公務員中途採用再チャレンジ/知合いの合格者に抱負を聞く

2007-11-30 21:54:02 | Weblog

 今日(07.11.30)夕方7時のNHKニュースで、<大学や高校を卒業するときにいわゆる就職氷河期を迎え、思いどおりの就職ができなかった人たちに再チャレンジの機会を与えようと行われた国家公務員の中途採用試験の合格発表が行われ、150倍以上の狭き門をくぐり抜けて162人が合格を果たしました。>(文章はNHKインターネット記事≪再チャレンジで162人合格≫)とやっていた。

 ついでに時事通信社のインターネット記事を覗いてみた、

 <人事院は30日、フリーターや子育てを一段落させた女性を含む幅広い人を対象に実施した国家公務員中途採用者選考試験(再チャレンジ試験)の合格者を発表した。合格者数は162人(うち女性34人)。申込者数は2万5075人(同7882人)だったため、倍率は155倍となった。
 同試験は学歴と職歴を問わず、4月1日現在の年齢が29歳から39歳までであればだれでも受験できる。合格者も各年齢からまんべんなく出ていた。>(2007/11/30-17:25 ≪再チャレンジ試験で162人合格=人事院≫

 「学歴と職歴を問わず」と言うことだが、大学卒業時期と「就職氷河期」が運悪く重なってしまって思うような就職先を選ぶことができなかった知合いの30歳の男性が受験したことを思い出した。

 「どうせダメですよ。大学卒業して7年、頭がサビ付いているし、155倍ですからね、何と言っても」
 自信なさそうに言っていた。
 「ダメモトでやるさ」
 自分のことではないから気楽なことを言う。だが、自分のことではなくても結果が気になる。ダメだったら、聞いて悪いかったということになるが、自分のことではないとなると野次馬根性は押さえ難く旺盛になる。「155倍」の本人に対する運命を知りたいではないか。ダメだった場合、「155倍だからなあ」と倍率に責任をかぶせることができるし、本人にしても「155倍」をダメ理由とすることがきる。

 電話して合否を聞いてみた。
 「えーえ、お蔭さまで合格できました」
 弾んだ声で言う。受かっていてくれればいいがと思いつつかけはしたが、合格と知った瞬間、何だか騙されたような気がした。あの自信のなさはウソだったのか。155倍は何だったのだと、「155倍」という倍率にも誤魔化されたような気がしてきた。

 「155倍を見事突破できました」
 受話器を通しても抑えきれない嬉しさが伝わってくる。何だかたいしたことのない「155倍」に見えてくるから不思議だ――と言ったら、不合格の受験者に失礼になるだろうが。

 「よかった。おめでとう」と言うだけで電話を切ったのでは、あいつ、不合格を期待して結果を聞いてきたのではないかと勘繰られそうで、将来の抱負を聞いてみた。

 「一応大学を出ています。ノンキャリアでもノンキャリアに最大限可能な昇進・昇給に励み、地を這ってでも天下りできる地位にまで出世したいと思います。天下りを経験しない公務員なんて、公務員として失格者の烙印を押されるようなものです」

 一段と声を高くして雄弁に一気に喋った。何とも頼もしい限りではないか。雄弁はとどまるところを知らない。

 「外部と契約業務に関わることのできる課長とかにまで出世したなら、随意契約で最大限キックバックの甘い汁に預かり、ゴルフ接待は勿論、飲み食いの接待を受けて愉しい公務員生活を送りたいと思います。公務員の特権です。大学卒業後3年間もフリーターしか職にありつくことができず、その間ずっとネットカフェ難民状態だったですからね。まだ人間を取り戻していません。公務員になれて、初めて取り戻せると思います」

 ネットカフェ難民から抜け出した後、史上空前の何兆という営業利益を上げている企業に勤務したものの、身分は派遣社員、契約社員でしかなく、毎日のように2時間残業、3時間残業はザラの安い給料で夜遅くまでこき使われて、人間を取り戻せないままの境遇に置かれてきた。

 「いいところへ天下りできるといいね」
 本人の希望には逆らうことはできない。

 「一度の天下りで満足するつもりはありません。まだよく事情は分かりませんが、ノンキャリアに許される範囲の〝渡り〟を繰返します。回数ごとに減っていくでしょうが、希望としては3回か4回の退職金を手にしたいですね」

 世の中は様々だ。離婚を繰返すごとに慰謝料と養育費で財産を減らしていく人間と、天下りを繰返す〝渡り〟で得る高額給与と退職金で財産を増やしていく人間。小泉元首相は「人生色々」と言ったが、その「色々」の中に上記二つの人生模様も入れていたのだろうか。

 「自分のカネで絶対ゴルフはしません。自分のカネで飲み食いしません。自分のカネで飲み食いするとしたら、家で5リットル2~3千円のペットボトル入り焼酎ですね。自分のカネは爪に火を灯すように最小限に切り詰め、人様のカネで勝負します。リタイヤしたとき安穏で豊かな老後の生活が送ることができるための備えです。年金は当てにしません。いくらいい年金を貰っても、年金だけではいい暮らしは望めませんからね」

 それって自分のために尽くす公務員と言うことではないかと思ったら、
 「僕は公務員になった以上、自分のために尽くすべきだと思います。悪いですか?」
 悪いなどと毛ほども思っていない無邪気な聞き方をした。
 「悪くはないさ。先輩方の教えをしっかりと守り、先輩方の態度をよく見習って、一日でも早く先輩方と瓜二つの公務員になることだね。それが成功したら、必ず君の希望は叶う」
 「勿論何から何まで先輩の教えを守り、何から何まで先輩の態度を見習って、自分の希望を必ず叶えます」

 彼を責めることはできない。少なくとも公務員を職としている人間は責める資格はないのではないだろうか。彼の目指す公務員像は公務員世界の体質・慣習をそっくり凝縮した姿だからだ。公務員として立派な志だと逆に褒めるべきだろう。

コメント (1)
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