「こんな日本に誰がした 自民党がした」

2008-09-13 00:35:13 | Weblog

 大昔、といっても戦後まもなくの「大昔」だが、『星の流れに』という歌謡曲が流行った。敗戦の混乱で一家離散、若い女の身一つで生きていかなければならないが、誰もが食うや食わずの時代でまともな仕事があるはずはなく、男に体を売って生きていく人生に身を落とさざるを得なかった若い女のどこか哀しげで投げやりな恨み節が巷に流れた。



 「歌謡曲その時代背景」というHPにその歌詞が出ていた。

 星の流れに 清水みのる作詞 利根一郎作曲 菊地章子唄 昭和22年

一、星の流れに 身を占って 
  どこをねぐらの 今日の宿
  すさむ心で いるのじゃないが
  泣けて涙も 枯れはてた
  こんな女に 誰がした
二、煙草ふかして 口笛ふいて
  あてもない夜の さすらいに
  人は見返る わが身 は細る
  町の灯影の わびしさよ
  こんな女に 誰がした 
三、飢えて今頃 妹はどこに
  一目逢いたい お母さん
  ルージュ哀しや 唇かめば
  闇の夜風も 泣いて吹く 
  こんな女に 誰がした

 社会的な外部事情で不本意な生活を強いられるという点では失われた10年の就職氷河期に卒業時期が重なって満足な就職にありつけずにフリーターや派遣の生活を余儀なくされたものの、そこから抜け切れずに30歳、40歳を迎えても低収入・生活不安定のフリーター、派遣の生活を続けざるを得ないでいる若者男女も同じであろう。

 自民党総裁選に5人が立候補した。麻生太郎、与謝野馨、石破茂、石原伸晃、小池百合子。 

 今の日本をつくり出したのは自民党政治であると言っても間違いはあるまい。「こんな日本に誰がした 自民党がした」と圧倒的多数の人間が歌うはずである。

 収入格差、地域格差、教育格差、過疎化、少子化、高齢化、農業、漁業、林業の危機、財政赤字、国・地方合わせた1000兆円超という巨額な借金、年金制度の破綻etc.etc.・・・・・

 外部的事情によってこうなってしまったのではなく、戦後60年以上に亘る自民党政治と官僚行政の創造性なき合作が今の日本、「こんな日本」なのである。

 だが、総裁選に立候補した5人とも、今の日本をつくり出したのは自分たちの自民党政治であるという反省意識の一かけらもなく、関係ない者の如くに地方の再生だ、財政の健全化だ、国民の痛みの緩和だ、国際貢献だ、格差解消だ、女性が子供を産める環境づくりだ、改革の推進だと好き放題のことを訴えている。

 いわば日本を壊すことしかできなかった無能な政治性を自民党政治の最大の才能としていたのだから、既に国づくりの資格を失っていることに鈍感にも気づかずに、その末期的象徴的症状が安倍・福田と続いた発足から1年足らずの二度続けての政権の投げ出しに現れているのだが(評論家の誰だかが「職場放棄」とテレビで言っていた)、立候補者は口々に日本の再生を誓う。滑稽にも「明日の日本」を語る。

 今の日本を自分たちで力を合わせてかくかような体たらくに貶める過ちを既に犯していながら、今の日本を将来の世代に残す過ちは避けるべきだなどと言う。

 殺人を犯した父親が自分の子供が将来に亘って人殺しの子と言われないように努めますと言うようなものだろう。

 自分たちが官僚を律することもできずに政治と行政のムダをつくり、散々に困っている人をつくり出す「ウソの行政改革」しかできなかったのだから、「ほんとうの行政改革」について講釈を垂れるのは既に能書きの域を出ないにも関わらず、石原伸晃は「ほんとうの行政改革は、むだを省き、困っている人に手を差し伸べることであり、『心の通う改革』を続行したい」(「NHK」ニュース)などと自民党本部での立会演説会でヌケヌケと言う。

 麻生太郎は自民党が日本をおかしくするだけの力しか持っていなかったにも関わらず、その力不足・無能力に気づかない鈍感さに恵まれて、「総裁に選ばれれば自民党の命運をかける戦いに臨む。言葉だけではなく力を持った政党が民主党であり得るはずはなく、自民党こそが日本の軸をよりいっそう太く、かつ頑丈に高めることができる」(同「NHK」ニュース」)などと、さも自民党が「力を持った政党」であるような幻想を抱いて「言葉だけ」のことを恥ずかしげもなく口にする。

 「力を持った」自民党が「命運をかける戦い」に挑んで成し遂げた成果が今の日本であって、「日本の軸をよりいっそう太く」どころか、自民党は「日本の軸を」限りなく細くしてきた政党であり、麻生はその張本人・A級戦犯の一人に位置づけられてもおかしくない上層に位置していたのではないのか。そのことに対する反省の念・責任意識の一かけらもない。

 麻生を譬えて言うなら、もやは戦争を継続する国力も兵力も失っていながら、強がりだけで「本土決戦だ」と拳を振り上げて張子の虎を決め込んだ陸軍のお偉方みたいなもので、日本を壊すことしかできなかったのだからもはや政権担当能力を失っているにも関わらず、「自民党こそが日本の軸」だと、それが張子の虎の幻想に過ぎないことを省みもせずに本気でそう思って得々と高言する単細胞を曝け出して平然としている。

 しかし騙される国民がたくさんいる。東大出を人格的にも学問的にも最高だと権威付けていて東大出だと聞けば立派な人間だと思い込む権威主義と同様(東大出の政治家・官僚に碌でなしの人間がいくらでもいるではないか)、政権党は自民党だと権威付ける閉ざされた権威主義から逃れられず、そういった人任せな習性に身を任せて政権交代の冒険もできない。自民党と言う一政党の範囲内でしか政治に対する判断能力を働かすことができず、総理大臣は自民党から出すものだと単細胞にも思い込んでしまっている。

 石原伸晃は10日の共同記者会見で自民党自身がつくり出した「政治と国民が望むことの間にできた大きな乖離」であるにも関わらず、そのことに向ける目を持たないから、「政治と国民が望むことの間にできた大きな乖離(かいり)を正したい」(≪総裁選候補の共同記者会見要旨≫時事通信社/2008/09/10-20:56))などといったことを平気で言える。

 同じ共同記者会見で自分の優れている点を問われて、石原は「年が一番若い」と答えている。

 これは単なる年齢的な物理性(=年齢的な理)を言ったに過ぎない。安倍晋三は初の戦後生まれ、最年少の首相として登場した。だが、戦後から21世紀、22世紀に向けた先見性は持たず、逆に戦前に目を向け、戦前の国家主義に染まった時代錯誤者として登場したに過ぎなかった。

 麻生は同じ1年そこそこで政権を投げ出したとしても、福田辞任と安倍辞任とでは意味が違う、安倍辞任は健康が理由だと自己都合な責任逃れを言っている。政策運営に行き詰まって、その心理的な圧迫感による精神的衰弱が健康を害しただけのことで、そもそもの原因はお坊ちゃん的ひ弱さであろう。戦後生まれの最年少という格好だけで持っていた。祖父の岸元首相の膝に抱かれて育ったというエピソードを政治家としての自己存在証明としていたのである。

 戦前の日本を自らが掲げる「美しい国 日本」のモデルとする時代錯誤に囚われていたこと自体が、既に精神的な狂いを生じせしめていたと言える。著しく健康を害していたとしても、判断能力失う程の健康障害ではない。誰か代理を立てて、入院先の病室から指示を出してもいいわけである。いきなり投げ出すことはなかっただろう。手を上げて首相になったことの責任をどう考えていたのだろうか。

 石原は安倍の戦後生まれ・最年少という勲章から何も学習できなかったから、優れている点を問われて、「年が一番若い」と答えることができたのだろう。

 こんな人間が日本の総理大臣を目指している。

 同じく10日の共同記者会見で「わが国そのものが過疎の国」へと変質させた犯人が自民党政治そのものであることを省みもせずに小池百合子は「わが国そのものが過疎の国になろうとしている」(同「時事通信社」記事)などと自民党とは関係ない出来事であるかのような無神経なことを言っている。

 「過疎」とは「スカスカ」を意味し、「過疎の国」とは「スカスカで空虚・粗雑な国」と言い替え可能であろう。そんな日本にした。すべては自民党政治の帰結として現れた国の姿でしかない。

 麻生太郎は同じ記者会見で「日本の政治のかつてない危機」だと言っているが、「日本の政治のかつてない危機」をつくり出した元凶は自民党以外の政党だと思っているのだろうか。思っているとしたら、それは余りにも無責任・無神経、図々しいというものである。

 石破は「この国を立て直すため全身全霊を尽くす」と言っているが、自民党がこの国を傾けておいて、その張本人の自民党が「立て直す」と言う論理矛盾に幸せにも気づいていない。これほどおめでたい話はないではないか。こういったおめでたい人間が滑稽にも日本の国を背負って立とうとしている。

 総裁選立候補者だけではなく、自民党政治家の誰もが「自民党は責任政党だ」と言う。胸を張ってそう請合う。政権政党として「責任」を果たさなかった「責任政党」とは空中楼閣としてのみ存在する「責任政党」であるにも関わらず。

 そのことを安倍・福田両政権が政権を投げ出す形でものの見事に象徴化させた。安倍も福田も自らの内閣を空中楼閣化させたということである。

 自民党が政権担当能力を失った政党だと自ら言い出せないのは自分から自らの政治に死刑を宣告するに等しく、政権党という既得権をどうしても失いたくないからだろう。

 勿論自民党政治のどこが間違っていたかを徹底検証して、どこがどう間違っていました、間違っていた手法をどう正しますと国民に説明責任を果してから壊した日本の修復に取り組むなら少しはましな政治を期待できるが、自己否定が怖くて徹底検証を経ずにこうします、ああしますと約束だけするから、収入格差、地域格差、教育格差、過疎化、少子化、高齢化、農業、漁業、林業の危機、財政赤字、国・地方合わせた1000兆円超という巨額な借金、年金制度の破綻等々の今の日本の姿をつくり出したのと同じ自民党政治で以って壊した日本を建て直しますといった倒錯の数々を犯すことになる。

 結果的に口先だけの約束となり、その繰返しが延々と続くことになる。口先だけの約束ということなら、麻生が一番得意とする才能であろう。失言癖を人格の一部としているということは誠実さとは程遠いところに位置した人格の持ち主ということになるからだ。

 まずは「こんな日本に誰がした 自民党がした」を潔く認めて、その原因・間違いを徹底検証することから始めるべきだが、それをしないまま「明日の日本を語る」以上、「明日の日本」は同じ間違いをDNAとした自民党政治の再現ということになる可能性が高く、それを避ける意味に於いても、異なる政治的DNAを日本の政治に注入しなければならない。その時期に来ていることだけは確かだと言える程に自民党政治は日本を壊してしまっている。 


 ≪総裁選候補の共同記者会見要旨≫(時事通信社/2008/09/10-20:56)
 自民党総裁選立候補者5人による10日の共同記者会見の要旨は次の通り。
 -総裁選に臨む決意を。
 石原伸晃元政調会長 政治と国民が望むことの間にできた大きな乖離(かいり)を正したい。心の通う改革路線をまい進したい。

 小池百合子元防衛相 わが国そのものが過疎の国になろうとしている。埋もれている力を活用し、持続可能な国にしたい。

 麻生太郎幹事長 日本の政治のかつてない危機に党や内閣の責任者として立ち向かうべきだと考えた。

 石破茂前防衛相 外交・安全保障をきちんと訴えることこそ責任政党の責任だ。この国を立て直すため全身全霊を尽くす。

 与謝野馨経済財政担当相 真実を語り、国民の理解をいただけるよう努力するのが政治の責任だ。改革には優しさが必要だ。

 【解散時期】
 -2008年度補正予算案の扱い、衆院解散・総選挙の時期は。
 小池氏 解散時期は首相になってから考えたい。
 麻生氏 補正予算はできるだけ早く成立させるよう最大限努力すべきだ。解散時期は首相になった方に聞くのが正しい。
 石破氏 政治空白を長くつくっていいとは思わない。少なくとも補正予算はきちんと仕上げ、それから信を問うのも選択肢だ。
 与謝野氏 補正予算をできるだけ早く成立させたい。年末の中小企業の資金繰りには配慮しなければならない。
 石原氏 ばらまきではなく、きめ細かい配慮をした補正予算案はできる限り早く成立させなければならない。解散は次の首相が決めることだ。
 【消費税引き上げ】
 -09年度から基礎年金国庫負担率を2分の1に引き上げる財源として、消費税を増税するか。
 麻生氏 2分の1への引き上げはその通り実行されるべきだ。今、消費税を直ちに上げるのはいかがなものか。景気を冷やす可能性がある。(引き上げまでの間は)特別会計などの余剰金を使うのも一つの方法だ。
 石破氏 将来、消費税を使うことは当然あり得るが、無駄を省くことも徹底的にやらなければいけない。
 与謝野氏 (国庫負担率引き上げは)絶対守らないといけない。消費税が唯一の安定財源だ。来年の通常国会で(消費税増税を)できるかという技術的な問題はある。
 石原氏 道路特定財源の一般財源化で余剰があるのかないのか、年末に明らかにできる。(特別会計の余剰金などとの)組み合わせで回答を出す以外にない。
 小池氏 今、消費税を上げる環境にない。政府として無駄を排除し、効率の良い行政を進めなければ、国民の納得を得られない。
 【小沢氏との対決】
 -次期衆院選で小沢一郎民主党代表と戦う際のセールスポイントは。
 石破氏 甘言を弄(ろう)さず、責任ある政策を提示することだ。
 与謝野氏 昔と今の小沢氏を比べると、財源論などに欠陥がある。筋の一貫性ではあの方には負けない。
 石原氏 責任政党として政策の差を示すことで対峙(たいじ)したい。
 小池氏 小沢氏は党首討論を避けてばかりいる。ぜひ毎週党首討論をしたい。
 麻生氏 (党内向けの)説明の努力は明らかに小沢氏との違いとして挙げられる。
 【新テロ特措法延長】
 -新テロ特措法延長にどう取り組むか。
 与謝野氏 国際貢献、テロとの戦いの観点から、どんなことがあっても公明党を説得し、再度国会を通過させる努力をしなければならない。
 石原氏 日本はテロとの戦いに国内事情で参加しない、とのメッセージを発してしまう。国民にしっかり説明しなければならない。
 小池氏 (給油活動が)いかに重要か、公明党や国民に分かりやすく説明しなければならない。
 麻生氏 日本だけが撤収することは常識的に考えられない。イラクに派遣している航空自衛隊は、引き揚げる状況がつくられつつある。
 石破氏 各国がテロと戦っている。なぜそこから日本だけ逃げるのか。
 【大連立】
 -民主党との大連立についての考えは。
 石原氏 一つの政治的テクニックとしては十分考えられる。小沢氏が断った事実がある。
 小池氏 (次期衆院選後)政策、方向が一致する政党が力を合わせるのも選択肢かもしれない。
 麻生氏 小選挙区制度を維持しての大連立は極めて難しい。
 石破氏 民意を無視するものだ。国家観、憲法観が違う政党が大連立を組んで何になるのか。
 与謝野氏 国会は宿命的にものを決めなければならない場所だ。ずるずるいくのは許されない。話し合い、工夫が必要だ。衆院選後の自民党の大事な宿題だ。
 【格差解消】
 -都市・地方の格差解消にどう取り組むか。
 石原氏 いたずらに都市と地方の対立をあおる政策はナンセンスだ。
 小池氏 道州制を積極果敢に進め、人間、財源、権限の「3ゲン」を地方に渡す。
 麻生氏 改革をすれば必ず痛みが出る。急激な痛みには痛み止めもいるし、栄養補給も考えないといけない。
 石破氏 地方の惨たんたる状況を理解すべきだ。改革を総点検しない限り、改革は実現できない。
 与謝野氏 小泉構造改革は成功したが、格差が生じたことは間違いない。格差問題に取り組まなければならない。
 【優れている点】
 -他の候補より優れている点は。
 小池氏 政治のど真ん中に届かなかった声を届けることができる。
 麻生氏 一番の強みは経験だ。
 石破氏 防衛庁長官、防衛相として通算4年くらい務めた。その点はエキスパートだ。
 与謝野氏 そういうことを言わない謙虚さだ。
 石原氏 年が一番若い。(了)

コメント
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