安倍晋三は日中首脳会談で実際に中国人工島構築に懸念とその海域への米艦船航行の支持を伝えたのだろうか

2015-11-03 12:50:44 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《11月2日小沢代表談話 「強固な日韓関係こそ東アジア、世界平和の要」》 

     小沢一郎代表が「強固な日韓関係こそ東アジア、世界平和の要」と題する談話を発
     表。その中で将来、対馬海峡にトンネルを掘って、日韓両国が高速鉄道などで結ば
     れる日を実現すべきと提案。是非ご一読・拡散を。

 安倍晋三は2015年11月2日の李克強首相との日中首脳会談で南シナ海の人工島問題について次のように発言したという。

 安倍晋三「諸懸案について率直に意見交換した。主張すべき点は当然、主張した。具体的に何を議論したかは中国側との関係があるので今申し上げることはできない」(日経電子版)  

 「主張すべき点は当然、主張した」――

 官房長官の菅義偉は2015年10月27日午前の記者会見で、米の航行について、「米国の作戦の一つ一つにコメントは控えたい」と述べて、支持表明を避けた。

 翌210月28日午前の記者会見では支持を表明してる。

 菅義偉「我が国として支持する。南シナ海に於ける大規模な埋め立てや拠点構築など、現状を変更し緊張を高める一方的な行動は、国際社会共通の懸念だ。
 
 開かれた、自由で平和な海を守るため、国際社会が連携していくことが重要だ。米軍の行動はこうした取り組みと軌を一にするものだ」(時事ドットコム

 このような明確な支持の表明は当然、安倍晋三と意思統一を図って行ったと言うことでなければならない。

 と言うことは、「主張すべき点は当然、主張した」と言うことは、「南シナ海に於ける大規模な埋め立てや拠点構築など、現状を変更し緊張を高める一方的な行動は、国際社会共通の懸念だ。開かれた、自由で平和な海を守るため、国際社会が連携していくことが重要だ。米軍の行動はこうした取り組みと軌を一にするものであるし、日本としては米国の行動を支持し、中国は人工島の構築を直ちに中止すべきだ」といった趣旨の発言でなければならないし、そういった趣旨の発言で「主張すべき点は当然、主張した」ということになる。

 このような趣旨の発言のどこが「具体的に何を議論したかは中国側との関係があるのでいま申し上げることはできない」と言うことなのだろうか。

 そもそもからして「中国側との関係」を持ち出して、自身の発言を隠すということは中国側から日中首脳会談について何らかの条件をつけられ、その条件を呑んだことを意味する。

 どういった条件なのだろうか。

 条件なしなら、中国に対してどのような「主張」を行ったのか、米国の行動に対する支持をどう伝えたのか、日本国民にのみではなく、米国の行動を支持する全ての外国の首脳とその国の国民に対して日本の首相が米国の行動についてどのような支持表明をしたのかは知らせるべき情報であろう。

 知らせてこそ、菅義偉が言っている“国際社会との連携”の具体的証しとなる。

 だが、具体的な証しを示すどころか、逆に「中国側との関係」を理由に「具体的に何を議論したか」の情報を隠した。

 と言うことは、“国際社会との連携”よりも「中国側との関係」を優先させたことになる。
 
 民主党政権時代の2010年10月4日、アジア欧州会議(ASEM)首脳会合がベルギーのブリュッセルで開催された。この1カ月前の2010年9月7日、尖閣諸島沖の日本の領海内で不法操業を行っていた中国漁船を海上保安庁の巡視船が取締りを行おうとした際、逃亡を謀ったため追尾中、中国漁船に体当たりを受けてその船長を公務執行妨害で逮捕・取調べを行ったことに中国が反発、船長の即時釈放を求めると共に報復措置なのだろう、2010年9月21日、旧日本軍の遺棄化学兵器廃棄処理関連工事の現地調査のために中国入りしていた準大手ゼネコン「フジタ」の日本人社員4人を「軍事管理区に無許可で立ち入り、軍事対象を動画撮影した」との理由で身柄を拘束し、日中関係が極度に険悪化していた。

 こういった状況下で菅政権は中国との関係修復に動き、同じくASEMに出席していた温家宝中国首相と25分という短い時間だったが、10月4日夜、首脳会談を開くことができた。

 日本側はこの会談を首脳会合のワーキングディナーの後、廊下で偶然出会って、「やあ、やあ」と声をかけて始めた会談だと説明していたが、2010年10月6日付「asahi.com」記事は日本側が前以て水面下で働きかけ、中国に求めた末の偶然を装った会談だと伝えている。 

 会談実現で中国側が持ち出した条件はASEM全体会合で行う両首脳の演説で「尖閣諸島問題はお互いに直接言及しない」ことだったという。

 その条件通りに10月4日夕の首脳会合では菅首相、温首相共に尖閣諸島問題には触れずにスピーチを終え、その後のワーキングディナー2時間経過後に偶然を装った首脳会談が開かれた。

 菅無能はここで次のような発言をしたことを自身の口から述べている。 

 菅無能「大体同じ方向に歩いていたんですが、『やあ、ちょっと座りましょうか』という感じで、割と自然に普通に話ができました。・・・・温家宝さんの方から原則的な話があったもんですから、私の方も領土問題は存在しないという原則的なことを申し上げた」(あさひテレビ)――

 首脳会合のスピーチでは尖閣問題には触れないという中国側の条件を呑んでおいて、果たして温家宝との会談で自身が言っているように触れたのだろうか。

 「asahi.com」の誤報という見方もできる。

 だが、中国当局に拘束された「フジタ」の4人の社員のうち3人が釈放されたのは2010年9月30日で、残る1人が釈放されたのは2010年10月9日である。10月4日夜の菅・温家宝会談の際は残る1人が未だ拘束中であった。

 菅無能が温家宝との会談でこの1人の釈放を求めなかったことが4日後の10月6日衆議院本会議での各党代表質問に対する答弁で明らかになった。

 谷垣禎一「フジタ社員の残る一名の釈放についても中国側に毅然として臨むべきでありましたが、ASEMの立ち話において、温家宝首相に当然強く働きかけたのでしょうか。総理の具体的な説明を求めます」

 菅無能「先ほど申し上げましたように、ASEMにおきまして、温家宝首相との間で、まず、私を含め、日本の基本的な立場、先ほど来申し上げておりますように、尖閣諸島が我が国固有の領土であって、それは歴史的にも国際的にも認められたところで、領土問題は存在しないということを申し上げ、また、温家宝首相の方からも、首相としての立場が表明された後に、現在の状況について、好ましい状況ではないという認識、さらには、6月に私が総理に就任した折に主席ともお会いをしたときに、戦略的互恵関係について進展させるというその原点に戻ってこれからの両国関係をさらに進めていこうという点、また、ハイレベルの政治的な政治家の交渉あるいは民間の交流についても、そうしたことについて意見の一致を見たということは、既に申し上げたとおりであります。

 また、フジタの社員の問題については、私と温家宝総理との話と並行して、我が国として、この1名の身柄の安全確保と早急な釈放を求めて現在も交渉を進めているところであることを申し上げておきます」――

 要するに直接要求はしなかった。政府として外交ルートを通じて「1名の身柄の安全確保と早急な釈放を求めて現在も交渉」中であることを答弁したのみであった。

 尖閣諸島の領有権問題は継続させていかなければならない問題であって、継続させてはいけない差し迫った問題は日本国民の生命の安全であって、「フジタ」の残る1人の釈放であり、この釈放を肝心の首脳会談では触れなかった。

 つまり日本国民の生命の安全を脇に置いて尖閣諸島の領有権を双方共に主張し合ったことになる。

 いくら菅無能が無能であっても、これでは一国のリーダーとして整合性を見い出すことはできない。

 釈放問題にも触れなかったが、尖閣諸島問題にも触れなかったとすることによって、より整合性を見ることができる。いわば「asahi.com」記事が伝えるように会談開催の条件として中国側が要求したASEM全体会合での両首脳のスピーチでは「尖閣諸島問題はお互いに直接言及しない」とする約束に添って温家宝との会談でも尖閣諸島の問題もフジタの残る1人の釈放に関しても話題にしなかったとすることによって説明がつく。

 今回の日中韓首脳会談について菅義偉は10月11日のNHK「日曜討論」で、「最終調整の段階だ。開催する方向で努力している」と発言している。安倍晋三が「中国側との関係」を言って隠した発言が中国の南シナ海の人工島問題である以上、日中首脳会談を行うについての調整の段階で中国側が中国の南シナ海の人工島構築と、その海域への米海軍イージス駆逐艦航行に触れないことを条件として出し、安倍晋三が日中首脳会談開催という実績をつくるためにその条件を呑んだ可能性は高い。

 つまり、「主張すべき点は当然、主張した」は事実ではなく、実際には中国の人工島問題に関して何の懸念も反対も、さらに米海軍イージス駆逐艦の人工島海域への航行に対する支持も何もかも伝えていなかったのではないかということである。

 そうとでもしなければ、「中国側との関係」を持ち出す必要性はどこにもない。

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