山田洋行過大請求は正当な投資回収行為

2007-11-23 14:49:11 | Weblog

 今朝(07.11.23)の『朝日』朝刊(下線、筆者)。

 ≪山田洋行、過大請求新たに2件 防衛省が取引停止処分≫

 <防衛省は22日、軍需専門商社「山田洋行」との航空機材など2件の取引で、同社が過大請求していたとして、過払い金を返すまで同社と米子会社「ヤマダインターナショナルコーポレーション」を取引停止処分にした。2件の水増し額は約370万円だが、米津佳彦・山田洋行社長は「見積書を改ざんした。かなりの契約で過大請求していた可能性が高い」と説明しているという。
 米津社長が同日、装備施設本部を訪れ、過大請求を報告した。守屋武昌・前防衛事務次官の関与が指摘されたヘリコプター装備品契約でも、同社は過大請求を指摘されており、防衛省は同社との契約を可能な限りさかのぼって精査する。
 同社との取引は過去5年間で中央調達分123件、地方調達分約550件に上る。同社が00年度に契約した海上自衛隊哨戒ヘリの装備品「チャフ・フレア射出装置」の取引で過大請求が指摘されたことから、同社がかかわった米欧のメーカー40社との取引について順次、メーカーに問い合わせている。うち見積書の金額がメーカーの見積書と食い違う取引を山田洋行側に確認したところ、2件について過大請求を認めたという。契約時には、業務上横領容疑などで逮捕された宮崎元伸・元専務(69)が在籍していた。
 同社が認めたのは、
(1)03年度に約830万円で契約した海自救難機US2のプロペラ整備用機材
(2)04年度に約390万円で契約した海自哨戒ヘリSH60Kの油圧系統制
   御用機材(未精算)で、それぞれ約310万円、約60万円過大請求
   していたという。
 US2の取引では、米国メーカーからの見積書をヤマダインターに送らせていたといい、同省は、山田洋行側が金額を水増ししたとみている。
 防衛庁(当時)は、00年度にチャフ・フレア射出装置を8億1000万円で山田洋行と契約。その後過大請求が指摘され、1億9000万円減額して「契約変更」したが、同社は処分などはされなかった。守屋氏が担当課に電話するなどしていたことがわかっている。>

 守屋武昌前防衛事務次官に対する300回を超えるゴルフ接待。その合計額1500万円。その他防衛省幹部や現職幹部自衛官に対するゴルフ接待、飲み食い接待、守屋武昌への還暦祝い20万円、自民党額賀議員のパーティー券購入220万円、さらにお車代その他その他。すべて判明している事柄のみであって、判明していないで隠されている事柄の存在も予想できる。

 これらは政治家では額賀一人だけに限った高待遇ではないだろう。ゴルフが守屋武昌一人に限ったことではないように。

 その上山田洋行は宮崎元専務の方針として防衛省に対して天下り採用基準額を設けていてた。<自衛隊への売上額10億円につき1人が受け入れの目安となっており、「防衛省側の暗黙の合意事項」になっていたという。>(07.11.13『朝日』朝刊≪山田洋行へ防衛省へ天下り 「売上額10億円で1人」≫)

 「売上額10億円」で天下り1人を引受けても十分に割に合うと胸算用したからこその「合意事項」だろうが、同時に「売上額10億円で1人」を約束した時点で、天下り官僚1人に対して「売上額10億円」を功績とする、それに相当する高額給与・高額退職金の待遇をも約束したことを示す。

 前任の天下りが「売上額10億円」を果して、次の天下り「1人」を約束できるからである。当然のこととして1人に付き、「売上額10億円」に相応する高待遇を約束しなければならない。そういう構図でなければ、売上額を「10億円」と挙げた意味を失う。「売上額10億円」で天下りを1人養えるだけではなく、会社の利益も見込めるということでなければならない。「売上額10億円」は天下りの成績基準でもあるのだ。

 大体が「売上額10億円」で天下りが1人ではなく、2人も養える金額なら、防衛省側が不当取引だと反対しただろう。常に上に位置するのは防衛省であり、下に位置しなければならないのは山田洋行だからである。防衛省の意向に逆らうことはできない。

 「売上額10億円で1人」が防衛省対山田洋行にとっての順当な取引だとすると、在籍することとなった天下り官僚が総額計算であっても、1人に付き採用基準の「売上額10億円」分の業績を次に上げないことには、「売上額10億円」を功績とした待遇で応じているのだから、差引き計算にマイナスが生じて、「合意事項」が破綻すだけではなく、養い分か会社の利益を取り崩すことになる。いわば「合意事項」を機能させ、なお且つ養い分をカバーし、会社の利益を上げ続けるためには天下り官僚1人につき「売上額10億円」分を常にクリアさせていかなければならない。一種の自転車操業である。

 同『朝日』記事によると、山田洋行の中央調達分のみの同省向けの売上額は
 99年度――160億円
 00年度――159億円
 02~05年度――25億~43億円で推移
 06年度――約33億円となっていて、99年度と比較してジリ貧状態となって
      いる。

 これに対して地方調達分の年度別の取引金額は記事から判断できないが、防衛省と<同社との取引は過去5年間で中央調達分123件、地方調達分約550件に上る。>(上記≪山田洋行、過大請求新たに2件 防衛省が取引停止処分≫となっている。

 <山田洋行への天下りは、陸将2人、空将1人を含む3自衛隊の将官が中心。最近では05年に陸上自衛隊西部方面隊幕僚長(陸将)、04年に陸自航空学校霞ヶ浦分校長(陸将補)、03年にも陸自と空自の将補2人を受け入れ>、<守屋武昌・前防衛事務次官(63)のゴルフ接待が発覚する前には、将官クラスを含むOB10人が「顧問」の肩書きを持っていたが、その後2人が辞任した。>(同『朝日』記事)ということだから、昨06年度は売上額約33億円にプラスして件数で上回る地方調達分で67億円売上なければ10人×「売上額10億円で1人」=100億円を満たすことができなくなって天下り官僚の養い分(=待遇金額)も会社の利益の確保も覚束なくなる。「合意事項」どころか、会社経営そのものが破綻しかねない。

 もし地方調達分で67億円売り上げてていたなら、その中に投資回収分も含まれているだろうから、過大請求は必要事項でなくなる。

 守屋武昌に対する接待は異常に突出してはいたものの、彼一人に対してだけではないゴルフ接待や飲み食い接待、パーティ券購入・お車代、還暦祝いや盆暮れの高額商品の贈答に加えて、天下り官僚に対する高額給与・高額退職金待遇、いわゆる養い分etc.etc――すべては会社利益を上げるための投資でなければならない。単に官僚のご機嫌を取るためのムダ遣いであろうはずはない。商売人がカネをドブに捨てるようなことはしない。「売上額10億円」は天下り1人受け入れの「目安」であるが、防衛省幹部や幹部自衛隊員一人ひとりに投じた投資と天下りに待遇の形で投じている投資に対する予定回収金額をそこに含んでいなければ、投資分はドブに捨ててしまうことになる。それプラス会社の利益があって初めて、投資を投資として生かすことができる。そうでなければ「売上額10億円」という金額は弾き出した意味をも失う。

 過大請求が行われたということは地方調達分が67億円に満たないからだろう。いわば赤字分を埋める方策が最後手段として残された「過大請求」であり、投資に相当する金額の回収行為ということでなければならない。

 中央・地方合わせた取引件数が合計673件。海自救難機US2のプロペラ整備用機材と海自哨戒ヘリSH60Kの油圧系統制御用機材で<それぞれ約310万円、約60万円過大請求していた>、その平均を取って、少々乱暴な計算だが、(310+60)÷2=185万円×673件≒12億4500万円となる。この中に「チャフ・フレア射出装置」での減額分「1億9000万円」を過大請求分として加え、さらに山田洋行社長が「見積書を改ざんした。かなりの契約で過大請求していた可能性が高い」と言っていることとを併せると、12億4500万円ではまだまだ少ない計算とは言えないだろうか。

 その証拠として1998年にNECが防衛庁に装備品製造代金を水増し請求し、過払いを受けていた金額は318億円を比較対照として挙げることができる。山田洋行の会社の規模に反して天下りを<十人も受け入れているのは大手メーカー並みで、社員約120人の中堅商社では突出している。>(同≪山田洋行へ防衛省へ天下り 「売上額10億円で1人」≫)投資事情を考えると、318億円に対する12億4500万円は少々窮屈な数字となる。過大請求も「大手並み」であってこそ、体力に抗した天下りの過剰引受け、過大接待が償却可能となる。

 会社維持が唯一絶対の至上命題なのである。自分たちの利益は会社が維持されて初めて保証される。中堅会社が大手並みに分を弁えずに背伸びをすれば、当然のこととして正当な投資回収行為であったとしても、過大請求が生半可では満たされない額になったとしても不思議はない。

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