
誰にでも分かりきったことだが、分かりきったことを記事にすることにする。
2015年4月の春闘で大手企業が回答した月額の賃金の引き上げ額は過去最高水準のベースアップが相次いだことなどから、平均で8235円となり、平成10年以来17年ぶりの高い水準となったと2015年4月17日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。
景気のいい話で、アベノミクスの大いなる恩恵だろう。
但し大手企業に限っての話で、同記事もこうした賃金上昇の動きが(つまり、景気のいい話がということだが)中小企業にも広がっていくのか注目されると書いていた。
厚生労働省が6月18日(2015年)発表の4月の毎月勤労統計調査の確報によると、実質賃金指数は前年同月比0.1%減となったという。
6月2日発表の速報値は0.1%増で、2013年4月以来2年ぶりに賃金が物価を上回って上昇したとされたが、確報値は24カ月連続のマイナスに修正された。
厚労省は修正について確報は速報段階よりも調査対象に含まれるパート労働者の比率が高く、賃金の平均水準を押し下げたためとしていると「時事ドットコム」が伝えていた。
つまり速報段階では計算に入れるパート労働者の数が少なかったから実質賃金額が物価を上回る現象が起きたが、確報段階ではパート労働者を多く含む計算となって、賃金の平均水準を押し下げてしまったために全体として実質賃金額が物価を下回ってしまった。
このような実質賃金指数計算の構造を見ただけで、そこに格差の存在を否応もなしに見なければならない。最初の景気のいい話と総合すると、尚更に格差拡大を痛感させられる。
大手企業とそれに準ずる企業に所属する社員は物価の高騰をさして気にしないで済む賃金を手に入れ、非正規労働者やパートの中でも特に所得の低い者は物価に追いつかない苦しい生活を強いられ続けるに違いない。
アベノミクスは確実に格差を加速させている。
安倍晋三がアベノミクスに於ける成長戦略の柱の一つとして掲げていた労働者派遣法改正案が6月19日、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、衆院を通過、参議院に送られた。反対の野党がいくら抵抗しても、参議院でも賛成多数で可決され、成立することだろう。
周知のように改正案は一部の業務を除いて現在は最長で3年までとなっている派遣期間の制限を撤廃、その代わり1人の派遣労働者が企業の同じ部署で働ける期間を3年に制限する内容となっている。
つまり同一部署での派遣制限3年は変わらない。これまでは3年を経過して同一の派遣労働者をを雇い入れる場合は労働契約の申込みをしなければならなかったが、3年毎に人間を入れ替えることで、永遠に派遣社員を雇用することができる。一種のマジックである。
1人の派遣労働者を3年で雇い止めにして、別の派遣労働者を新たに雇用する構造にすれば、3年間の雇用経験を無視した新規採用の賃金(=新人、あるいは未経験者の賃金)に巻き戻すことが可能となる。
当然、同一派遣労働者同一部署勤務期間3年限定は賃金抑制装置として働く。
《国内上場企業、最高益の「裏側」 四半世紀伸びない売上高》(ロイター/2015年 05月 28日 12:18) という記事で、このところの国内上場企業の最高益は、〈国内上場企業の1社あたりの従業員数は、1858人から1437人に減少。平均人件費も131億円から98億円に減り、1人あたりの人件費は705万円から685万円と縮小した。人員削減などコストを低減したうえでの利益上積み〉、つまり人件費の抑制と、それ以外では日銀の異次元の金融緩和による金利の低下、そして法人税などの減税によるものだと書いているが、企業はアベノミクスは格差ミクスの追い風を受けて、益々増益方向にスピードを上げていくに違いない。
勿論、その増益は中間層以下の利益を吸い取る形を取る。近いうちに成立するであろう改正労働者派遣法がその役の一つに大いに立つというわけである。
アベノミクス様々である。大企業の経営者らは安倍晋三が神様に見えるに違いない。