防災先進国日本の情報のより豊かな人間活動構築への活用を心配させた6月7日NHK「日曜討論」の指摘

2015-06-15 08:23:02 | 政治


 日本は防災先進国を自認している。2014年6月4日、国土交通省は防災技術等の新興国に向けた輸出を推進する新組織「日本防災プラットフォーム」を設立した。

 これは防災先進国自認の一つの反映であろう。

 だが、防災先進国自認を疑わせる指摘が2015年6月7日のNHK日曜討論『火山、地震、今日本列島で?』の番組中にあった。

 日本は機械の技術性といったハード面では優れているが、知識や経験で成り立たせて蓄積した情報をより便利でより豊かな人間活動の構築に向けて的確に活用していくソフト面での能力は劣ると言われている。

 要するにいくらハード面の防災技術に優れていても、その技術がより便利でより豊かな人間活動の構築に役立たなければ意味はない。

 そのことを心配させる指摘というわけである。

 その個所の遣り取りを見てみる。


 島田敏男アナ「藤井さん、国の火山噴火予知連絡会の会長という重い立場にいらっしゃるので、どうしても慎重になると思うのですが、先の見通し(これからの火山噴火)はどうですか」

 藤井敏嗣「これから先はですね、冒頭にも言いましたけども、我々がまだ経験していないような大きな噴火が来ると想定すべきだと思います。今から100年前に、1914年に桜島で大正噴火というのが起こりました。これは非常に大きな噴火なんですけども、1929年にも北海道駒ヶ岳が噴火を起こしておりますね。

 それ以降、その規模の噴火というのはもう90年ぐらい起こっていないんですよ。

 江戸時代や明治時代はもっと大きな噴火が、例えばさっき話題になった宝永の噴火とか、あるいは浅間の天明の噴火とか、あるいは有珠山の前の大きな噴火とか、起こってるんですね。

 その後100年ぐらい起こっていなということを考えると、これから先の数十年、もしくは100年にそういうものが来るということを覚悟しなければいけないというふうに私は思います」
 
 島田敏男アナ「そのときにですね、今日本のそうしたものに備える体制の中で、体制づくりで欠けているもの、不足しているものは一番大きなものは何でしょう」

 藤井敏嗣「やはり日本の中で一番欠けているのは一元的な火山監視のシステムですね。今気象庁が火山を監視しているわけです。それでは先程の噴火警戒レベルを30の火山に導入するということをやっているんですけれども、気象庁の観測データだけでは足りないので、大学や色んな機関の観測データを気象庁に集めて、それから気象庁がやることは地震と地殻変動の観測なので、他でも火山ガスの観測とか、あるいは地質の観測とか、そう言うことをやらなければいけないんですが、それは他の機関でやる。

 そういうものを総合するシステムがまだ日本にはないんですよね。他の火山国はみな国立の火山・地震を調査・研究する機関が、一元的な機関があるんですが、日本だけが違うんですね。

 これは非常に危うい状態だと思います」

 中川緑「システムがないというのは人が、専門的に勉強されている人が足りないということなんですか。それとも予算とかが付けばちゃんとシステムというものは作れるものなんですか」

 藤井敏嗣「先ず人がそういう研究ができるポジションがないと、学校も学生も育たない。そういう機構を作るためには予算も必要ですね。

 で、バラバラなところでやったものを寄せ集めただけでは、予算請求もそれぞれ別の省庁から予算請求するので、観測装置がダブったり、足りなかったりということが当然起こるわけなんですね。

 そういうものを纏めてやる仕組みがないといけない。

 非常に分かりやすいことを言うと、火山庁みたいなものが本来日本にはあるべき。あるいは地震・火山庁かもしれませんが」

 島田敏男「これは政府、そして国会、大いに今の問題提起を受け止めてですね、議論を、あるいは検討を急いで頂きたいと思います」

 日本には「一元的な火山監視システム」が存在しないと指摘している。

 昨年2014年9月27日の御嶽山の噴火もそういったことが影響しているのだろうか。

 気象庁は警戒を呼びかけていたものの、噴火警戒レベルの設定は平常とされる1のままであり、山頂付近には数百人の登山者がいたという。山の膨張を観測する機器や地震計は優れた技術のもと優れた機械を利用しているはずだから、その点の問題はなく、防災先進国という自負を裏付けている一つでなければならない火山の噴火に関わる防災システムに問題があったことになるのだろうか。

 このことが原因の噴火予知の遅れだとしたら、その遅れによって何人の死者が出たということだけではなく、どのような防災システムであっても、住民の社会生活の保障を目的とする構造を取っていなければならないのだから、その点を欠いていたなら、優れた技術のより便利でより豊かな人間活動構築への活用というソフト面にやはり問題があり、そのことを心配させる防災先進国日本の防災システムと言わざるを得ない。

 東日本大震災で病院の入院患者や介護施設の入居者の移送に問題があり、死者を出したり、出さなくても、身体を弱らせて病状を進行させたり、被災者に対する食糧や医薬品、燃料の支援・配布に遅れが生じて生活の不便を必要以上に与えたのは防災先進国という名称が技術に偏った名称であり、ソフト面が追いついていないことが原因していたはずだ。

 いくら防災先進国を自認したとしても、防災技術が優れていると自負したとしても、防災システム自体に人間の幸せを阻害する要因を内在させていたのでは意味はない。 


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