昨日(5日)夜7時のNHKニュースで自民党総裁選挙では正式に立候補を表明した麻生幹事長を含めて5人以上が立候補する模様だと伝えていた。
与謝野経済財政担当大臣、石原元政務調査会長、小池元防衛大臣、石破前防衛大臣、それに若手世代から棚橋元科学技術担当大臣、立候補に意欲を示している山本一太外務副大臣・・・・
推薦人確保に自信があっての立候補表明、確保した時点で立候補を表明しようと推薦人確保に奔走、確保の目途は立っていないものの、取敢えずは立候補表明と様々だ。
麻生太郎以外は派閥の領袖ではないこの乱立劇はかつては持っていた派閥の力が弱まったことに原因した「騒動」なのだろうか。
自民党の派閥の解体が言われて久しい。かつての派閥力学は崩壊した、派閥の領袖が右へ向けと言ったら、右を向く時代ではなくなった、派閥とは領袖が総裁候補者として君臨し、その領袖を総裁にするための集団だったが、そういった構造は殆ど機能しなくなった等々言われている。
確かに立候補を表明、あるいは立候補に意欲を示している者の中で派閥の領袖は麻生太郎一人のみで、それ以外に領袖は存在しない。その点派閥の領袖=総裁候補とは必ずしも言えないことになるが、それぞれの派閥の領袖を眺めてみた場合、自民党最大派閥の町村派・町村信孝と麻生派・麻生太郎以外、総裁候補とするには賞味期限切れの政治家ばかりで、そういったことも手伝った派閥の領袖=総裁候補とは必ずしも言えない状況ということではないだろうか。
裏を返すと、賞味期限切れ前の政治家が領袖として派閥に君臨していたなら、派閥の領袖=総裁候補というかつての構造がかつての状況のままに出現する可能性は否定できないことになる。
町村派が自民党最大派閥でその領袖である町村自身が総理・総裁となる機会を窺っている賞味期限切れ前の政治家だとしても、自らが築き上げた自民党最大派閥町村派ではなく、森喜朗元首相が領袖だった自民党最大派閥森派を受け継いだ、と言うよりもその頭数をそのままそっくり受け継いだ、いわば棚ボタ式に手に入れた自民党最大派閥であり、完璧に賞味期限切れではあるものの最高顧問に就いた森喜朗がその政治屋的駆引きの力で実質的に派閥の実力者として君臨している自民党最大派閥町村派だということの関係と、その最高顧問が賞味期限切れ政治家であるにも関わらず、先月8月17日に出演したテレビで「福田康夫首相の無味乾燥な話より、麻生さんのような面白い話が受けるに決まっている。我が党も麻生人気を大いに活用しないといけない。『次は麻生さんに』の気持ちは多いと思う。私も、勿論そう思っている」と発言して次期総理・総裁に麻生太郎を意中の人とすることで町村派の動向を制約した関係をも受けた町村の派閥の領袖=総裁候補とは即なり得ない今回の総裁選立候補見送りであろう。
同じ町村派の小池百合子がやはり同じ派の中川秀直を後見人として立候補の動きを見せると森期限切れが不快感を示したのは小池らの動向が町村派を麻生支持に向けて統一したい欲求に逆らい、元領袖、現最高顧問のメンツを潰す動きだったからだろうが、そのことだけを見ると確かに派閥が一人の人間の力で動く構造にないことを示しているが、もしも町村自身が築いた自民党最大派閥町村派なら、派閥の領袖=総裁候補の図式で町村自身が立候補しただろうから、20人の小派閥でしかない麻生派領袖麻生太郎は例え立候補することはできても、総裁としての出る幕は限りなく小さくなるだろう。
だが町村派は町村自前の自民党最大派閥ではなく、「日本は神の国」等の発言でその無能が日本国中に知れ渡って完璧に賞味期限切れとなっているものの、元々の所有者たる森の意向を無視できない状況にあることに加えて森の「『次は麻生さんに』の気持ちは多いと思う。私も、勿論そう思っている」の発言の影響も受けた町村派領袖町村信孝の出る幕の消滅に違いない。
いわばかつての力はないというものの、派閥の力学が働いた麻生太郎の次期総理・総裁の目とも言える。確かに麻生の人気も力が与っている次期総理・総裁の目でもあるが、自民党が自らの政治の不人気が原因して政権を野党に渡すかどうか瀬戸際に立たされていることからの麻生人気への縋りであって、「瀬戸際」が保証することとなった麻生人気ということなら、「瀬戸際」の条件を欠いた場合、その人気は絶対性を欠き、逆に派閥の力学がハバを利かす可能性も生じる。
中選挙区制から小選挙区制に移行して派閥が力を失ったというものの、自民党から派閥がなくなったわけではなく、必要でないから人間が尻尾を失ったのとは逆に存在し続けている以上、その必要価値を失わないでいることを物語っている。このことは政策決定や人事決定に常に派閥が背景をなしていることが証明している。
上記昨5日の同じNHK7時のニュースが麻生以外の立候補予定者の立候補のイキサツを伝えていた。石破前防衛大臣の立候補表明に関しては、 「石破氏が所属する津島派は、幹部による緊急の会合を開き、派閥として石破氏を支援しないものの、石破氏の立候補を容認することになりました」
石原元政務調査会長に関しては、所属する山崎派の領袖「山崎前副総裁は、派閥として総裁選挙は自主投票にする方針を示したうえで石原氏の立候補を認める考えを伝えました」――――
なぜ「派閥として支援しない」にも関わらず、「派閥としては認める」といった手続きを踏むのだろうか。もし派閥がかつての力を失っているというなら、派閥の承認を受ける必要もなく、自分で推薦人を20人集めて立候補すれば済むことなのだが、そうしないで派閥に立候補を諮り、派閥単位の支援を許可されないものの派閥の承認を受ける。
この経緯の背景を成しているのはやはり派閥である。派閥を背景として、決定が行われる。派閥を立候補及び総裁選挙という舞台の背景から完全に取り除いて決定することができない。
もし石破にしても石原にしても他の派閥からの支援も可能で、総理・総裁に最も近い有力な候補者だと先行きを読めるなら、津島派にしても山崎派にしてもどちらの領袖も総理・総裁としては賞味期限切れの政治家であり、自らの立候補の目はないのだから、それぞれを派単位で応援するだろうが、その逆だから、容認しないとなったなら、派閥の横暴、その独裁性を非難されるから、容認はするが、支援はできないということなのだろう。自主投票とは間接的な勝ち馬乗りと言うことなのだろう。
派閥は一見政策で結びついている議員の集団のように見えるが、所詮損得勘定で動く利害集団でしかない。閣僚という人事を得るために政策の違いはそっちのけで、総理・総裁可能な立候補者を支持するといったことをやらかす。勝ち馬に乗るために勝ち馬と確実に見込める候補者へと支持の旗を掲げて雪崩も打つ。
今回いち早く「麻生支持」を打ち出した伊吹派がその好例であろう。安倍支持、福田支持と動いて、今回も本命視されている「麻生支持」にいち早く動いた。領袖たる伊吹文明は安倍・福田内閣で論功行賞的に重要閣僚、もしくは党の重要な役職を与えられ、同じ派内からも閣僚を出している。
派閥はかつての力を失っているとは言うものの、「腐ってもタイ」の如くに隠然たる存在感を引きずって、自民党内の政策や人事を決定付ける力関係醸成の背景を成している。このことを逆説すると、個々の議員はかつて程ではないが、依然として派閥という権威に支配され、その権威主義に縛られて自律(自立)していないことを示している、
自民総裁選 候補5人以上か(「NHK」インターネット記事/08年9月5日 19時21分 )
自民党の総裁選挙は、麻生幹事長が、正式に立候補を表明したのに続いて石破前防衛大臣も新たに立候補を表明し、来週10日の告示に向けて各陣営の動きが活発化してきました。総裁選挙は、与謝野経済財政担当大臣、石原元政務調査会長、小池元防衛大臣を含め、5人以上の候補者による選挙戦となる可能性が出てきました。
自民党の麻生幹事長は、党本部で緊急の役員会を開き、みずからが総裁選挙に立候補するため、幹事長としての職務の権限を細田幹事長代理に委ねました。そして、麻生氏は記者会見し、「急に福田総理大臣が辞任を表明したが、立ち止まることは許されないと思っている。わたしに課せられた使命は非常に大きい。国内の景気の回復と国民の不安の一掃を総裁選挙で訴えていかなければならない」と述べ、正式に総裁選挙への立候補を表明しました。
また、石破前防衛大臣は党本部で記者会見し、「総裁選挙では、外交や安全保障などについて、自民党が、民主党の小沢代表とどのように戦うのかを強調したい。『勝ち馬に乗りたい』という気持ちがないわけではないが、損得を抜きに国家や国民、党のために全力を尽くしたい」と述べ、立候補を表明しました。
これに先立ち、石破氏が所属する津島派は、幹部による緊急の会合を開き、派閥として石破氏を支援しないものの、石破氏の立候補を容認することになりました。
そして、石破氏は、青木前参議院議員会長を事務所に訪ね、立候補することを伝えて理解を求めました。
与謝野経済財政担当大臣は閣議のあとの記者会見で、「自民党の存在が問われるような政治の危機がわれわれを襲っており、総裁選挙に立候補して、わたしの考えを政策として実現するよう努力することが責任だと思った。正式な立候補表明は、政策をきちんと用意したうえで行いたい」と述べました。
このあと、与謝野氏は、森元総理大臣や山崎前副総裁とそれぞれ会って、立候補する意向を伝え、これに対し、森氏は「よかった。頑張れ」と激励しました。
また、石原元政務調査会長が所属する山崎派は会合を開きました。この中で会長の山崎前副総裁は、派閥として、総裁選挙は自主投票にする方針を示したうえで石原氏の立候補を認める考えを伝えました。
石原氏は記者団に対し、「山崎氏からは『頑張ってください』とたいへん温かいことばを頂いた。これから応援してくれる人を集める作業に入るが、週内には何とか確保したい」と述べました。
小池元防衛大臣は5日午後、講演のために訪れた札幌市内で記者団に対し、「お天気は時々、変わりますけれども、だいたい晴れていると思う。告示まで、あと数日しかないので、仲間の皆さまもいろいろと活動してくださっていると聞いている」と述べ、立候補に必要な20人の推薦人の確保に一定の手応えをつかんでいることを示唆しました。
さらに、棚橋元科学技術担当大臣は、小泉元総理大臣の推進した構造改革路線の維持を求める中堅・若手の議員連盟を代表して立候補を目指す考えを表明しており、国会内にある党所属の国会議員の事務所を回って推薦人の確保に向けて協力を求め、応対した議員や議員の秘書に「頑張ってください」と激励されていました。
また、山本一太外務副大臣は党本部で記者会見し、「外務副大臣を辞任して総裁選挙への立候補を目指したい」と述べましたが、推薦人を確保するめどは立っていないとしています。
このように、総裁選挙は、来週10日の告示に向けて各陣営の動きが活発化しており、5人以上の候補者による選挙戦となる可能性が出てきました。