共同通信社が1月7日、8日(2012年)世論調査を行なっている。
《内閣不支持 初の50%超 世論調査 増税74%「説明不足」》(東京新聞/2012年1月9日)
この調査を、〈消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革大綱素案の決定を受け全国電話世論調査〉だとしている。
内閣支持率
「支持する」 ――35・7%(前回2011年12月調査 -8・9ポイント)
「支持しない」――50・5%(前回2011年12月調査+10・2ポイント)
これは政権発足以来の初めての半数超えの不支持率で、支持率と逆転。
大綱素案に関しての野田首相の国民に対する説明
「十分に説明していない」――74・4%
与野党協議について
「野党は応じるべきだ」――74・6%
政党支持率
「民主党」――20・7%
「自民党」――22・4%
野田内閣になって初めての民・自逆転だと書いてある。
次期衆院選比例代表投票先
「自民党」――27・5%
「民主党」――20・5%
記事解説。〈内閣支持率と合わせ増税をめぐる民主党議員離党の動きなどがマイナスに働いたとみられる。〉
八ッ場ダム建設再開を決定
「納得できない」――58・7%
この記事には記載はないが、共同通信の世論調査を伝えている他の記事の増税賛否。
消費税率を2段階で10%に引き上げる大綱素案について
「賛成」――45・6%
「反対」――52・9%
また、共同通信社の世論調査を伝えているどの記事も議員定数削減や公務員定数削減、そして公務員人件費削減を行った上で、「それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」と消費税増税の前提としながら、消費税増税が先行していることの野田首相の公約違反に関して、調査項目に加えていなかったのか、何ら触れていない。
この公約違反も影響している内閣支持率の低落でもあるに違いない。
問題は消費税増税に関する説明不足と増税に反対が半数以上で上回っていることだろう。「反対」の52・9%の殆どが増税が生活不安に直結する、あるいはそれ以上に生活困窮に直結すると把えている国民であって、それが半数を占めていると見ることができる。
増税されても、生活に余裕を失わない国民は国の財政事情を考えた場合、反対する国民は少ないはずだ。
だが、例え消費税を増税しても、中・低所得者が安心して日々の生活をしていけるとする十分な説明がないから、反対がなかなか減らない。逆に説明不足の不親切が内閣支持率を下げることになる。
野田首相は「正心誠意」をモットーとしているが、内実は不親切を性格としていると見做さざるを得ない。
1月6日(2012年)に閣議決定したという、《社会保障・税一体改革素案について》のpdf記事から消費税増税に関する記載箇所を中・低所得層の視点から覗いてみた。
消費税増税の目的について、〈国民すべてが人生の様々な段階で受益者となり得る社会保障を支える経費は、国民全体が皆で分かち合わなければならない。世代を通じて幅広い国民が負担する消費税の税率を引き上げるとともに、世代内でも、より負担能力に応じて社会保障の負担を分かち合う仕組みとしていくことにより、世代間・世代内の公平性を確保しつつ、社会保障の給付水準に見合った負担を国民全体で担っていかなければならない。
同時に、今回の改革で盛り込まれている社会保障の充実策は、年金国庫負担2分の1の恒久化を含め、消費税率の引上げによる安定財源の確保が前提であり、社会保障の機能強化や安定化を図るためにも、それに見合う安定財源を着実に確保していく必要がある。〉ともっともらしい美しいことを言っているが、その美しさに応えることができる生活余裕者ならいいが、問題は先のことよりも日々の生活が成り立つかどうかといった状況に置かれている生活者である。
特に日々やっとの生活を送っていて、1日先のことよりも今日1日のことを考えて、その繰返しで日を送っている低所得者にとって、「国民すべてが人生の様々な段階で受益者となり得る社会保障」だ、「社会保障の給付水準に見合った負担を国民全体で担っていかなければならない」だは、殆ど意味もなく映るに違いない。
低所得者対策は次のような記載となっている。
〈消費税(国・地方)の税率構造については、食料品等に対し軽減税率を適用した場合、高額所得者ほど負担軽減額が大きくなること、課税ベースが大きく侵食されること、事業者の負担が増すこと等を踏まえ、今回の改革においては単一税率を維持することとする。〉
〈所得の少ない家計ほど、食料品向けを含めた消費支出の割合が高いために、消費税負担率も高くなるという、いわゆる逆進性の問題も踏まえ、2015年度以降の番号制度の本格稼動・定着後の実施を念頭に、関連する社会保障制度の見直しや所得控除の抜本的な整理とあわせ、総合合算制度や給付付き税額控除等、再分配に関する総合的な施策を導入する。〉
軽減税率は「高額所得者ほど負担軽減額が大きくなる」、「課税ベースが大きく侵食される」から、導入しないとしている。
いわば税収が減ることからの導入反対ということだが、だとすると、逆進性対策としての「総合合算制度・給付付き税額控除」等の導入予定は軽減税率導入よりも税収減を相殺できることが理由ということになる。
以上のことは中・低所得層の負担軽減よりも行政利益・国家利益を優先させた消費税増税逆進性対策であることを物語っている。
野田政権は高額所得者の所得税の最高税率を現在の40%から45%に引き上げる方針でいる。軽減税率導入によって高額所得者程負担軽減額が大きくなるなら、このことを十分に説明した上で、負担軽減を埋め合わせる形で高額所得者の所得税最高税率に上乗せして、軽減税率導入による高額所得者程負担軽減額をプラスマイナスゼロ相当に持っていってもいいわけである。
また、軽減税率導入によって税収が減額される分、一千万円以上の高級車や1億円以上もする豪邸の購入に対してより高い税率とすることで補ってもいいはずである。
素案では低所得層対策にもっともらしい理屈をつけているが、中・低所得層の負担軽減よりも行政利益・国家利益を優先させた消費税増税逆進性対策であることは次の記事が証明してくれる。《給付付き税額控除制度を採用へ 民主党》(MSN産経/2011.12.11 01:37)
記事は、〈欧州などでは消費税への低所得者対策として軽減税率が広く使われているが、民主党が軽減税率に否定的〉な理由を次のように伝えている。
藤井裕久党税調会長(「生活必需品」の範囲を決める際に)「政治の恣意的(しいてき)なものが入り、利権も生まれる可能性がある」
この男の言葉には低所得層に対する視点が一切ない。
国のどのような補助金制度でも、あるいは官僚の天下り先となっている特殊法人や独立行政法人でも利権や補助金・予算の目的外使途、あるいは私利・私物化がなくならずには存在する。
このような不正、恣意的使途に目を光らせるのも政治の役目のはずである。第一番に持ってくるべきは低所得層が生活していけるかどうかの視点であって、利権云々は別の問題であるはずである。
財務省幹部(軽減税率導入は)「対象品目の線引きが難しい」
これも中・低所得層の負担軽減よりも行政利益・国家利益を優先させた発言となっている。欧米ではこの男が「難しい」と言っている「対象品目の線引き」を行なって、高額所得者程負担軽減額が大きいことと課税ベースが大きく侵食されることを問題とせずに軽減税率を導入して、中・低所得層の負担軽減対策としているのである。
財務省の言いなりだからなのだろう、中・低所得層の負担軽減よりも行政利益・国家利益を優先させることができる。 |