない。そのことは結構なことだが、実際に犯罪を犯した多くの容疑者は最初の「聴取」で無実を口にするだろうから、無実を口にした事件はすべて無罪とすることになる。まずいじゃないか。
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 「初動に問題があった。家族に指摘されて解剖する事態になったのは大失態」(07.10.14/毎日新聞東京朝刊≪大相撲:時津風部屋力士急死 「愛知県警、初動ミス」 新潟大解剖医が指摘≫

 「『激しいぶつかりげいこで亡くなった』という部屋側の話をうのみにして事件性がないと判断した可能性がある」(同毎日)

 「家族に連絡もせずに遺体を親方に返してしまった。加害者(の疑いがある部屋)側に返したことになり、常識的に考えておかしい」(同毎日)

 「私に連絡がつかず解剖が行われなければ、『事件性がない』で終わったかもしれない」(同毎日)

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