安倍政権下でかつて民主党政権下で曝け出すことになった復興予算の流用・偽装は存在しないのか

2015-11-28 10:09:04 | Weblog


 マスコミが記事にしていたから、首相官邸サイトにアクセスして、11月27日(2015年)の「第20回行政改革推進会議」で安倍晋三がどのような発言をしたのか覗いてみた。出席者の議論を経て、最後に安倍晋三が発言している。

 文飾は当方。

 安倍晋三「委員の皆様におかれましては、安倍政権発足以来3度目となる『秋のレビュー』に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

 国民の皆様に御負担いただく税金が、無駄な歳出や、優先順位が低い施策に使われるといった批判は絶対に招かないようにしなければなりません。

 本日、河野大臣から『秋のレビュー』等における指摘事項について御報告がありました。これらはいずれも重要なものです。麻生副総理からも御発言があったとおり、予算編成に的確に反映するとともに、さらに事業の改善に取り組んでまいります。

 また、本日皆様から御発言いただいた点についても、しっかりと受け止めまして、今後の政策運営に当たっていきたいと考えております。

 先ほど来、皆様から御発言がございましたように、今回、河野大臣の下、皆様の御尽力をいただき、国民的な関心が飛躍的に高まったわけであります。この国民の皆様の関心と声を力に変えて行政改革を力強く進めていきたいと、このように考えておりますのでよろしくお願いを申し上げます」――

 「国民の皆様に御負担いただく税金が、無駄な歳出や、優先順位が低い施策に使われるといった批判は絶対に招かないようにしなければなりません」

 同じ11月27日、安倍政権は東日本大震災からの復興状況に関する国会報告を閣議決定したと「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。  

 これは復興基本法に基づいた国会報告だそうだ。

 ・当初47万人に上った避難者はおよそ19万人となったこと。
 ・岩手・宮城・福島の3県の高台移転や災害公営住宅の整備事業のうち9割を超える事業が開始されていること。
 ・津波の被害を受けた地域での仮設店舗等による事業再開は進んだものの、商業やサービス業の本格的な復旧はこれからの状態であること。
 ・福祉や水産加工業などでは求人数が求職者数を上回る人手不足の一方、事務関係では求人数が求職者数に届かず、雇用の需要と供給にミスマッチが生じていること。

 等々の報告となっているらしい。

 結論は全体として復興は着実に進展していて、今後も被災者の心に寄り添いながら、震災からの復興と福島の原発事故からの再生をさらに加速させ、来年度から5年間の「復興・創生期間」で、被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなる復興を実現していくとしていると紹介している。

 両記事を読んで思い出したのは、大勢の人がそうだと思うが、民主党政権下での2012年の復興予算の復興事業以外の他事業・復興地以外の他地域への流用や一般会計で終了予定の事業を、被災地の復興には何ら関係ないにも関わらず、名称を変えて復興予算関係の事業として付け替え、継続を図る復興偽装であった。

 前者の例は当時ウンザリする程多くをマスコミが紹介していたから、後者の一例を《復興へ付け替え横行 省益優先 予算奪い合い》TOKYO Web/2012年10月17日)から改めて拾ってみる。  

 震災発生前の2007年度からの5年間、「21世紀東アジア青少年大交流計画」の名称で、中国や韓国などの若者を招く外務省の「青少年国際交流事業」は毎年度平均で約70億円の事業予算が一般会計から支出され、11年度に終了予定。

 終了の理由は、役目を終えた、時代に合わなくなった、あるいは利用価値が減った等であろう。

 ところが、復興のための2011年度3次補正予算に「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流」(72億円)と名称を変えて盛り込まれたと記事は書いている。

 事業目的は震災の実態を米国や中国、韓国など約1万人の若者に伝えるため。実際は被災地での滞在は10日前後のうち実質3日。主に東京や名古屋、京都など被災地と関係のない大都市や観光地を回る内容だったという。

 外務省「震災全体の正しい姿を伝えるための事業。復興予算からの支出は適正だ」

 要するに前身の「21世紀東アジア青少年大交流計画」にしても主として観光地や大都市の紹介を目的としていた程度の事業に過ぎなかったということなのだろう。

 いずれにしても仰々しい事業名を付けて、外務省はこういったことをしていますと自慢するためなのか、あるいは一旦始めたことのメンツを維持するためなのか、あるいは仕事を作るためなのか、名称を変えて復興事業に潜り込ませ、予算を獲得して堂々と事業を開始していた。

 「国民の皆様に御負担いただく税金が、無駄な歳出や、優先順位が低い施策に使われるといった批判は絶対に招かないようにしなければなりません」という目的を持って行政事業レビューを行っている以上、東日本大震災からの復興状況に関する国会報告にしても、過去の例から鑑みて復興予算の流用も偽装もない厳格な執行か否かの検証を経ていなければ、その報告は万全ではないはずだ。

 閣議決定した報告が首相官邸サイトに記載されいないか、調べてみたが、前年度の報告は載っているが、今年度の報告はまだ載っていない。だが、閣議に出す前の報告なのだろう、復興庁が《東日本大震災からの復興の状況に関する報告》(平成27年11月)と題してネット上に紹介している。NHK NEWS WEB記事と紹介がほぼ同となっているから、この報告の要約が閣議に回されたのではないのだろうか。 

 当然、内容はこの報告を出ないことになる。

 〈④復興関連予算使途の厳格化

  復興関連予算については、流用等の批判を招くことがないよう、平成24年度補正予算及び平成25年度予算について使途の厳格化を図った。

  この際、平成23年度第3次補正予算及び平成24年度当初予算において造成された全国向け事業に係る基金については、支出済みであったため、対象外となっていたが、平成25年7月に、これらの基金についても更なる使途の厳格化を行うこととした。

 具体的には、同年7月に、16基金23事業のうち、執行済み及び執行済みと認められるものを除<ものについて、復興庁及び財務省から、基金を所管する府省に対し、基金の執行を見合わせ、国へ返還すること等を要請した。

 平成26年度までの国庫返還額は1、899億円となっている。〉――

 平成23年度第3次補正予算及び平成24年度当初予算も民主党政権下の予算編成である。復興予算の流用・偽装が騒がれ、批判を受けて、復興とは関連のない「全国向け事業」に対して使途厳格化の検証を行い、その有用性を認めることはできない、ムダと見たからだろう、1、899億円の国庫返還を求めた。

 要するに官僚は1、899億円(多分それ以上)もの流用・偽装を創り出す優れた能力を有し、その能力を見事発揮していた。

 だが、安倍政権下の〈復興関連予算については、流用等の批判を招くことがないよう、平成24年度補正予算及び平成25年度予算について使途の厳格化を図った。〉と述べるにとどめている。

 これでは流用や偽装が存在したが、検証して是正したのか、前以て警告をしておいたために流用や偽装が全然存在しなかったのか、厳格化の内容を窺い知ることはできない。

 もし後者なら、官僚の流用・偽装を創り出す優れた能力はピタッとやまったことになる。

 そんなことを信じることができるだろうか。ピタッとやまるぐらいなら、行政事業レビューだとか事業仕分けなど毎年繰返す必要もないし、こういった言葉は死語になっていていいはずだ。

 会計検査院の存在理由にしても、かなり前に消滅していなければならない。だが、今以て国の予算のムダ遣いを指摘し続けている。

 もし前者なら、どういった流用や偽装が行われていたのか、国民に説明する(情報を提供する)責任がある。

 単に〈復興関連予算については、流用等の批判を招くことがないよう、平成24年度補正予算及び平成25年度予算について使途の厳格化を図った〉とするだけでは信用できない。

 それ程官僚は生ぬるくない。国家予算のムダ遣いは永遠と見なければならないし、地元利益誘導で閣僚や国会議員が絡んでいる例もあるはずだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする